この記事では「会者定離」について解説する。

端的に言えば会者定離の意味は「会った人とは必ず別れる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語塾講師で仏教に詳しいライターのトミー先生を呼んです。一緒に「会者定離」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トミー先生

元国語塾講師で、通信教育で英語と国語の「赤ペン先生」などもやっていた。実はドイツ語が得意で、外国語を学ぶことにより国語を理解するのに役立つと実感している。今回は仏教に由来する四字熟語の「会者定離」について、語源と意味と使い方を自分でしっかり理解できるよう、わかりやすく解説していく。

「会者定離」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「会者定離」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「会者定離」の読み方は「えしゃじょうり」で、「会った者は離れるのが定め」という意味になりますね。仏教の無常観を表すキーワードの一つで、「生者必滅、会者定離」とセットにすることがあるのですよ。なお、「生者必滅」は「しょうじゃひつめつ」と読み、「生きている者は必ず滅びる」という意味ですね。

「会者定離」の意味は?

会者定離」には、次のような意味があります。手元にある国語辞典には、次のように書かれていますね。

仏語。会う者は必ず離れる運命にあるということ。人生の無常をいう語。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「会者定離」

この世で出会った人とはいずれ必ず別れる運命にある、というのが「会者定離」に込められた思いです。この世で一度だけの出会いを「一期一会(いちごいちえ)」といいますが、仏教の考え方によると、人は死んでも必ず生まれ変わりますので、次の人生でまた出会うこともあるでしょうし、今のこの出会いが前世からの因縁(いんねん)であるのかもしれませんね。

「会者定離」の語源は?

次に「会者定離」の語源を確認しておきましょう。「会者定離」は仏教の経典の一つである遺教経では「生者必滅会者定離」と八文字がセットになっていますね。このような仏教の無常観は、例えば『平家物語』の書き出しの「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行無常(しょぎょうむじょう)の響きあり。沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色、盛者必衰(せいじゃひっすい)の理(ことわり)をあらはす」に色濃く現れていますよ。鐘の音はすぐに消えていくし、美しく咲き誇る花もやがては枯れて散っていきますね。その様子こそまさに、この世の無常を表しているのですね。

\次のページで「「会者定離」の使い方・例文」を解説!/

「会者定離」の使い方・例文

会者定離」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

みんなとはまもなくお別れしなくてはなりませんが、会者定離というのがこの世の定めですから、耐えるしかありませんね。

これからもずっとこの会社の営業の仕事を続けていきたかったのですが、会者定離という世の習により、本日付で定年退職いたします。

会者定離という表現は日本の無常観を表していますが、同時に、すべての人が新たな出会いを求めて前向きに生きることをおすすめしているのではないでしょうか。

われわれのこの命は永遠のものではないし、会った人とは必ず別れる時が来る、というのはある意味では誰でも知っている常識です。しかし、実際にその別れの瞬間が訪れると、心が乱れて冷静に思考することができなくなることがあります。「会者定離」をただ知識や教養として知っているのではなく、今こうして生きていることの深い意味として理解しておくべきかもしれませんね。

「会者定離」の類義語は?違いは?

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会者定離」の類義語として、「逢うは別れの始めなり」と四字熟語の「愛別離苦」を紹介しましょう。

「逢うは別れの始めなり」

逢うは別れの始めなり」は、会ったときにもう別れが始まっているということですから、会った人とは必ず別れるという「会者定離」と同じ意味ですね。ただ、出会った瞬間にもう別れが始まっているということですから、ニュアンスとしては、別れの時を想定するのが早いですね。

\次のページで「「愛別離苦」」を解説!/

逢うは別れの始めなり」といいますから、出会いの日には必ず記念写真を撮っておくことにしています。

「愛別離苦」

愛別離苦」は「あいべつりく」と読み、仏教で教える人間の苦しみの一つです。人間が誰でも抱えている百八の煩悩は「四苦八苦」からきていますが、「四苦」は「生・病・老・死」ですね。この「四苦」にさらに四つの苦しみを加えて「八苦」になるのですが、その最初のものが「愛別離苦」なのですよ。

愛別離苦」は愛する人と別れる苦しみのことを言いますから、人はすべて別れるという意味の「会者定離」とは、そこが違いますね。親子や夫婦や家族や恋人や友達など、大切に思う人は周囲に何人もいますが、その人たちはいずれ別れる日が来るのですが、そのときの苦しみはどれほど大きいでしょうか。

あの人の訃報に接して、生まれて初めて、愛別離苦がどれほどの苦しみであるのかを知りました。

「会者定離」の対義語は?

会者定離」の対義語として、「永久不滅」を紹介しておくことにしますね。

「永久不滅」

永久不滅」は、永久に滅びることがないということですから、「会者定離」の対義語としては意味の広がりが大きいですね。この世に生きるものは全て滅びるという仏教の無常観からすると、永久不滅というのは、それに反するように思われます。しかし、人は生と死を何度も繰り返し、別れた人とは来世で会うこともありますから、何もかも永久不滅なのかもしれませんね。

ぼくは君への永久不滅の愛を誓う。

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「会者定離」の英訳は?

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会者定離」を文字通りに英語訳すると、Those who meet must part. となりますね。to不定詞をうまく使ってWe meet only to part. と言うこともできますよ。また、英語のことわざにThe first breath is the beginning of death. というのもありますね。

「Those who meet must part.」

Those who meet must part. を日本語訳すると、会う人たちは別れなくてはならない、ということになりますから、「会者定離」の英語訳としてぴったりですね。

「We meet only to part.」

We meet only to part. に用いられているto不定詞ですが、この用法はわかりますか。to不定詞の目的用法と考えれば、「私たちは別れるためにのみ会う」という日本語訳になり、それでも意味は通じますが、結果用法と考えると、私たちは会ってからただ別れるのみである」となります。いずれにせよ、会えば必ず別れるという意味ですから、「会者定離」の英語訳として説明がつきますね。

「The first breath is the beginning of death.」

The first breath ist the beginning of death. ですが、この英語のことわざを日本語に訳すと、「最初の呼吸は死の始まりである」となりますね。最初の呼吸というのは、それまで母胎のなかにいて呼吸などしていなかった赤ちゃんが誕生したとき、「オギャー」と泣きますが、それが最初の呼吸ということですね。人は、生まれた瞬間にもう死が始まっているということで、「生者必滅」に近い意味ですが、この四字熟語は「会者定離」とセットになっていますから、英語にも同じ無常観を表すことわざがあるのですね。

「会者定離」を使いこなそう

この記事では「会者定離」の意味・使い方・類語などを説明しました。会った人と必ず別れる時が来るというのは、とても辛いことですが、仏教は、そういう世の習を四字熟語で示しながら、この世に生きる私たちに生きることの大切さを教えているのだと思いますね。

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【四字熟語】「会者定離」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「会者定離」について解説する。

端的に言えば会者定離の意味は「会った人とは必ず別れる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語塾講師で仏教に詳しいライターのトミー先生を呼んです。一緒に「会者定離」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トミー先生

元国語塾講師で、通信教育で英語と国語の「赤ペン先生」などもやっていた。実はドイツ語が得意で、外国語を学ぶことにより国語を理解するのに役立つと実感している。今回は仏教に由来する四字熟語の「会者定離」について、語源と意味と使い方を自分でしっかり理解できるよう、わかりやすく解説していく。

「会者定離」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「会者定離」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「会者定離」の読み方は「えしゃじょうり」で、「会った者は離れるのが定め」という意味になりますね。仏教の無常観を表すキーワードの一つで、「生者必滅、会者定離」とセットにすることがあるのですよ。なお、「生者必滅」は「しょうじゃひつめつ」と読み、「生きている者は必ず滅びる」という意味ですね。

「会者定離」の意味は?

会者定離」には、次のような意味があります。手元にある国語辞典には、次のように書かれていますね。

仏語。会う者は必ず離れる運命にあるということ。人生の無常をいう語。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「会者定離」

この世で出会った人とはいずれ必ず別れる運命にある、というのが「会者定離」に込められた思いです。この世で一度だけの出会いを「一期一会(いちごいちえ)」といいますが、仏教の考え方によると、人は死んでも必ず生まれ変わりますので、次の人生でまた出会うこともあるでしょうし、今のこの出会いが前世からの因縁(いんねん)であるのかもしれませんね。

「会者定離」の語源は?

次に「会者定離」の語源を確認しておきましょう。「会者定離」は仏教の経典の一つである遺教経では「生者必滅会者定離」と八文字がセットになっていますね。このような仏教の無常観は、例えば『平家物語』の書き出しの「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行無常(しょぎょうむじょう)の響きあり。沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色、盛者必衰(せいじゃひっすい)の理(ことわり)をあらはす」に色濃く現れていますよ。鐘の音はすぐに消えていくし、美しく咲き誇る花もやがては枯れて散っていきますね。その様子こそまさに、この世の無常を表しているのですね。

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