地学大気・海洋理科

日本に毎年のようにやってくる自然現象「台風」を理系ライターが丁寧にわかりやすく解説

熱帯低気圧の発生

ITCZ january-july.png
Mats Halldin – Own work. Based on Image:ZICT en janvier.jpg, Image:ZICT en juillet.jpg, and Image:BlankMap-World.png., パブリック・ドメイン, リンクによる

赤道をはさんで南北から吹く貿易風が収束する帯状の領域を熱帯収束帯と呼びます。熱帯収束帯は、季節とともに南や北に移動し、7月には上記画像の赤色、1月には上記画像の青色の位置です。熱帯収束帯は、気流が収束するため、空気が強制的に上昇しやすい場所となっています。これをきっかけにして多数の積乱雲が、不安定な熱帯海上の大気中で発達し、クラウドクラスターとよばれるものになるようです。

クラウドクラスターの水平的な広がりは数百kmの規模をもっています。その中には積乱雲や雄大積雲など対流性の雲が多数存在し、発達・消滅を繰り返していますが、個々の雲の寿命はそれぞれ数十分程度です。しかし、クラウドクラスター自体は組織化されており、数日程度の寿命をもって活動し、ゆっくり移動しています。これは台風の構造のところで述べた説明とよく似ていることがわかるでしょう。

熱帯低気圧のほとんどは、このようなクラウドクラスターから発生するようです。対流雲がバラバラではなく、ある領域内にまとまって発生と発達を繰り返しはじめると、それぞれの雲から放出された凝結熱が次第にその領域の上空に蓄積され、上空の空気が温まってきます。このようにしてクラウドクラスターによって作られるのが、地上付近の弱い低圧部です。

低圧部が形成されると空気が周辺から流れ込み始めますが、地球の自転にともなうコリオリ力が作用しているので、低圧部に向かって半時計回りに吹き込む弱い渦巻になります。ちなみに、コリオリ力は赤道の真上付近では働きません。これが赤道の真上で熱帯低気圧が発生しない理由です。

台風の移動と終息

発生した熱帯低気圧はコリオリ力が緯度によって異なるために発生するベータ効果とよばれるものと、ベータジャイロとよばれる効果のため北西に移動します。さらに日本付近では太平洋高気圧の風のために、太平洋高気圧の淵を回るように北東に進路を変更する場合もあるようです。これを台風の転向と言います。

台風のエネルギー源は水蒸気の潜熱であるため、水蒸気の供給が減少すると勢力が衰えることは予想できるでしょう。海面水温が26度未満の海域に入った場合、または陸地に上陸した場合は水蒸気の供給がなくなるため、急激に勢力が衰えます。一般に、日本の場合は台風は南海上で発達し、日本列島に接近・上陸すると衰える傾向があるようです。

初夏及び晩夏以降に日本列島に近づく台風は高緯度からの寒気を巻き込んで、徐々に温帯低気圧の構造に変化し前線を形成します。さらに高緯度に進み、前線が中心部にまで達すると温帯低気圧化は完了です。また、台風内の温暖な核が消滅することで温帯低気圧化する場合もあり、この場合は中心まで前線が達しないうちに、温帯低気圧化することもあります。

上記の画像は、台風が温帯低気圧化した際の画像です。

台風はさらに強くなる?

近年、台風が大型化していると言われます。これは世界的な現象で、地球温暖化による海面水温の上昇が原因のようです。今回説明しましたように、台風は海面水温の温度が高いほど発達します。温暖化により海面水温が上昇したり、日本の近海まで海面水温の高い範囲が広がれば台風は巨大になったり、巨大なまま日本に上陸したりするでしょう。

将来、スーパー台風とよばれるような台風が日本に上陸すれば、現在よりもより酷い被害が全国で発生する可能性があります。温暖化をできるだけゆるやかにしたり、スーパー台風に対応した建物やインフラを整備していく必要があるでしょう。

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