
HeLa細胞は生物学や医学の研究で使われる細胞です。どんな特徴があるのか、どんな研究に使われるのかを見ていこう。また、賛否両論あるその”始まり”についても知ってほしい。
大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。
- HeLa細胞とは?
- 特徴
- 用途
- 問題点
- HeLa細胞は誰の細胞か?
- HeLa細胞が私たちにもたらしたもの
この記事の目次

ライター/小野塚ユウ
生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。
HeLa細胞とは?
HeLa細胞(ヒーラさいぼう)とは、医療の基礎研究などで使われている、ヒトの培養細胞株です。1951年にジョージ・オットー・ゲイという生物学者によって確立されました。
ヒトの培養細胞としては最初の株であり、数多くの研究者がこの細胞を用いた実験を行ってきた歴史があります。
特徴
突然ですが、みなさんはがん(癌)という病気についてどれくらいご存知でしょうか?がんは遺伝子に異常が生じることで細胞の増殖、つまり細胞分裂が際限なく行われるようになり、組織を侵していく悪性腫瘍ができる病気です。

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際限なく細胞が分裂する、というのはがん細胞のもつ特徴の一つです。正常な体細胞であれば、細胞分裂には限界があります(ヘイフリック限界)。ある程度の回数細胞分裂を行うと、細胞は老化してアポトーシス(細胞死)にいたり、体から排除されるためです。
がん細胞は何らかの仕組みでその限界を突破し、コントロール不可能な増殖をし続けることで腫瘍になります。
HeLa細胞は、もともと癌細胞としてある患者の体内に存在していたものを分離し、培養した細胞株。そのため、非常に増殖能力が高く、細胞として不死であるという特徴があります。適切な環境で維持すれば、際限なく増殖させることができるのです。
By Doc. RNDr. Josef Reischig, CSc. – Author’s archive, CC BY-SA 3.0, Link
ヒトの細胞を使わなくてはいけない実験をするとき、細胞の老化や分裂の限界を心配しなくてよい、というのはとても重要です。同じ細胞をずっと維持できれば、さまざまな実験を時間をずらして行うこともできます。
HeLa細胞が確立され、この細胞が世界中の研究者のもとで使われるようになってからは、それぞれの研究室で延々と細胞分裂を繰り返しているのです。
用途
HeLa細胞が確立されたころ、とくにこれが利用されたのがウイルス研究の現場でした。
ウイルスは普通の生物と違い、自分自身だけでは個体を増やすことができません。DNAやRNAをヒトなど他の生物の細胞にうちこみ、その細胞内でウイルスのからだをつくらせるのです。
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