この記事では「雲散霧消」について解説する。

端的に言えば雲散霧消の意味は「跡形もなく消えてなくなること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「雲散霧消」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「雲散霧消」の意味や語源・使い方まとめ

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雲散霧消は「うんさんむしょう」と読みます。それでは早速、雲散霧消の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「雲散霧消」の意味は?

雲散霧消には、次のような意味があります。

雲や霧が消えるように、跡形もなくなること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「雲散霧消」

霧が晴れるように」という表現がありますが、それに近い意味の四字熟語です。きれいさっぱりなくなる、というニュアンスが含まれています。ちなみに、「くもの子を散らすように」という言い方もありますが、これは生き物の「蜘蛛(クモ)」のことをいい、蜘蛛の卵が包まれた袋を破ると、中から子どもの蜘蛛がたくさん出てきて散り散りになって逃げていく様子を表した慣用句です。雲散霧消とは特に関連性がなく、まったく意味が違うので、気をつけましょう。

「雲散霧消」の由来は?

使われている漢字から想像できる通り、雲が散り散りになって消えていく様子霧が消えていく様子に着想を得て完成された四字熟語です。実物の雲や霧も、重く立ち込めているときはあたりが薄暗くなって見えにくくなりますが、消えるときは見る見るうちに跡形もなくなくなってしまいます。

このことから、物事が跡形もなく消え去ってしまうことと同時に、晴れ渡る空のように視野や見通しがはっきりしてくる、という意味合いも込められた言葉です。消えることと見えることをあわせて、雲や霧に例えています。

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「雲散霧消」の使い方・例文

「雲散霧消」は、物事から人の気持まで幅広く使える便利な表現です。

それでは、「雲散霧消」の例文を見てみましょう。

私が半年かけてまとめていた取引の商談は、部長の一言で雲散霧消となった。

こまめにデータをセーブしておかないと、せっかく作った資料が雲散霧消となってしまうので注意しよう。

彼の約束は雲散霧消することが多い。

これは、物事が消えてしまう様子を表現するのに雲散霧消を用いた例文です。

社長に相談したことで、私の悩みが雲散霧消した。

正直に打ち明けたことで、長年のわだかまりが雲散霧消した。

採用面接にかけていた私の期待は雲散霧消した。

この例文では、人の気持を表す表現として雲散霧消を用いていますね。さらに、次のような使い方もできます。

抱えていた悩みをすべて打ち明けて、雲散霧消した気持になった。

ようやく試験が終わり、雲散霧消の心地である。

このように、人の気持を表す表現として雲散霧消を用いる場合、背後にある心情をあえて読み取らせるような書き方にして、「何が消えたのか」を明示しなくても文章が成立します。きれいさっぱりと消えてなくなってしまう様子を表しているので、ネガティブな場面でもポジティブな場面でも使うことができるので、使いこなせば使える場面の多い言葉です。

「雲散霧消」の類義語は?違いは?

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要するに、すっきりと消えてなくなってしまうことを表しているのが雲散霧消です。そういった意味の四字熟語はいくつかありますが、いずれも比ゆ表現になっているのがおもしろいところですね。代表的なものをご紹介します。

「雲消霧散」

よく雲散霧消の間違いとして挙げられる言葉ですが、雲散霧消をベースに完成された、れっきとした四字熟語です。もちろん、意味は雲散霧消とまったく同じですので、同じ意味の別表現として知っておくといいでしょう。

「煙散霧消」

霧が消えるように、という意味の「霧消」は同じですが、「雲」が「煙」に置き換わっています。「雲散」と同様、物事が消える様子を「煙が散り散りになって消える様子」に例えています。こちらも、雲散霧消と同じ意味です。

「雲散鳥没」

雲が散るように、という意味の「雲散」は同じですが、「霧消」の部分が「鳥没」に置き換わっています。

漢字から想像する通り「鳥がいなくなる様子」に例えていますが、「」という漢字が使われている点に注目してください。「鳥がいなくなる様子」というと、たとえばスズメの群れが一斉に飛び立つようなイメージがあるかもしれません。その場合、「鳥散」の方がふさわしい気がしますね。ここでいう「鳥没」は、夕暮れ時に鳥たちが山に帰っていく様子を表していると思われます。空を飛ぶ鳥たちが山に降り立っていくから「没」という漢字が使われているわけです。にぎやかに鳴き交わしながら空を飛び回っていた鳥たちがいなくなる様子を、物事が消えるたとえに用いています。この熟語も、意味は雲散霧消と変わりません

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比ゆ表現が使われている四字熟語

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ここまで説明した通り、雲散霧消は物事がきれいさっぱり消える様子を雲や霧に例えた四字熟語です。このように、表したい物事や意味を別のものに例える方法を比ゆ表現といいます。比ゆ表現が使われた四字熟語をいくつか見ていきましょう。

「明鏡止水」

明鏡止水は「めいきょうしすい」と読む熟語です。明鏡は良く磨かれた鏡、止水は文字通り静止した水を表します。これは、澄み切って落ち着いた心達観した心を表した表現です。もともと、中国の故事に由来する言葉で、師匠に従事する純粋な気持を明鏡に、穏やかで人々が自然と集まるような人間性を止水に例えています。このことから、明鏡と止水はどちらも優れた人格を表す言葉だということが分かりますね。

「磨穿鉄硯」

あまり聞き馴染みのない四字熟語かもしれませんが、「ませんてっけん」と読みます。鉄(てつ)の硯(すずり)を磨(みが)いて穴を穿(うが)つ、と書いて「磨穿鉄硯」です。現在も書道では行われていますが、毛筆で字を書く際、硯という道具を使って墨を削り、墨汁を作っていました。鉄でできた硯で墨を削り続けて、ついには穴を開ける、ということです。鉛筆が普及するまで、勉強するには毛筆を使わざるを得ませんでした。鉄でできた硯に穴が開くほど墨を使って勉強した、ということです。このことを、非常な努力家・勉強家であることのたとえに用いています。

「雲煙過眼」

雲煙過眼は「うんえんかげん」と読みます。この熟語でも雲や煙のたとえが登場しましたが、「雲散霧消」とは少し使われ方が違うことに注目しましょう。雲煙過眼は「雲や煙が目の前を通り過ぎる様子」を表しています。これは、「目の前を雲や煙が通り過ぎていくように、物事に執着しない」という意味です。同様の意味で、「行雲流水」という四字熟語もあり、こちらは「雲が行き、水が流れるように」というたとえになっています。

「雲散霧消」を使いこなそう

今回の記事では、雲散霧消の意味や由来、使い方について説明しました。さらに、同じような比ゆ表現が使われているほかの四字熟語についても、比ゆの内容と熟語の意味について解説しました。

雲散霧消は「雲が散り、霧が消えるように」というたとえであることがわからないと、まったく意味が分からない四字熟語です。そのため、「何を何に例えているのか」という点をしっかりと覚えておく必要があります。そのかわり、何のたとえなのかさえ分かっていれば、はっきりと表現しにくいような微妙なニュアンスを伝えることもできる便利な熟語です。多くの場合、言葉の意味にこだわるより、比ゆに使われている情景を思い浮かべたほうが、表現しようとしている内容が直感的に感じ取れると思います。表意文字である漢字を使った、日本語ならではの文化といえるでしょう。

雲散霧消のような比ゆ表現が使われた熟語を自分の文章に取り入れることができると、文章表現がぐっと豊かになります。特に小論文やスピーチ原稿などで活躍しますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。

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【四字熟語】「雲散霧消」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「雲散霧消」について解説する。

端的に言えば雲散霧消の意味は「跡形もなく消えてなくなること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「雲散霧消」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「雲散霧消」の意味や語源・使い方まとめ

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雲散霧消は「うんさんむしょう」と読みます。それでは早速、雲散霧消の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「雲散霧消」の意味は?

雲散霧消には、次のような意味があります。

雲や霧が消えるように、跡形もなくなること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「雲散霧消」

霧が晴れるように」という表現がありますが、それに近い意味の四字熟語です。きれいさっぱりなくなる、というニュアンスが含まれています。ちなみに、「くもの子を散らすように」という言い方もありますが、これは生き物の「蜘蛛(クモ)」のことをいい、蜘蛛の卵が包まれた袋を破ると、中から子どもの蜘蛛がたくさん出てきて散り散りになって逃げていく様子を表した慣用句です。雲散霧消とは特に関連性がなく、まったく意味が違うので、気をつけましょう。

「雲散霧消」の由来は?

使われている漢字から想像できる通り、雲が散り散りになって消えていく様子霧が消えていく様子に着想を得て完成された四字熟語です。実物の雲や霧も、重く立ち込めているときはあたりが薄暗くなって見えにくくなりますが、消えるときは見る見るうちに跡形もなくなくなってしまいます。

このことから、物事が跡形もなく消え去ってしまうことと同時に、晴れ渡る空のように視野や見通しがはっきりしてくる、という意味合いも込められた言葉です。消えることと見えることをあわせて、雲や霧に例えています。

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