蛇口をひねると当たり前のように出てくる水道水。ボタン1つで注げる給茶器。これら文明の恩恵で現代では、人間が自力で液体を運ぶことは少ない。代りに液体を運んでくれる装置がポンプです。ポンプは理想的には液体のみを運びたいのですが、しばしば泡が発生してそれが破裂し悪さをする。

そんな、ポンプ最大の敵の1つと言えるキャビテーションについて理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.液体の中の気泡

image by PIXTA / 29855415

液体をポンプで運ぼうとすると、しばしば気泡が発生してしまうもの。気泡だらけの液体を圧縮させるとどうなるか?液体はほとんど縮まないので、気体である「気泡」にしわ寄せがいき、気泡ばかりがぎゅっと縮みます。その気泡を突然破裂させたら?すごい衝撃が起きそうですね。

この「気泡」の発生と消滅がキャビテーション現象です。では、そもそもどうやって「気泡」が発生するのか?またどうやって消滅するのか?詳しく見ていきましょう。

2.気泡発生原因〜圧力変化〜

そもそも、なぜ移送中の液体に気泡が発生するのか?別に気泡を混ぜているわけでもありませんね。その理由の1つめは圧力変動

流体が移動するためには?

液体は(気体もですが)圧力が高い方から低い方へ移動する性質があります。この性質を利用して液体を移動させるのがポンプ。

ポンプの仕組みと圧力低下

ポンプの仕組みと圧力低下

image by Study-Z編集部

意図的に圧力を上げたり下げたりして、流体に圧力差を与えることで運ぶのがポンプの役目。

例えばスクリューをクルクル回し、左側から吸って右側に吐き出すポンプの場合を見てみましょう。左側は圧力が低くなるからどんどん液体が集まってきて、逆に右側は圧力が高くなり、液体が出て行こうとします。左側部分には入口側からどんどん液体が集まってきて、右側部分からは出口側の方にどんどん液体が逃げていこうとするので液体を運べるわけです。液体を運ぶために圧力変動が必要ですが、それが気泡発生の要因にもなっています。

配管条件と圧力低下

配管条件と圧力低下

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低い地点から高い地点に移動すると圧力が下がりますね。重力に引っ張られて液体が下の方に集まってこようとするので、下のほうが圧力がたかく、逆に上の方は液体が逃げていこうとするため圧力は低いです。高い位置にある配管内は圧力が低いということ。

また配管の形状によっても圧力が下がりやすい。イラストのエルボ配管の点Aのように圧力がかかりにくい場所もあります。L字型の配管で上向き→横向きに方向転換でもすれば、尚更圧力がかかりにくいですね。このように配管の形状によっては途中で極端に圧力が下がることもあり得ます。

\次のページで「3.気泡発生原因~溶存気体~」を解説!/

3.気泡発生原因~溶存気体~

3.気泡発生原因~溶存気体~

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気泡発生の要因2つめは「溶存気体」です。泡が見られない液体にも実は気体がが溶け込んでいるもの。圧力が高い時溶存気体は液体の中に閉じ込められていますが、圧力が下がると「気体」として姿を現すのです。

例えば、炭酸水は水に二酸化炭素が溶存したもの。炭酸水を作るとき、高い圧力をかけて水に二酸化炭素を溶かします。そして圧力を高いままキープ、ペットボトルなどの容器に入れるので、未開封状態の炭酸水ではに泡は見られません。高い圧力によって二酸化炭素が水の中に「封じ込められている」ためです。

ところが、フタを開けるとどうでしょう?「シュワシュワシュワ」と泡が発生しますね。フタを開けることで容器内の圧力が下がり「封じ込められていた」に二酸化炭素が現れるのです。このように、圧力が下がると気泡が発生してしまいます。

4.気泡発生要因~液体の沸騰~

4.気泡発生要因~液体の沸騰~

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気泡発生の要因3つめは圧力や温度の変化による「液体の沸騰」です。大気圧下で常温であれば水は液体ですが、圧力や温度を変えると沸騰して「気体」に変化します。例えば、大気圧下でも水が120℃まで温度が上がると気体になっちゃいますね。また、常温と呼ばれる25℃程度であっても0.01気圧(大気圧の1/100の圧力)まで下がると水は沸騰して気体に変化。

温度と圧力によって物質の状態(気体or液体or固体)が決まります。圧力が低く、温度が高いほど気体になりやすいです。液体移送中に何らかの事情で温度が上がったり圧力が下がったりすると沸騰して気体になり、それが気泡になることがあります。

5.一度出来た泡は消えない

配管内で気泡が発生すると、なかなか消えずポンぴまで来てしまいます。圧力をなぜなら、入口→出口側に行くにつれて圧力は低くなるから。前述のとおり、液体は高圧→低圧側に流れるもの。前述のとおり、圧力が低いと気泡は液体中に溶け込みにくい。よほど圧力が高くなるタイミングがない限り、気泡は途中で消えにくいです

圧力が突然高くなるタイミングは「ポンプを通過するタイミング」。

6.気泡の破裂とその影響

ポンプは吸引側の圧力をあえて低くしてあり、吐出側の圧力をあえて高くしています。ポンプに到達するまではだんだん圧力が下がる、つまり気泡ができやすい状態ですが、ポンプ通過後は突然高圧状態にさらされ気泡は破裂

破裂によるエネルギーが馬鹿にならないほど大きいため、しばしばポンプの部品を気づ付けてしまうのです。これがキャビテーション破壊

ポンプの原理上、ポンプ入口側(吸引側)圧力を低く、出口側(吐出側)圧力を高くせざるを得ないものの、これがキャビテーションを起こりやすくしていて、ポンプに悪影響を与えています。まさにポンプ最大の敵の1つといえるでしょう。

これを防ぐためには、急に圧力が下がらないように配管のつなぎ方やポンプの運転条件を工夫しますが、この記事では詳細な説明は割愛します。

\次のページで「7.エステやダイエットへの応用」を解説!/

7.エステやダイエットへの応用

ポンプにとっては厄介な現象ですが、逆にエステやダイエット等で脂肪を破壊するためにはありがたい現象です。超音波によって、体内に意図的に気泡を発生させます。何らかのきっかけで圧力が高くなると、気泡が破裂破裂した時のエネルギーで脂肪細胞を液化させたり乳化させたりします。

ポンプの原理上起こりやすい

圧力を下げると、液体に溶けている気体が出てきたり、液体そのものが沸騰することで気泡が発生しやすくなるもの。ポンプに吸引されるまではどんどん圧力が下がり気泡が発生するのに対し、ポンプ通過後吐出時には圧力が上がるので、ここれ気泡の破裂が起きます。破裂によるエネルギーは馬鹿にならずポンプ部品を傷める原因です。

しかし、同じ現象をヒトの体内で起こせば脂肪細胞を破壊できるため、エステやダイエットにも応用されています。

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物理

【物理】エステで良く聞く「キャビテーション」って何のこと?理系ライターがわかりやすく解説

蛇口をひねると当たり前のように出てくる水道水。ボタン1つで注げる給茶器。これら文明の恩恵で現代では、人間が自力で液体を運ぶことは少ない。代りに液体を運んでくれる装置がポンプです。ポンプは理想的には液体のみを運びたいのですが、しばしば泡が発生してそれが破裂し悪さをする。

そんな、ポンプ最大の敵の1つと言えるキャビテーションについて理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.液体の中の気泡

image by PIXTA / 29855415

液体をポンプで運ぼうとすると、しばしば気泡が発生してしまうもの。気泡だらけの液体を圧縮させるとどうなるか?液体はほとんど縮まないので、気体である「気泡」にしわ寄せがいき、気泡ばかりがぎゅっと縮みます。その気泡を突然破裂させたら?すごい衝撃が起きそうですね。

この「気泡」の発生と消滅がキャビテーション現象です。では、そもそもどうやって「気泡」が発生するのか?またどうやって消滅するのか?詳しく見ていきましょう。

2.気泡発生原因〜圧力変化〜

そもそも、なぜ移送中の液体に気泡が発生するのか?別に気泡を混ぜているわけでもありませんね。その理由の1つめは圧力変動

流体が移動するためには?

液体は(気体もですが)圧力が高い方から低い方へ移動する性質があります。この性質を利用して液体を移動させるのがポンプ。

ポンプの仕組みと圧力低下

ポンプの仕組みと圧力低下

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意図的に圧力を上げたり下げたりして、流体に圧力差を与えることで運ぶのがポンプの役目。

例えばスクリューをクルクル回し、左側から吸って右側に吐き出すポンプの場合を見てみましょう。左側は圧力が低くなるからどんどん液体が集まってきて、逆に右側は圧力が高くなり、液体が出て行こうとします。左側部分には入口側からどんどん液体が集まってきて、右側部分からは出口側の方にどんどん液体が逃げていこうとするので液体を運べるわけです。液体を運ぶために圧力変動が必要ですが、それが気泡発生の要因にもなっています。

配管条件と圧力低下

配管条件と圧力低下

image by Study-Z編集部

低い地点から高い地点に移動すると圧力が下がりますね。重力に引っ張られて液体が下の方に集まってこようとするので、下のほうが圧力がたかく、逆に上の方は液体が逃げていこうとするため圧力は低いです。高い位置にある配管内は圧力が低いということ。

また配管の形状によっても圧力が下がりやすい。イラストのエルボ配管の点Aのように圧力がかかりにくい場所もあります。L字型の配管で上向き→横向きに方向転換でもすれば、尚更圧力がかかりにくいですね。このように配管の形状によっては途中で極端に圧力が下がることもあり得ます。

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