この記事では「面壁九年」について解説する。

端的に言えば「面壁九年」の意味は「一つのことに忍耐強く専念する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

学習塾経営者で国語が得意な「ぼすこ」を呼んです。一緒に「面壁九年」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぼすこ

国立大学教育学部卒業後、学習塾を経営。読書好きが高じて蓄えた幅広い知識と、得意教科である国語力で、四字熟語をわかりやすく解説していく。

「面壁九年」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「面壁九年」の意味や語源・使い方など、基本的な内容を押さえていきましょう。

「面壁九年」の意味は?

「面壁九年」について、辞書には次のように記されています。

1.達磨大師が、中国の少林寺で壁に向かって九年間座禅し、悟りを開いたということ。


出典:大辞林第三版(三省堂)「面壁九年」

「面壁九年(めんぺきくねん)」の「面壁」は、顔を壁に向けるの意味で、字の通り、9年もの間、壁に向かっていた様子を表した四字熟語です。「九年」を「くねん」と読むのも、一つポイントなので、押さえておきましょう。辞書通りの意味から派生して、「長い時間をかけて粘り強く何かに取り組むこと」というたゆまぬ努力を表現した意味を持ち、最近では、この使われ方が一般的でしょう。前後の漢字を入れ替えて「九年面壁(くねんめんぺき)」という場合もありますが、意味は同じです。

「面壁九年」の語源は?

「面壁九年」の意味を確認したところで、次にその語源についても見ていくことにしましょう。実際に壁に9年も向かい続けるのは、容易なことではないですね。私なら1時間も保ちません。しかし、それを実際に行った人がいます。中国禅宗の開祖であるインドの仏教僧、達磨(だるま)です。

達磨は、悟りを開くための修行として、中国の嵩山少林寺にこもり、9年間壁に向かい続けたと伝えられています。実際9年もの間、壁に向かっていたかどうか、真偽は定かではありませんが、それぐらい修行に専念したということでしょうね。この達磨大師の様子を元にできた四字熟語が「面壁九年」です。

\次のページで「「面壁九年」の使い方・例文」を解説!/

「面壁九年」の使い方・例文

では、「面壁九年」をどのように使えばよいのか、例文を見ていきましょう。

1.私の兄は、面壁九年とも言えるほどの努力により、試験に合格して認定を受け、長年の憧れだった高難度の資格を取得した。
2.面壁九年、やっとこの痩せた土地に農業を根付かせることができた。

「面壁九年」の語源から考えると、達磨大師が長い時間をかけ、大変な思いをして悟ったことは、並大抵の努力ではありません。「面壁九年」は、長い時間一つのことに取り組み続けたという点と、大変な苦労であった、という点がポイントになります。「面壁九年」を使うときには、このポイントを思い出し、ふさわしいと思える場面で使うようにしたいですね。

紹介した例文は、どちらも長い時間かかったことと、一つの目的のために取り組み続けたことが書かれています。難しい資格に挑む、痩せた土地に農業を普及させる、どちらも少しの時間や生半可な努力では成し遂げられないことです。実際達成できたときには、周囲から自然と尊敬されることでしょう。修行によって悟りを開き、人々から尊敬された達磨大師のように、周りの人たちから自然と尊敬される、というのも、使い方のキーワードではないかと私は思います。

「面壁九年」の類義語は?違いは?

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「面壁九年」と似た意味を持つ言葉を探してみました。どんなものがあるのか、早速見ていきましょう。

「石の上にも三年」

石の上にも三年」は故事からできた慣用句です。冷たい石の上でも三年も座っていれば少しずつ温かくなってくるというたとえから、「辛いことも我慢して努力していればいつか結果が出る」という意味があります。「長く努力し続けて結果を手にする」という点で、「面壁九年」と似た意味と言えるでしょう。ただし、「面壁九年」の場合には、「一つのことを長く努力し続ける大変さ」という意味合いはあるものの、「つらいことを我慢する」という意味は持ちません。

「面壁九年」と「石の上にも三年」は、実のところ、意味以外にも似ているところがあります。それが語源です。諸説ありますが、「石の上にも三年」も、達磨大師の修行が語源ではないか、と言われています。

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「面壁九年」の対義語は?

「長く一つのことに取り組むこと」という意味の「面壁九年」の対義語は、どんな意味になるのでしょうか。

「三日坊主」

「三日坊主」は、皆さんもよく知っている四字熟語でしょう。「あきっぽくて長続きしないこと」という意味ですね。僧になるための修行を始めたものの、辛くて三日でやめてしまい、「三日だけ坊主」という言葉からできた「三日坊主」。達磨と同じ僧侶ではあるものの、修行をし続けて悟りを開いた達磨と、三日で修行から逃げ出し坊主をやめた三日坊主、語源から見ても、見事に反対の意味ですね。

「面壁九年」の英訳は?

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日本では「面壁九年」で意味が通じますが、海外ではそうもいきません。「面壁九年」の意味を正しく伝えるには、英語でどのように表現すればよいのでしょうか。

「facing a wall for nine years in meditation by Bodhidharma at Shaolin Temple」

「facing a wall for nine years」が「9年間壁に向かう」、「in meditation」が「瞑想に入る」とそれぞれ意味し、「9年間壁に向かって瞑想する」という意味になります。「Bodhidharma」は「達磨」、「Shaolin Temple」は「少林寺」です。単語が多く、少し長めではありますが、「面壁九年」の必要な要素をしっかりと入れ込んだ英熟語になっています。ただし、「長い時間一つのことに専念する」という「面壁九年」の意味までは伝わりにくそうですね。

「dedicate oneself to 〜 for a long time」

「面壁九年」の「長い間一つのことに専念する」という意味を英訳してみました。「専念する」という英単語はさまざまありますが、「dedicate」は、「専念する」以外にも「捧げる」という意味も持っているので、「面壁九年」にはふさわしいのではないでしょうか。ただし、この訳だと「面壁九年」という四字熟語をわざわざ使う必要がなくなってしまうんですね。

私は「面壁九年」は、語源も意味も素晴らしいですし、使う対象への尊敬もこめられた四字熟語だと思います。ですから、意味だけでなく、「面壁九年」という言葉にこめた自分の思いも含めて伝えられるようにしたいですね。

\次のページで「「面壁九年」を使いこなそう」を解説!/

「面壁九年」を使いこなそう

「面壁九年」について見てきました。「面壁九年」の語源となった達磨大師は、私たちが合格祈願や必勝祈願で頼りにする「だるまさん」のモデルになった人ですね。9年も壁に向かって修行したというのですから、本当にすさまじいものを感じます。同じように、難しい検定の合格や事業展開の成功、ノーベル賞の受賞や、オリンピックでのメダル獲得、何かを成し遂げた人は、みんな「面壁九年」、努力をしてきたのでしょうね。大きなことではなくても、「面壁九年」で、何かを成し遂げられる人になりたいと感じた今回の記事でした。

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【四字熟語】「面壁九年」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「面壁九年」について解説する。

端的に言えば「面壁九年」の意味は「一つのことに忍耐強く専念する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

学習塾経営者で国語が得意な「ぼすこ」を呼んです。一緒に「面壁九年」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぼすこ

国立大学教育学部卒業後、学習塾を経営。読書好きが高じて蓄えた幅広い知識と、得意教科である国語力で、四字熟語をわかりやすく解説していく。

「面壁九年」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「面壁九年」の意味や語源・使い方など、基本的な内容を押さえていきましょう。

「面壁九年」の意味は?

「面壁九年」について、辞書には次のように記されています。

1.達磨大師が、中国の少林寺で壁に向かって九年間座禅し、悟りを開いたということ。


出典:大辞林第三版(三省堂)「面壁九年」

「面壁九年(めんぺきくねん)」の「面壁」は、顔を壁に向けるの意味で、字の通り、9年もの間、壁に向かっていた様子を表した四字熟語です。「九年」を「くねん」と読むのも、一つポイントなので、押さえておきましょう。辞書通りの意味から派生して、「長い時間をかけて粘り強く何かに取り組むこと」というたゆまぬ努力を表現した意味を持ち、最近では、この使われ方が一般的でしょう。前後の漢字を入れ替えて「九年面壁(くねんめんぺき)」という場合もありますが、意味は同じです。

「面壁九年」の語源は?

「面壁九年」の意味を確認したところで、次にその語源についても見ていくことにしましょう。実際に壁に9年も向かい続けるのは、容易なことではないですね。私なら1時間も保ちません。しかし、それを実際に行った人がいます。中国禅宗の開祖であるインドの仏教僧、達磨(だるま)です。

達磨は、悟りを開くための修行として、中国の嵩山少林寺にこもり、9年間壁に向かい続けたと伝えられています。実際9年もの間、壁に向かっていたかどうか、真偽は定かではありませんが、それぐらい修行に専念したということでしょうね。この達磨大師の様子を元にできた四字熟語が「面壁九年」です。

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