この記事では「舌先三寸」について解説する。

端的に言えば舌先三寸の意味は「口先だけの誠実さに欠けるようなうわべだけの言葉」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「舌先三寸」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「舌先三寸」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「舌先三寸(したさきさんずん)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「舌三寸(したさんずん)」ということもありますよ。もともと意味を知っている人でも、語源までわかっていると理解が深まります。

「舌先三寸」の意味は?

「舌先三寸」には、次のような意味があります。言動を表す表現ですが、その言動から悪意を持っていると判断されることがありますよ。

1.口先だけの巧みな弁舌。うわべだけのうまい言葉で、心や中身が備わっていないこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)

基本的な意味は、口先だけの薄っぺらい表現で、相手をだましたり言いくるめたりすることです。「三寸」とは、長さが短いことのたとえで、薄っぺらなイメージにつながっています。

その場しのぎであったり、自分の利益のためであったり、相手のためにはならなくても自分の得になる場面で使われる表現です。本人がこれらを自覚しながら言っており、それが周囲にバレているわけですから相当印象が悪いですよね。

「舌先三寸」の語源は?

次に「舌先三寸」の語源を確認しておきましょう。もととなる話は、中国の前漢の時代に司馬遷が編纂したとされる「史記(しき)」によるものです。

中国の戦国時代に、秦の国に取り囲まれた趙の国が、楚の国と連合関係を結ぶために向かったのが平原君でした。その一行の中にいた毛遂(もうすい)は、「この連合関係は、趙のためのものではなく楚のためのものだ」と舌先三寸の詭弁を弄して関係を結ぶことに成功しました。そののち、楚が援軍を送ったこともあって、趙は秦の攻撃を守り切ることができたということです。

今では薄っぺらな言葉として悪いイメージの言葉ですが、語源を遡ると国を救った重要な弁舌のことだったのですね。

\次のページで「「舌先三寸」の使い方・例文」を解説!/

「舌先三寸」の使い方・例文

「舌先三寸」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼は日頃から口数が多く冗舌であり、ときには舌先三寸の物言いをするので、女性に警戒されている。
2.あなたは、とくに仕事では舌先三寸と受け取られかねない言い方は避けるべきだ。

例文の1.も2.も、自分本位の言い方で相手に悪い印象を与えるようすが書かれています。基本的には、マイナスのイメージの表現なので、悪意が見て取れたときに使いますよ

使い方としては、「舌先三寸の」「舌先三寸で」など、名詞として使い、「舌先三寸する」のように動詞化して使うことはありません。

「舌先三寸」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

それでは、「舌先三寸」の類義語についての説明です。非常に似たものや独特のニュアンスを持つ四字熟語もあるので、詳しく見ていきましょう。

「巧言令色」

「舌先三寸」の類義語の一つに、「巧言令色(こうげんれいしょく)」があります。意味は、「口先でうまいこと言い、うわべだけ愛想よくとりつくろうことで人にこびへつらうこと」です。「巧言」は巧みに飾られた言葉のこと、「令色」は愛想よくとりつくろった顔色のことを表しています。

「舌先三寸」と比べると、言動としてはほぼ同じですが目的がやや違いますよ。「舌先三寸」がだましたり言いくるめたりする目的であるのに対し、「巧言令色」のほうはこびへつらうことが目的になっています。

\次のページで「「美辞麗句」」を解説!/

「美辞麗句」

もう一つの類義語に、「美辞麗句(びじれいく)」があります。意味のほうは、「巧みに美しく飾った言葉で、うわべだけであったり真実味のない言葉のこと」です。「美」と「麗」は美しいという意味で、「辞」と「句」は言葉を表していますよ。

だましたり言いくるめたりする目的がある「舌先三寸」ほどではありませんが、「美辞麗句」のほうも自分をよく見せたいということから悪い意味で使われます。

「舌先三寸」の対義語は?

次は、「舌先三寸」の対義語についての説明です。対義語なので反対の意味ではありますが、どの意味合いが反対なのかは四字熟語によって違いがあります。ニュアンスも含めて丁寧にチェックしていきましょう。

「至理名言」

「舌先三寸」の対義語には、「至理名言(しりめいげん)」があります。意味は、「道理にかなったすぐれた言葉」です。「至理」はこのうえなく正しい道理のこと、「名言」はすぐれた言葉のことを表しています。

口先だけの弁舌である「舌先三寸」と比べると、「至理名言」は道理にかなった言葉ですから反対の意味の言葉と言えますね。もちろん、いい意味で使われている四字熟語です。

「円転滑脱」

もう一つの対義語には、「円転滑脱(えんてんかつだつ)」があります。意味のほうは、「言葉などが自在に変化して、角が立たず物事が円滑にすすむこと」です。「円転」は丸く回ることで円滑にすすむようすのこと、「滑脱」は滑り抜けるという意味で自在に変化するということを表しています。

「舌先三寸」と比べると、言葉が巧みであるようすは同じです。ただ、「舌先三寸」は悪意があり悪イメージであるのに対し、「円転滑脱」は物事を円滑にすすめられるという意味でいい意味で使われているので、正反対の意味合いと言えますね。

「舌先三寸」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に、「舌先三寸」の英訳について見ていきましょう。言語の違いからニュアンスの違いは多少はありますが、ほぼ同じ意味で使うことができますよ。

「glib tongue」

「舌先三寸」の英訳には、「glib tongue」があります。「glib」が「口の達者な」という意味なので、「舌先三寸」と同じような意味です。「口が達者」ということですから、必要以上に上手く話すというニュアンスが含まれていることがわかりますね。

他には、「舌先三寸」ほどの悪意は含まれていませんが、「persuade(説得する)」も近い意味になっています。

\次のページで「「舌先三寸」を使いこなそう」を解説!/

「舌先三寸」を使いこなそう

今回の記事では「舌先三寸」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「舌先三寸」は相手をだましたり言いくるめたりすることが目的なので、完全に悪い意味で使われる言葉です。そのため、使う場面を間違えると、相手に失礼になってしまうことがあるので気をつけたいですね。いい意味での巧みな言葉遣いは、対義語の「円転滑脱」のほうでした。

" /> 【四字熟語】「舌先三寸」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【四字熟語】「舌先三寸」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「舌先三寸」について解説する。

端的に言えば舌先三寸の意味は「口先だけの誠実さに欠けるようなうわべだけの言葉」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「舌先三寸」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「舌先三寸」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「舌先三寸(したさきさんずん)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「舌三寸(したさんずん)」ということもありますよ。もともと意味を知っている人でも、語源までわかっていると理解が深まります。

「舌先三寸」の意味は?

「舌先三寸」には、次のような意味があります。言動を表す表現ですが、その言動から悪意を持っていると判断されることがありますよ。

1.口先だけの巧みな弁舌。うわべだけのうまい言葉で、心や中身が備わっていないこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)

基本的な意味は、口先だけの薄っぺらい表現で、相手をだましたり言いくるめたりすることです。「三寸」とは、長さが短いことのたとえで、薄っぺらなイメージにつながっています。

その場しのぎであったり、自分の利益のためであったり、相手のためにはならなくても自分の得になる場面で使われる表現です。本人がこれらを自覚しながら言っており、それが周囲にバレているわけですから相当印象が悪いですよね。

「舌先三寸」の語源は?

次に「舌先三寸」の語源を確認しておきましょう。もととなる話は、中国の前漢の時代に司馬遷が編纂したとされる「史記(しき)」によるものです。

中国の戦国時代に、秦の国に取り囲まれた趙の国が、楚の国と連合関係を結ぶために向かったのが平原君でした。その一行の中にいた毛遂(もうすい)は、「この連合関係は、趙のためのものではなく楚のためのものだ」と舌先三寸の詭弁を弄して関係を結ぶことに成功しました。そののち、楚が援軍を送ったこともあって、趙は秦の攻撃を守り切ることができたということです。

今では薄っぺらな言葉として悪いイメージの言葉ですが、語源を遡ると国を救った重要な弁舌のことだったのですね。

\次のページで「「舌先三寸」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: