今回は「ダニエル電池」について解説していきます。

「ダニエル電池」は、1836年にダニエルによって考案された電池で、長い歴史を持つ。この電池は、ボルタ電池の改良版とも言えるぞ。ボルタ電池と同じで、ダニエル電池の構造は比較的単純です。ゆえに、電池の理解を深めるには、もってこいの教材でしょう。ぜひ、この機会に「ダニエル電池」について学んでくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。中学時代に、DIYで太陽光発電装置を製作するために、独学で電気工事士第二種という資格を取得してしまうほど熱い思いがある。

電池について

image by PIXTA / 50856130

まずは、電池とは一体何なのかを考えてみましょう。電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。最も身近な電池は、マンガン乾電池アルカリマンガン乾電池ですよね。これらは、家電製品のリモコンや動くおもちゃなどの電源として用いられています。今紹介した乾電池は一度放電すると、使えなくなってしまう電池ですから、一次電池です。

一方、充電することで、繰り返し使用できる二次電池もあります。スマートフォンやノートパソコンのバッテリーに使用されているリチウムイオン電池は、二次電池ですね

今回紹介するダニエル電池は、これらの電池が誕生する前に考案された原始的な一次電池です。構造が単純なダニエル電池は、電池の基本を学ぶ教材として、頻繁に取りあげられます。この記事では、ダニエル電池の仕組みを深堀りしていきますね。

ボルタ電池とは?

ボルタ電池とは?

image by Study-Z編集部

早速、ダニエル電池の解説に移りたいところですが、その前にボルタ電池の仕組みを復習しましょう。ボルタ電池の仕組みを理解していると、ダニエル電池についての学習がスムーズに進むからです。

ボルタ電池は、正極(プラス極)に銅板負極(マイナス極)に亜鉛板電解液に希硫酸を用いた電池ですよね。負極(マイナス極)では、亜鉛板がイオン化し、電子を放出しますその電子は豆電球などの抵抗負荷を通り、正極(プラス極)へと至るのです正極(プラス極)にたどり着いた電子は、希硫酸の水素イオンと反応して、水素ガスを発生させます。

これがボルタ電池の仕組みです。ボルタ電池の起電力は約1.1V(ボルト)ですが、通電後すぐに低下します。この現象を、分極と言いましたよね。

ダニエル電池について学ぼう!

\次のページで「ダニエル電池の構造」を解説!/

ダニエル電池の構造

ダニエル電池の構造

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ダニエル電池は、1836年に、イギリス人の物理学者であるダニエルによって考案された一次電池です。硫酸銅(Ⅱ)水溶液銅板を浸しものと、硫酸亜鉛水溶液亜鉛板を浸しものを、素焼き板を間に挟み接続することで作ることができますよ。

このとき、銅板が正極(プラス極)亜鉛板が負極(マイナス極)になります。ボルタ電池の場合と同様に、どの金属が正極(プラス極)または負極(マイナス極)になるかは、イオン化傾向標準電極電位の理論を用いて説明できますよね。

素焼き板は、硫酸銅(Ⅱ)水溶液と硫酸亜鉛水溶液が混合することを防ぎます。ただし、イオンは素焼き板を通過することができますよ。また、ダニエル電池の起電力は約1.1V(ボルト)です。

ダニエル電池の反応

ダニエル電池の反応

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ここでは、ダニエル電池の反応を考えましょう負極(マイナス極)では、亜鉛がイオン化して、亜鉛イオンと電子が生じます。その後、電子は豆電球などの抵抗負荷を通り、正極(プラス極)へと至りますね。それと同時に、亜鉛イオンは素焼き板を通って、正極(プラス極)側に移動します

正極(プラス極)側にたどり着いた電子は、硫酸銅(Ⅱ)水溶液中の銅イオンと結合して、銅に変化するのです。この銅は、銅板表面に析出しますよ。これと同時に、硫酸銅(Ⅱ)水溶液中の硫酸イオンは、素焼き板を通って、負極(マイナス極)へと移動しますね

素焼き板を通るイオンがどれであるかを判断する部分が、難しいと感じるかもしれません。その場合は、正極(プラス極)側と負極(マイナス極)側の電荷がそれぞれゼロとなるために、どのイオンが移動すればよいかを考えましょう

このような反応が次々とおこることで、負極(マイナス極)から正極(プラス極)へと電子が流れます。電流の向きと電子の流れの向きが逆向きであることを考慮すると、正極(プラス極)から負極(マイナス極)へ電流が流れていることが理解できますよね。また、ダニエル電池のように、電子の授受によって進行する反応を酸化還元反応と言います。

ダニエル電池を長持ちさせるには?

電池を使うとき、より長い時間電流を流すことができると便利ですよね。では、ダニエル電池の放電時間をより長くする方法を考えてみましょう。先ほど、負極(マイナス極)では亜鉛がイオン化し、正極(プラス極)では銅イオンと電子が結合することを学びました。

このことから、負極(マイナス極)側には亜鉛イオンが飛び出すスペースが必要で、正極(プラス極)側には銅イオンを十分供給することができる余裕が必要であるとわかりますよね。ですから、ダニエル電池を長持ちさせるためには、硫酸亜鉛水溶液の濃度を小さくして、硫酸銅(Ⅱ)水溶液の濃度を大きくすればよいのです。

\次のページで「濃淡電池とは?」を解説!/

濃淡電池とは?

ダニエル電池は、正極板と負極板に異なる金属を用いています。では、正極板と負極板に同じ金属を用いた場合、どのようになるでしょうか?イオン化傾向や標準電極電位の理論に基づくと、起電力はゼロになるはずですよね。

ですが、正極板と負極板に同じ金属を用いた場合でも、電極間に起電力が生じることがあるのです。実は、正極板が浸っている水溶液と負極板が浸っている水溶液の濃度が異なると、起電力が発生し電池になります。このとき、水溶液の濃度が大きいほうが、正極になりますよ

このような電池を、濃淡電池といいます。電極間の濃度勾配を起電力に置き換えているのです。ダニエル電池では、イオン化傾向の差によって電位差を作り出しました。

電池の進化

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ボルタ電池ダニエル電池といった原始的な電池はもちろん、鉛蓄電池マンガン乾電池にも電解液が使用されています。電池を持ち運びやすくするために、これらの電解液何かに浸み込ませたり、ゲル状にするといった工夫がなされてきました。ですが、いずれも電解液には、名前の通り「液体」が含まれています。

液体は、寒くなると凍ってしまいますよね。電解液が凍ってしまうと、電池の性能は急激に低下します。実際、スキー場で携帯電話を使うと、バッテリーがすぐにあがってしまうという現象がみられますよ。ですから、寒冷地で電池を使うのは、非常に難しいのです

そこで、次世代の電池として期待が集まっているのが、「全固体電池」ですよ。全固体電池の電解質は固体であるので、寒冷地でも電解液が凍ってしまう心配が一切ないのです。このようにして、電池の技術は進歩しているのですね。

ダニエル電池の仕組みを学ぼう!

電池について学んでいると、ボルタ電池の次に、ダニエル電池が登場するかと思います。ダニエル電池は、素焼き板(セパレーター)を用いた電池のうち、最も単純な構造をしているのです。ゆえに、初めてセパレーター型の電池の仕組みを学ぶ場合に、適しているのがダニエル電池だと言えます。

ぜひ、この機会にダニエル電池に対する理解を深めてみてください。

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化学

ダニエル電池って?その仕組みを理系学生ライターが5分でわかりやすく解説

今回は「ダニエル電池」について解説していきます。

「ダニエル電池」は、1836年にダニエルによって考案された電池で、長い歴史を持つ。この電池は、ボルタ電池の改良版とも言えるぞ。ボルタ電池と同じで、ダニエル電池の構造は比較的単純です。ゆえに、電池の理解を深めるには、もってこいの教材でしょう。ぜひ、この機会に「ダニエル電池」について学んでくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。中学時代に、DIYで太陽光発電装置を製作するために、独学で電気工事士第二種という資格を取得してしまうほど熱い思いがある。

電池について

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まずは、電池とは一体何なのかを考えてみましょう。電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。最も身近な電池は、マンガン乾電池アルカリマンガン乾電池ですよね。これらは、家電製品のリモコンや動くおもちゃなどの電源として用いられています。今紹介した乾電池は一度放電すると、使えなくなってしまう電池ですから、一次電池です。

一方、充電することで、繰り返し使用できる二次電池もあります。スマートフォンやノートパソコンのバッテリーに使用されているリチウムイオン電池は、二次電池ですね

今回紹介するダニエル電池は、これらの電池が誕生する前に考案された原始的な一次電池です。構造が単純なダニエル電池は、電池の基本を学ぶ教材として、頻繁に取りあげられます。この記事では、ダニエル電池の仕組みを深堀りしていきますね。

ボルタ電池とは?

ボルタ電池とは?

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早速、ダニエル電池の解説に移りたいところですが、その前にボルタ電池の仕組みを復習しましょう。ボルタ電池の仕組みを理解していると、ダニエル電池についての学習がスムーズに進むからです。

ボルタ電池は、正極(プラス極)に銅板負極(マイナス極)に亜鉛板電解液に希硫酸を用いた電池ですよね。負極(マイナス極)では、亜鉛板がイオン化し、電子を放出しますその電子は豆電球などの抵抗負荷を通り、正極(プラス極)へと至るのです正極(プラス極)にたどり着いた電子は、希硫酸の水素イオンと反応して、水素ガスを発生させます。

これがボルタ電池の仕組みです。ボルタ電池の起電力は約1.1V(ボルト)ですが、通電後すぐに低下します。この現象を、分極と言いましたよね。

ダニエル電池について学ぼう!

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