この記事では「春風駘蕩」について解説する。

端的に言えば春風駘蕩の意味は「春風がのどかに吹くこと」と「平穏で温厚な様子」の二つですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「春風駘蕩」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「春風駘蕩」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「春風駘蕩」の意味は?

「春風駘蕩」には、次のような意味があります。

[ト・タル][文][形動タリ]
1.春風がのどかに吹くさま。「春風駘蕩たる穏やかな日和」
2.物事に動じないで余裕のあるさま。ゆったりとのんびりしているさま。「春風駘蕩たる大人 (たいじん) 」

出典:大辞泉(小学館)「春風駘蕩」

1.春の景色ののどかなさま。春風がそよそよと気持ちよく吹くさま。
2.温和でのんびりとした人柄のたとえ。
▽「駘蕩」は春ののどかなさま。のびのびしたさま。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「春風駘蕩」

上記でご紹介した辞書にも記載されている通り、「春風駘蕩」には大きく分けて二つの意味があることがわかります。

1.春風の様子「穏やかに吹いていること」
2.物事や人柄に対して「おおらかで温和であること」

一見すると異なる二つの意味をもつように思える「春風駘蕩」ですが、実は落ち着いた春の気候をいうだけでなく、春風のような温和で穏やかな状態が物事や人柄から感じ取れる時にも使うことができる表現なのです。たとえば性格や態度が穏やかで余裕がある人がいれば、一緒にいると落ち着いたり、話しかけやすく感じるかもしれません。そんな彼らの人柄などに対して「春風駘蕩」であるということができます。

注意点は「春風(しゅんぷう)」を(はるかぜ)と読まないことです。普段あまり使われない「駘蕩(たいとう)」も一緒に覚えておきましょう。

ちなみに、辞書には「のどか」という言葉が度々登場していました。みなさんは詳しく意味を説明できますか?「のどかであること」は「春風駘蕩」の意味合いを効果的に表すキーワードになっていますので、ここで意味を確認してイメージを膨らませてみましょう。

「のどか」とは以下の状態を表す形容詞
静かに落ち着いている
急がずゆったりとくつろいでいる
のびのびと心地良い
心に悩みごとや不安がない
うららかな様子(※)

上記は「春風駘蕩」のもつニュアンスに共通した要素となっています。この心地良いのどかな様子が「春風駘蕩」の背景として佇んでいる、そんな距離感で思い浮かべてみてください。

※「うららか」には天候が晴れ晴れとして明るい様子を表す意味合いが含まれます。このため「春風駘蕩」も晴れの日の穏やかな様子を表していることがわかりますね。

「春風駘蕩」の語源は?

次に「春風駘蕩」の語源を確認しておきましょう。

「春風」春の日に吹く穏やかな風
「駘蕩」広くて大きい様子・春ののどかな様子

まず二つの熟語に分解して確認すると、上記の意味があることがわかりました。「春風」はその単語の文字通りではありますが、春に東または南から吹く穏やかな風のことを指しています。「駘蕩」はあまり聞き慣れない熟語かもしれませんが、単体でも春の穏やかさを表すことができ、「春風」と結びつくことで意味を強調する役割も担っていますね。

歴史的に「春風駘蕩」が知られたのは中国の詩人、謝朓(464-499)の漢詩によってであるといわれています。

「朋情は以って鬱陶たり 物はまさに駘蕩たり」
(友情や気持ちはわずらわしいが 春の景色は本当にのどかである)

\次のページで「「春風駘蕩」の使い方・例文」を解説!/

「春風駘蕩」の使い方・例文

「春風駘蕩」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼の春風駘蕩とした人柄にいつも救われている。

2.春風駘蕩の自然の中で改めて季節の美しさを感じた。

3.どんなに忙しい時でも同僚は朗らかにコミュニケーションをとってくれる。あの春風駘蕩さは周囲を明るい気持ちにさせる。

4.
A「先週末の休みはどんな風に過ごしたの?」
B「天気が良かったからお弁当をもってピクニックにでかけたよ。春風駘蕩に吹かれて気持ちがよかったなあ」

例文からも読み取れるように「春風駘蕩」は一般的に良いイメージをもつ褒め言葉として機能します。春の季節的な言葉として、また穏やかな態度や人柄に対して使ってみてくださいね。

「春風駘蕩」の類義語は?違いは?

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それではここで「春風駘蕩」の類義語を確認しましょう。

「春日遅遅」

「春日遅遅(しゅんじつちち)」は春は日暮れが遅いことを指す四字熟語です。「春風駘蕩」同様に穏やかな春ののどかな様子を表すこともできます。「春日遅々」と書かれることもありますので注意しましょう。

「春風駘蕩」の対義語は?

次に「春風駘蕩」の対義語を確認しましょう。

「秋霜烈日」

「秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)」は冷たい秋の霜と強い夏の日差しを指す四字熟語です。季節のもつ過酷で厳しい要素から転じて、態度や意思が厳しく激しいことを意味します。のどかな様子である「春風駘蕩」とは正反対のニュアンスをもっていることがわかりますね。

\次のページで「「春風駘蕩」の英訳は?」を解説!/

態度や意志が、激しく厳しいこと、また堅固であること。権威などが、厳正でおごそかなこと。
秋に降りた霜のように厳粛で、夏の暑く照りつける日の光のように強く厳しいことの意。刑罰などの厳しさについてもいう。

出典:四字熟語辞典(学研)「秋霜烈日」

「春風駘蕩」の英訳は?

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最後に「春風駘蕩」の英語表現を確認しましょう。

「warm」「genial」

warm は暖かい(温かい)様子を示す形容詞としてご存知の方も多いかと思いますが、genial は人が笑顔で親しみやすい様子を表します。また、気候が温かで快適であるという意味でも使うことができる形容詞です。

組み合わせても単体でも「春風駘蕩」に近いニュアンスを表すことができます。

I like his genial character.
彼の温和な性格が好きです。

There was something warm and genial about her.
彼女には春風駘蕩なところ(雰囲気)があった。

warm and genial spring weather
暖かく快適な春の天候(春風駘蕩)

「春風駘蕩」を使いこなそう

この記事では「春風駘蕩」の意味・使い方・類語などを説明しました。

みなさんはどの季節が好きですか?自分の生まれた誕生月が位置する季節か、はたまた特別なイベントがある季節か。それぞれに良さがあり、異なる雰囲気をもっていますよね。

「春風駘蕩」はのどかで穏やかな春の日を表し、またそのような人柄や態度についてたとえることができる美しい表現でした。文字だけで意味を覚えるだけでは国語を学ぶ面白みに欠けます。時代を超えて人々が五感で感じ、捉えてきた春のイメージがあるからこそ現在も熟語として機能しているのです。そこに私たちの感覚や感受性が加わって、言葉が次の時代に繋がっていくように筆者は考えています。言葉と季節に触れながら生きた言葉を使っていきましょう。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「春風駘蕩」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「春風駘蕩」について解説する。

端的に言えば春風駘蕩の意味は「春風がのどかに吹くこと」と「平穏で温厚な様子」の二つですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「春風駘蕩」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「春風駘蕩」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「春風駘蕩」の意味は?

「春風駘蕩」には、次のような意味があります。

[ト・タル][文][形動タリ]
1.春風がのどかに吹くさま。「春風駘蕩たる穏やかな日和」
2.物事に動じないで余裕のあるさま。ゆったりとのんびりしているさま。「春風駘蕩たる大人 (たいじん) 」

出典:大辞泉(小学館)「春風駘蕩」

1.春の景色ののどかなさま。春風がそよそよと気持ちよく吹くさま。
2.温和でのんびりとした人柄のたとえ。
▽「駘蕩」は春ののどかなさま。のびのびしたさま。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「春風駘蕩」

上記でご紹介した辞書にも記載されている通り、「春風駘蕩」には大きく分けて二つの意味があることがわかります。

1.春風の様子「穏やかに吹いていること」
2.物事や人柄に対して「おおらかで温和であること」

一見すると異なる二つの意味をもつように思える「春風駘蕩」ですが、実は落ち着いた春の気候をいうだけでなく、春風のような温和で穏やかな状態が物事や人柄から感じ取れる時にも使うことができる表現なのです。たとえば性格や態度が穏やかで余裕がある人がいれば、一緒にいると落ち着いたり、話しかけやすく感じるかもしれません。そんな彼らの人柄などに対して「春風駘蕩」であるということができます。

注意点は「春風(しゅんぷう)」を(はるかぜ)と読まないことです。普段あまり使われない「駘蕩(たいとう)」も一緒に覚えておきましょう。

ちなみに、辞書には「のどか」という言葉が度々登場していました。みなさんは詳しく意味を説明できますか?「のどかであること」は「春風駘蕩」の意味合いを効果的に表すキーワードになっていますので、ここで意味を確認してイメージを膨らませてみましょう。

「のどか」とは以下の状態を表す形容詞
静かに落ち着いている
急がずゆったりとくつろいでいる
のびのびと心地良い
心に悩みごとや不安がない
うららかな様子(※)

上記は「春風駘蕩」のもつニュアンスに共通した要素となっています。この心地良いのどかな様子が「春風駘蕩」の背景として佇んでいる、そんな距離感で思い浮かべてみてください。

※「うららか」には天候が晴れ晴れとして明るい様子を表す意味合いが含まれます。このため「春風駘蕩」も晴れの日の穏やかな様子を表していることがわかりますね。

「春風駘蕩」の語源は?

次に「春風駘蕩」の語源を確認しておきましょう。

「春風」春の日に吹く穏やかな風
「駘蕩」広くて大きい様子・春ののどかな様子

まず二つの熟語に分解して確認すると、上記の意味があることがわかりました。「春風」はその単語の文字通りではありますが、春に東または南から吹く穏やかな風のことを指しています。「駘蕩」はあまり聞き慣れない熟語かもしれませんが、単体でも春の穏やかさを表すことができ、「春風」と結びつくことで意味を強調する役割も担っていますね。

歴史的に「春風駘蕩」が知られたのは中国の詩人、謝朓(464-499)の漢詩によってであるといわれています。

「朋情は以って鬱陶たり 物はまさに駘蕩たり」
(友情や気持ちはわずらわしいが 春の景色は本当にのどかである)

\次のページで「「春風駘蕩」の使い方・例文」を解説!/

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