この記事では「世道人心」について解説する。

端的に言えば世道人心の意味は「世の中の道徳と、それを守る世間の人々の心」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「世道人心」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「世道人心」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「世道人心」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は、「せどうじんしん」です。漢字からある程度意味をイメージすることができるかもしれませんが、正確に意味を確認しておくといいですね。

「世道人心」の意味は?

「世道人心」には、次のような意味があります。概念的であり抽象的でもあるので、丁寧に意味をチェックしていきましょう。

1.世の中の道徳と人の心。世の中の道徳とそれを守るべき人の心のこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)

「世道人心」の「世道」は人として守るべき道徳や社会道徳のこと、「人心」は人の心のことです。これらが合わさって、世の中の道徳と人の心という意味になっています。

法は規制されて罰もあるものですが、道徳は社会生活を行う上で各自が守るべき目安のことで、とくに賞罰はありません。そのため、人の良心に基づいて善い行いをしたり悪い行いをしなかったりということが大切になってきますね。そういう意味では、道徳と人の心は関連が深いと言えます。

「世道人心」の語源は?

次に「世道人心」の語源を確認しておきましょう。とくに書物などによる由来はありませんが、言葉の意味と昔の社会の状況とを考えてみましょう。

現代は「法」が重要な位置を占める世の中になっています。みんなの意識の中にも「法に触れなければいい」など、道徳より法を優先するイメージがあるかもしれませんね。ところが、日本でも法が浸透しきれない時代にあっては、今よりも道徳が重要であったはずですね。

\次のページで「「世道人心」の使い方・例文」を解説!/

「世道人心」の使い方・例文

「世道人心」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。使い方までチェックしておくと、必要な場面で安心して表現することができますよ。

1.世道人心が衰える時代は、その影響で多くの学校や会社などの企業活動でも法やルール優先となる。
2.狭いコミュニティを運営した経験が、社会全体に対する世道人心を育むヒントとなる。

例文の1.は、「世道人心」と「法やルール」を比較し、時代によってどちらが優先されるかについて述べています。2.のほうは、狭いコミュニティで人と人の関わって道徳に基づく行為を経験していれば、社会全体へと展開できるのではないかということです。

使い方としては、「世道人心は」「世道人心を」などとして使い名詞のカタマリと考えます。「世道人心である」など動詞化した表現をすることはありません。

「世道人心」の類義語は?違いは?

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それでは、「世道人心」の類義語についての説明です。道徳に関するいみあいがあるので、何らかの宗教に帰属する表現もありますよ。

「公序良俗」

「世道人心」の類義語には、「公序良俗(こうじょりょくぞく)」があります。意味は、「公の秩序と善良な風俗のことで、社会的に妥当と認められる道徳観のこと」です。「公序」は人が守るべき社会の秩序のこと、「良俗」とはよい風俗習慣のことを表しています。

「世道人心」の意味のうち「人の心」の部分までの意味はありませんが、守られるべき道徳のことを表すということでは同じ意味になっていますよ。

\次のページで「「五倫五常」」を解説!/

「五倫五常」

類義語には、もう一つ「五倫五常(ごりんごじょう)」があります。「人として守るべき人間関係についての道徳のこと」という意味で、儒教に基づく考え方のことです。

「五倫」は人間関係を規律する五つの徳目のことで、父子の親、君臣の義、夫婦の別、長幼の序、朋友の信があります。「五常」のほうは、仁(他人への愛情)、義(人としての筋道)、礼(社会的な作法)、智(善意の判断力)、信(ことばの誠意)の五つのことを表していますよ。

「世道人心」の対義語は?

次に、「世道人心」の対義語についての説明です。それぞれの四字熟語の特徴まで見ておいて、正確に意味を把握しておきましょう。

「末法末世」

「世道人心」の対義語には、「末法末世(まっぽうまっせ)」があります。意味は、「仏教が衰え、道徳が乱れた末の世のこと」です。「末法」とは仏教が衰えて救いがたい世の中になること、「末世」は仏教が廃れた世のことを表しています。

仏教や道徳心はサービスでもエンターテイメントでもないので、各自がふさわしい考え方や能力を磨く必要があるということですね。

「風俗壊乱」

もう一つの対義語に、「風俗壊乱(ふうぞくかいらん)」があります。意味のほうは、「世の中の風俗や習慣を壊し乱すことや壊し乱れた状態のこと」です。「風俗」は風習やしきたりのこと、「壊乱」は破壊し混乱させることを表しています。

「世道人心」とは道徳に関する部分では反対の意味になりますが、「風俗壊乱」のほうは「壊し乱すこと」までを含む意味です。一方で、「世道人心」のほうも「人の心」までの意味が含まれているところは少し違いがありますね。

「世道人心」の英訳は?

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最後に、「世道人心」の英訳について見ていきましょう。言語が違うと、全く同じニュアンスでの表現は難しくなりますが、ほぼ同じ意味の表現はありますよ。

「public morals」

「世道人心」の英訳には、「public morals」があります。意味のほうは、「public(公衆の)」と「morals(道徳)」を合わせて「公衆道徳」です。公衆という言葉から、社会一般に通用するような道徳であることがわかりますね。

その他、「morals and sentiments」という表現もあります。こちらは、「sentiments(情操、気持ち)」という語が含まれており、各自の心も意味合いに含むことから、より「世道人心」に近い意味になっていますよ。

\次のページで「「世道人心」を使いこなそう」を解説!/

「世道人心」を使いこなそう

今回の記事では「世道人心」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「世道人心」や類義語の「公序良俗」は道徳に関する四字熟語ですが、そのには宗教は関係していません。類義語の「五倫五常」や対義語の「末法末世」などは仏教に関する用語でもあります。

日本人は宗教の違いをあまり意識はしませんが、世界ではそうではありません。そのため、宗教に関する言葉かそうでないかは知ってくと役に立ちますよ。

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【四字熟語】「世道人心」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「世道人心」について解説する。

端的に言えば世道人心の意味は「世の中の道徳と、それを守る世間の人々の心」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「世道人心」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「世道人心」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「世道人心」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は、「せどうじんしん」です。漢字からある程度意味をイメージすることができるかもしれませんが、正確に意味を確認しておくといいですね。

「世道人心」の意味は?

「世道人心」には、次のような意味があります。概念的であり抽象的でもあるので、丁寧に意味をチェックしていきましょう。

1.世の中の道徳と人の心。世の中の道徳とそれを守るべき人の心のこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)

「世道人心」の「世道」は人として守るべき道徳や社会道徳のこと、「人心」は人の心のことです。これらが合わさって、世の中の道徳と人の心という意味になっています。

法は規制されて罰もあるものですが、道徳は社会生活を行う上で各自が守るべき目安のことで、とくに賞罰はありません。そのため、人の良心に基づいて善い行いをしたり悪い行いをしなかったりということが大切になってきますね。そういう意味では、道徳と人の心は関連が深いと言えます。

「世道人心」の語源は?

次に「世道人心」の語源を確認しておきましょう。とくに書物などによる由来はありませんが、言葉の意味と昔の社会の状況とを考えてみましょう。

現代は「法」が重要な位置を占める世の中になっています。みんなの意識の中にも「法に触れなければいい」など、道徳より法を優先するイメージがあるかもしれませんね。ところが、日本でも法が浸透しきれない時代にあっては、今よりも道徳が重要であったはずですね。

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