

ラグランジュ力学は、基本的にはニュートン力学と同じものであるがより抽象的になっている。この記事はニュートン力学をまったく知らない人には難しいかもしれない。ニュートン力学の基礎を学んだ後に見てほしい。
今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/トオル
物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。
ラグランジュ力学について

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力学は大きく分けて三つの形式があり、それはニュートンの形式、ラグランジュの形式、ハミルトンの形式です。すべて力学現象を扱っているのですが表現方法が少し違います。今回紹介するラグランジュ力学はラグランジュの形式で書かれた力学です。それぞれの形式にはそれぞれの利点があるのですが、簡単に言えばラグランジュの形式とハミルトンの形式は、ニュートンの形式に比べより抽象的になります。
なので一般的に力学を学ぶ場合はニュートンの形式から勉強することになっていますし、歴史的にも最初にニュートンの形式が開発されました。ニュートンの形式を研究していくなかで、ラグランジュの形式やハミルトンの形式が開発されていきます。ニュートンの形式に比べより抽象的なラングランジュの形式は、最初は少し戸惑うかもしれませんが、抽象的であるために理論的分析に向いていたり応用範囲が広いのが特徴です。
ニュートンの運動方程式

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まずはニュートンの運動方程式を復習しながら、表記法について確認していきましょう。ニュートンの運動方程式は質量掛ける位置の時間での2回微分が、加えられた力に等しいというものです。よって、質量mの質点に力Fが加わったときのニュートンの運動方程式を、三次元直交座標の場合を書くと一番上の左の三つの方程式になります。いちいち三つも書くのが面倒なので、この三つをまとめて右の一番上の式のように書きましょう。
力がポテンシャルVのみによって決定するとすると、左の二番目の式のような関係になり、これを保存力といいます。この式も三つ書くのが面倒なので、運動方程式と同様に右のような簡略表記にしておきましょう。力が保存力の場合、ニュートンの運動方程式は左の一番下の式となります。表記方法の意味は上と同じです。
運動量と全エネルギー

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先ほどのニュートンの運動方程式が成り立つ場合、上記画像の一番上の式のような質点の運動エネルギーが定義できます。ただし、この二乗は上記のようにベクトルのドット積での二乗であり、省略せずに書くと上記の二番目の式のようにすべての項の和となることを覚えておいてください。三番目の式のように、この運動量とポテンシャルの和を取ると全エネルギーEとなります。
つづいてこのEを時間で微分してみましょう。そうすると上から四番目の式のようになり、それを整理したのが一番下の式です。xの右上の白丸がついているのは時間で1階微分しているという意味であり、それぞれの積はドット積になっているとに注意してくだい。最後の式を見ると、{}の中にニュートンの運動方程式を代入するとゼロになることがわかります。
この式の意味は力がポテンシャルのみによって決まる場合、全エネルギーの時間微分はゼロ、つまり時間によらず常に一定であるという意味です。したがって、力が保存力の場合は全エネルギーは保存するというよく知られた結果を意味しています。
ラグランジュ方程式

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ここでラグラジアンと呼ばれるLを導入しましょう。これは上記画像の一番上の式のように、運動エネルギーからポテンシャルを引いたものになります。次にそれぞれの位置変数とその時間微分を独立変数とみなして、このLをそれぞれの位置変数で微分してみましょう。すると運動エネルギーには位置変数の時間微分しか含まれていませんので、二番目の式のようにポテンシャルを位置変数で微分したものにマイナスをつけたものがでてきます。
次にLを位置変数の時間微分したもので微分すると出てくのが、三番目の式のように運動エネルギーを普通に微分したものです。これを参考にして、四番目の式の左辺のようなものを計算しますと右辺が出てきます。これにニュートンの運動方程式を代入するとゼロです。よって一番下の式が得られます。これがラグランジュの運動方程式と呼ばれものです。これまでの議論から明らかなように、ニュートンの運動方程式とラグランジュの運動方程式は基本的には同じものであるのがわかります。

いったいなぜこんなことをするのか訝しく思うかもしれないが、こうやって出したラグランジュ方程式というものは便利なものなのだ。ラグランジュ方程式はそのまま覚えてしまったほうが早いと思う。
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