この記事では「棚から牡丹餅(ぼたもち)」ということわざ・慣用句について解説する。

端的に言えば「棚から牡丹餅」の意味は「思いがけない幸運」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「棚から牡丹餅」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「棚から牡丹餅」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「棚から牡丹餅」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「棚から牡丹餅」の意味は?

「棚から牡丹餅」には、次のような意味があります。

労せずして思いがけない幸運に巡り合うことのたとえ。たなぼた。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「棚から牡丹餅」

なぜ、「棚から牡丹餅」が思いがけない幸運を意味するのでしょうか。みなさん、まずは「棚」を頭の中にイメージしてみてください。

「棚」にも色々ありますが、ここでは戸棚のようなものがいいでしょう。そこには普段、食品である「牡丹餅」は置いておかないはずです。

現代ならば、冷蔵庫の中にしまってあるなどキッチン周りのどこかに置いてあるのが普通ではないでしょうか。意外な場所から偶然に良いものが現れた、そんな状況がこの慣用句・ことわざからはうかがえます。

「棚から牡丹餅」の使い方・例文

「棚から牡丹餅」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「棚から牡丹餅」の類義語は?違いは?」を解説!/

古い日記帳から一万円札が出てきたとき、棚から牡丹餅とはまさにこのことだと思わず笑みがこぼれてしまった。

棚から牡丹餅といえば、先日大して営業もしていないのにクライアントから大きな仕事をいただいたところだ。

主力選手の故障による一軍昇格は棚から牡丹餅のこととはいえ、このチャンスを十分に生かさない手はない。

「棚から牡丹餅」をきちんと理解するには、思いがけない幸運の中身が何かを正確につかむことが大切です。特に「思いがけない」の部分を忘れずに押さえておきましょう。

最初の例文での幸運は、日記帳から一万円札が出てきたことです。普通、お金が出てくるのを期待して古い日記帳をめくる人なんていませんよね。

二つめの例文では、それが大きな仕事にあたります。こちらも、積極的に営業攻勢をかけた結果でもないのにというのがポイントです。

最後の例文では、いわゆる「棚ぼた式」に一軍昇格が決定しています。いずれにしても、けっして自分自身の努力などではありません。

#2 「棚から牡丹餅」の類義語は?違いは?

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では、次に「棚から牡丹餅」と似たような意味合いを持った言葉を確認していきましょう。

「渡りに船」

「渡りに船」は、望んでいたものがタイミングよく与えられる様子を表した慣用句です。そういった意味では、「棚から牡丹餅」と似た意味を持っているといえます。

ここでいう「渡り」が意味するのは、河川を渡ることです。昔は今と違い、大きな河川に橋はあまりかかっていませんでした。

したがって、それらを渡って向こう岸に行くには船に乗って渡してもらうしかなかったというわけです。運良くというのは「棚から牡丹餅」と同じですが、何かを望んでいたという点では異なるといえます。

「干天の慈雨」

「干天の慈雨」もまた、「棚から牡丹餅」の類義語となりえるものです。この慣用句は、日照りの際に降る恵みの雨を意味しています。

つまり、日照り続きで困っているときに幸運にも雨に恵まれたというわけです。こちらも、「棚から牡丹餅」と同じで幸運に恵まれてはいますが、望んでいるものが得られたという点で異なります。

\次のページで「「棚から牡丹餅」の対義語は?」を解説!/

友達と遊びに行くお金がないと困り果てていたところ、渡りに船とばかりに親戚のおじさんからお小遣いをもらえた。

女性とあまり縁のなかった健太が地元でも有名な美女から告白されたのは、まさに干天の慈雨といえるものであった。

#3 「棚から牡丹餅」の対義語は?

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さて、「棚から牡丹餅」の対義語はどのようにとらえればよいのでしょうか。このことわざ・慣用句の意味は、思いがけない幸運でしたね。

では、その反対はアンラッキーな出来事に見舞われることだといえるでしょう。ここでは、そのような意味合いを持ったことばを二つほどチェックしていきます。

「星回りの悪い」

「星回りの悪い」という慣用句は、人の運命を定めるという本命星(ほんみょうしょう)のめぐりあわせが悪いことを意味します。何だか難しそうな語句が出てきましたが、要するに運勢が悪いことを意味しているのだととらえてくれれば結構です。

星のめぐりあわせというレベルになると、人間の力ではもうどうすることもできませんよね。この慣用句は、そのような諦めの境地にも似たニュアンスを含んでいるといえます。

「貧乏くじを引く」

「貧乏くじを引く」もまた、「棚から牡丹餅」の対義語といえるものです。こちらの慣用句は、いちばん損な役が回ってくることを意味します。

もちろん「くじ」なわけですから、運悪くそのような事態になってしまったというニュアンスが含まれる点には注意が必要です。

数年ぶりに地元に戻ってきたというのに中学の頃に私をさんざんいじめてくれた先輩に出くわすなんて、何と星回りの悪いことだろう。

編集チームとライターが参加する忘年会の幹事を務めなければならないという、今年最後で最大の貧乏くじを引いてしまった。

#4 「棚から牡丹餅」の英訳は?

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では、最後に「棚から牡丹餅」を英語で表現するとどうなるのか、見ていきましょう。

\次のページで「「godsend」」を解説!/

「godsend」

「godsend」は、「棚から牡丹餅」の英訳としてはもっともシンプルなものだといえるでしょう。この単語は、「god(神)」と「send(送る)」の二つが合わさってできています。

したがって、この言葉は「神様から送られたもの」というのが語源だといえそうです。ただし、もともと望んでいたものがもらえたという点では「渡りに船」の方が近い存在かもしれません。

「windfall」

「windfall」もまた、「棚から牡丹餅」の英語訳といえるものです。こちらの単語は「wind(風)」と「fall(落ちる)」が組み合わさってできています。

風によって何が落ちてくるかといえば、それは何らかの果実のことです。期せずして果実が手に入る様子は、まさに「棚から牡丹餅」だといえますね。

「棚から牡丹餅」を使いこなそう

この記事では「棚から牡丹餅」の意味・使い方・類語などを説明しました。このことわざ・慣用句は、思いがけない幸運を意味するものでしたね。

大事なのは、そのような幸運に巡り合ったときにそれをどう生かすかです。とはいえ、普段からそのような心構えをしておくのはなかなか難しいのかもしれません。

幸運な出来事を意味する言葉なら、使うのにためらいは少ないはずです。みなさんも、機会があればどんどん「棚から牡丹餅」を使ってみましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「棚から牡丹餅」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

古い日記帳から一万円札が出てきたとき、棚から牡丹餅とはまさにこのことだと思わず笑みがこぼれてしまった。

棚から牡丹餅といえば、先日大して営業もしていないのにクライアントから大きな仕事をいただいたところだ。

主力選手の故障による一軍昇格は棚から牡丹餅のこととはいえ、このチャンスを十分に生かさない手はない。

「棚から牡丹餅」をきちんと理解するには、思いがけない幸運の中身が何かを正確につかむことが大切です。特に「思いがけない」の部分を忘れずに押さえておきましょう。

最初の例文での幸運は、日記帳から一万円札が出てきたことです。普通、お金が出てくるのを期待して古い日記帳をめくる人なんていませんよね。

二つめの例文では、それが大きな仕事にあたります。こちらも、積極的に営業攻勢をかけた結果でもないのにというのがポイントです。

最後の例文では、いわゆる「棚ぼた式」に一軍昇格が決定しています。いずれにしても、けっして自分自身の努力などではありません。

#2 「棚から牡丹餅」の類義語は?違いは?

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では、次に「棚から牡丹餅」と似たような意味合いを持った言葉を確認していきましょう。

「渡りに船」

「渡りに船」は、望んでいたものがタイミングよく与えられる様子を表した慣用句です。そういった意味では、「棚から牡丹餅」と似た意味を持っているといえます。

ここでいう「渡り」が意味するのは、河川を渡ることです。昔は今と違い、大きな河川に橋はあまりかかっていませんでした。

したがって、それらを渡って向こう岸に行くには船に乗って渡してもらうしかなかったというわけです。運良くというのは「棚から牡丹餅」と同じですが、何かを望んでいたという点では異なるといえます。

「干天の慈雨」

「干天の慈雨」もまた、「棚から牡丹餅」の類義語となりえるものです。この慣用句は、日照りの際に降る恵みの雨を意味しています。

つまり、日照り続きで困っているときに幸運にも雨に恵まれたというわけです。こちらも、「棚から牡丹餅」と同じで幸運に恵まれてはいますが、望んでいるものが得られたという点で異なります。

\次のページで「「棚から牡丹餅」の対義語は?」を解説!/

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