パブロフの犬
パブロフが条件反射の存在に気づくことになった、有名なエピソードがあります。
消化腺の研究をしていたパブロフは、イヌに与える餌によって唾液の成分や量が変化するかを調べる実験をしていました。唾液の量や成分を求めるためには、分泌された唾液を口の外に出させるような工夫をしなくてはいけません。そのため、イヌの口には唾液を採取できるような手術が施されていました。
ある日パブロフは、餌をまだあげていないイヌの口から大量の唾液がでていることに気づきます。疑問に思い調べてみると、餌を与える人間の足音が聞こえてくることがきっかけになり、唾液の分泌が促されているようだということがわかりました。
人間の足音と、イヌの唾液の分泌は、本来関係のない現象のはずです。パブロフは、本来無関係な刺激が生物の反応に影響を及ぼす可能性があることに気づきました。

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パブロフは新しい実験を組み立てました。イヌに餌を与える際に特定の音をならすことをしばらく繰り返します。すると、イヌはその音を聞いただけで唾液を分泌するようになったのです。意図的に条件反射を起こさせることができる、ということが証明された、画期的な実験でした。
このイヌを使った研究は大変有名になり、現在でも「パブロフの犬」という言葉とともによく知られていますよね。パブロフはこれ以降も反射の研究にのめりこむようになっていきました。
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1904年にパブロフはノーベル賞を受賞しましたが、その受賞理由は「消化生理に関する研究」というものでした。長く続けてきた消化器系の研究が評価されての受賞でしたが、授賞式の講演では、もっぱら条件反射についての話をしたそうです。
現代においても条件反射の研究は行われています。はじめは、比較的発達した神経系を持つ動物(ヒトを含む)の条件反射が中心に研究されていましたが、近年はゴキブリやプラナリアなどの生物でも条件反射を起こさせることができる、ということがわかってきました。今後も面白い研究成果が出てくるかもしれません。
“条件反射”発見の影響
パブロフの研究は生理学のみならず、脳科学や心理学など、他分野にも大きな影響を及ぼしました。彼の見出した条件反射は「刺激に対する無意識下の反応」であるからこそ、私たちの「神経系が及ぼす影響」や「”こころ”と身体の関係」についてより詳しく考えざるを得なくなったのです。
条件反射という言葉は比較的身近なものになっていますが、それが科学の歴史上非常に重要な発見だったことを覚えておいてほしいと思います。