この記事では「泰山鳴動」について解説する。

端的に言えば「泰山鳴動」の意味は「大騒ぎのわりに大したことがなかったこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「泰山鳴動」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「泰山鳴動」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 37724230

それでは早速「泰山鳴動(たいざんめいどう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「泰山鳴動」の意味は?

「泰山鳴動」には、次のような意味があります。

事前の騒ぎばかりが大きくて、実際の結果が小さいこと。
[補説]もともとは、ラテン語のParturiunt montes, nascetur ridiculus mus.(山々が産気づいて、こっけいなハツカネズミが一匹生まれる)から出た西洋のことわざ。「大山」は「泰山」とも書く。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「泰山鳴動」

こちらは「泰山鳴動して鼠一匹」という成句として辞書に掲載されているものもあります。

詳しくは語源の項でも説明しますが、山が動いたにも関わらず、出てきたのはねずみ一匹だったということがこの言葉の元です。

事前の大騒ぎと比較して、結果がとても小さい・あっけないものだったということで、驚きや呆れの表現としての解釈もできるでしょう。

ただ単に思っていたよりも結果が伴わなかったという意味では使えません。事前に大騒ぎ・盛り上がりがあったことも重要です。

「泰」は「安泰(あんたい)」などの熟語で使うように、「大きい、穏やか」などの意味があります。そんな山が動いたのですから、きっと物凄いことになると人々は予想したのでしょうね。

また、「大山鳴動」と書いても問題ありません。どちらの漢字でも正しく読めるようにしましょう。

「泰山鳴動」の語源は?

次に「泰山鳴動」の語源を確認しておきましょう。

辞書の引用を参照してみてください。これは意外にも中国語ではなくラテン語が由来、古代ローマで生まれた言葉が元になっています。

これらの地域は今でも温泉が有名ですね。日本や中国のように、地震や火山大国でもあるのです。

そんな彼らにとっても、山が動くというのは大災害の前触れかと非常に恐ろしかったことでしょう。それで出てきたのがネズミ一匹だったら、と考えるとその心境もよくわかります。

漢字になっても意味が通じるのは、同じく地震のある国で生活している私たちにも状況を想像しやすいからかもしれませんね。

\次のページで「「泰山鳴動」の使い方・例文」を解説!/

「泰山鳴動」の使い方・例文

「泰山鳴動」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・弟がお腹が痛いと滑稽なほど大騒ぎをしたが、病院に行ったらケロっとして帰ってきた。まさに泰山鳴動だ。

・母が台所に虫が出たと言って家じゅう大騒ぎになったのだが、結局見間違いだったことがわかって泰山鳴動に終わった。

・グラっと揺れたので地震に備えてオフィスの皆が避難する事態になったのだが、震度2もなかった。ただ泰山鳴動しただけだった。

「思っていたよりあっけなかった」「期待外れだった」という意味合いが伝わるでしょうか。危機に備えていたらホッと脱力するかもしれませんし、高まっていた期待が裏切られてしまったら残念に思うかもしれません。

「山が動くほど」だったわけですから、この四字熟語を使う場合はどれだけ予想が大きかったのか、またその落差がどれほどだったのかを表現するように意識しましょう。

「期待していなかったがやはり大したイベントではなく、大山鳴動だった」とは、落差がありませんから言うことはできませんね。

「泰山鳴動」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 45318003

「泰山鳴動」の類義語として、「竜頭蛇尾」と「蛇が出そうで蚊も出ぬ」をご紹介します。

「竜頭蛇尾」

「竜頭蛇尾(りゅうとうだび)」は、字のごとく「頭が竜で、尾が蛇のようであること」。つまり「始めは凄かったが、終わりにかけてそうでもなくなってしまった」ということになります。

必ずしも落胆や拍子抜けの意味がなくても使うことが出来ますが、最初のボリュームからスケールダウンしてしまったと、落差が含まれていることには注意しましょう。

\次のページで「「蛇が出そうで蚊も出ぬ」」を解説!/

大々的に始まったイベントだったが、途中で不祥事などもあって人が離れ、竜頭蛇尾な結果となった。

「蛇が出そうで蚊も出ぬ」

「蛇(じゃ)が出そうで蚊(か)も出ぬ」は四字熟語ではありませんが、「泰山鳴動」と同様の意味を持っています。

恐ろしいもの(蛇)が出るかと身構えていたが、蚊すらも出てこなかった」ということで、こちらも拍子抜けした感じが伝わりますね。

なぜ「蛇」と「蚊」の取り合わせなのかは不明ですが、漢字が似ていたからかもしれません。意味が先にあって、それに合う漢字を探して作られた言葉だとしたら、少し面白く感じられませんか?

あまり治安のよくない片田舎への旅行で警戒していったのだが、呆気ないほど平穏で、蛇が出そうで蚊もないまま帰国した。

「泰山鳴動」の対義語は?

「泰山鳴動」には、明確な対義語はありませんでした。

「期待していなかったが予想を上回る結果だった」という意味合いが近いでしょうが、故事成句のストーリーや、その落差をはっきり表現しにくいからかもしれません。

「泰山鳴動」の英訳は?

image by iStockphoto

「泰山鳴動」の英語訳として、「The mountains have brought forth a mouse.」と「much ado about nothing」をご紹介します。

「The mountains have brought forth a mouse.」

これは特定の表現というより、ことわざです。「bring forth ~」で「~を動かす」という意味で、直訳すれば「山がネズミを動かした」となります。

長く形式的な文言のため、会話ではあまり使われない表現です。もし英文読解の中で見かけた場合などには驚かないようにしましょう。

\次のページで「「much ado about nothing」」を解説!/

「much ado about nothing」

こちらは「何でもないのに大騒ぎ(をすること)」の意味になります。

「much ado」だけでも、「大騒ぎ」や「空騒ぎ」といった意味がありますが、「about nothing」で「何でもないことについて」を付け加えることで、まさに「泰山鳴動」の意味になるでしょう。

Don't make much ado about nothing.
何でもないのに大騒ぎをするな。(泰山鳴動になるようなことをするな)

「泰山鳴動」を使いこなそう

この記事では「泰山鳴動」の意味・使い方・類語などを説明しました。

日々のニュースやウワサ話など、思わず浮足立ってしまうことはたくさんありますね。その結果、くたびれもうけの骨折り損になることも。

ただしそういう感覚は実際に経験しないとわからないもの。心配事や問題が大したことがなかったならもちろんそれがいいですが、ブームやウワサに乗ってみるのも、時にはいいかもしれませんね。

" /> 【四字熟語】「泰山鳴動」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【四字熟語】「泰山鳴動」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「泰山鳴動」について解説する。

端的に言えば「泰山鳴動」の意味は「大騒ぎのわりに大したことがなかったこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「泰山鳴動」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「泰山鳴動」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 37724230

それでは早速「泰山鳴動(たいざんめいどう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「泰山鳴動」の意味は?

「泰山鳴動」には、次のような意味があります。

事前の騒ぎばかりが大きくて、実際の結果が小さいこと。
[補説]もともとは、ラテン語のParturiunt montes, nascetur ridiculus mus.(山々が産気づいて、こっけいなハツカネズミが一匹生まれる)から出た西洋のことわざ。「大山」は「泰山」とも書く。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「泰山鳴動」

こちらは「泰山鳴動して鼠一匹」という成句として辞書に掲載されているものもあります。

詳しくは語源の項でも説明しますが、山が動いたにも関わらず、出てきたのはねずみ一匹だったということがこの言葉の元です。

事前の大騒ぎと比較して、結果がとても小さい・あっけないものだったということで、驚きや呆れの表現としての解釈もできるでしょう。

ただ単に思っていたよりも結果が伴わなかったという意味では使えません。事前に大騒ぎ・盛り上がりがあったことも重要です。

「泰」は「安泰(あんたい)」などの熟語で使うように、「大きい、穏やか」などの意味があります。そんな山が動いたのですから、きっと物凄いことになると人々は予想したのでしょうね。

また、「大山鳴動」と書いても問題ありません。どちらの漢字でも正しく読めるようにしましょう。

「泰山鳴動」の語源は?

次に「泰山鳴動」の語源を確認しておきましょう。

辞書の引用を参照してみてください。これは意外にも中国語ではなくラテン語が由来、古代ローマで生まれた言葉が元になっています。

これらの地域は今でも温泉が有名ですね。日本や中国のように、地震や火山大国でもあるのです。

そんな彼らにとっても、山が動くというのは大災害の前触れかと非常に恐ろしかったことでしょう。それで出てきたのがネズミ一匹だったら、と考えるとその心境もよくわかります。

漢字になっても意味が通じるのは、同じく地震のある国で生活している私たちにも状況を想像しやすいからかもしれませんね。

\次のページで「「泰山鳴動」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: