この記事では「有象無象」について解説する。
端的に言えば「有象無象」の意味は「取るに足りない雑多な集まり」ですが、「有象」と「無象」がそれぞれどういった意味の言葉か疑問に思ったことはないか?
今回はそんな「有象無象」の意味や語源、類語と比較した使い方の違いなどを文学部卒webライターのリカと一緒に学んでいきます。

ライター/リカ

文学部卒のwebライター。在学中、様々な言葉について論文を執筆し、卒業後も日常で疑問を持った言葉についてすぐに調べることを習慣付けている。

「有象無象」の意味・語源・使い方は?

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それでは早速「有象無象」の意味や語源、使い方を確認してみましょう。

「有象無象」は「取るに足りない雑多な集まり」

「有象無象」を辞書で調べてみると「うざうむざう」という項目が見つかります。「うざうむざう」とは「うぞうむぞう(有象無象)」を古い仮名遣いで表記したものです。

1.仏語。有相(うさう)と無相(むさう)。この世に存在する一切のもの。
2.転じて、取るに足りない、雑多な連中。

出典:角川古語大辞典(角川書店) 「うざうむざう(有相無相・有象無象)」

上記のように「有象無象(有相無相)」には2つの意味が記載されています。

仏語(仏教で使用される言葉)が由来となっており、元々は1のこの世の存在するすべてのものと意味で使用される四字熟語でした。

それが時とともに変化し、2のとるに足りない雑多な集まりという意味で使われるようになったんですね。

現代で「有象無象」が使われている場合、ほとんどが2のとるに足りない雑多な集まりという意味で用いられます。

「有象無象」の語源は?

「有象無象」は「有象」と「無象」の2つの単語から成り立った四字熟語です。上でも述べたように「有象」と「無象」はどちらも仏語(仏教で使用される言葉)で、「有象(有相)」にはこの世に存在する姿や形のある物・事象を指し、「無象(無相)」には有象とは反対に姿形や実体のないものを指します。

これら2つの言葉を合わせて「姿形の有るもの、無いものの一切を含めたこの世に存在するもの全て」という意味の四字熟語になったんですね。

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「有象無象」の使い方・例文

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次に「有象無象」の使い方を確認してみましょう。

1.事故が起きた現場にはすぐに有象無象の人々が集まってきた。
2.有象無象の集まりの中で彼はひときわ優秀な人材だ。

1の例文では事故が起こった現場に人々が次々と集まってきた様子を表しています。事故現場に野次馬のように集まってくる人々はあまり褒められるものではありませんね。

2の例文ではあまり優れた人のいない集団の中で1人だけ優れた人物がいる様子を表しています。平凡な人達の中で抜きんでて優秀な人物はそれだけ目立ちますよね。

このように人を卑下して使用する言葉のため基本的に日常で人に対してあまり使用するべきではない言葉ですね。

「有象無象」の類義語は?違いは?

次に「有象無象」の類義語とその違いを確認してみましょう。

「 一切合切」:何もかも残さず全て

「一切合切」は何もかも残さず全てという意味の言葉です。「有象無象」の1の「この世に存在する一切のもの」という意味に近いですね。

「一切」と「合切」という2つの単語から成り立つ言葉で「一切」には全て、残らずという意味があり、「合切」には何もかも、全部という意味があります。

このように似た意味の単語を重ねて意味を強調している四字熟語です。

\次のページで「「烏合の衆」:無秩序に寄り集った人の集まり」を解説!/

「烏合の衆」:無秩序に寄り集った人の集まり

「烏合の衆」とは無秩序に寄り集まった人の集まりという意味の言葉です。「烏合」とは烏(カラス)が集まっている様子を表し、「衆」には多数の人という意味があります。

烏は集まったり、バラバラになったり、規則なく好きなように行動すると言われていることから、「烏合の衆」とは無秩序に集まった、規律もなく、役に立たない人々という意味になるんですね。

他にもある仏教が由来のたくさんのものを指す言葉!

「有象無象」の他に仏教が由来になっているたくさんのものを指す言葉には「森羅万象」が挙げられます。

「森羅万象」は「森羅」と「万象」の2つの単語から成り立つ四字熟語です。

「森羅」は樹木が生い茂り並んでいる様子からできた言葉で無数に並び連なることという意味の言葉でした。そこから転じて天地の間に存在する多くのものという意味に変化していきました。「万象」は様々な形、形あるもの全てという意味の言葉です。

「森羅万象」も「一切合切」と同じく似た意味の単語を重ねて意味を強調している四字熟語ですね。元々は仏教用語として使用されていた言葉ですが、時代が経つとともに日常会話でも使用されるようになった言葉です。

「有象無象」の対義語は?

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続いて「有象無象」の対義語を確認してみましょう。「有象無象」の反対の意味というといくつか考えられますが、今回は少数の選ばれた人物という意味の「精鋭」「傑物」を例に挙げています。

「精鋭」:選り抜きの優れた人物

「先鋭」という言葉には2つの意味があります。1つ目は強く、勢いのある様子という意味で、2つ目は選り抜きの優れた人物・兵士という意味です。「有象無象」の反対の意味、つまり選ばれた優れた人物という意味に当てはまるのは2つ目の意味ですね。「精鋭」の「精」には選りすぐってあることという意味があり、「鋭」には優れた兵士という意味があります。

この2つの漢字を合わせて選び抜かれた優れた人物・兵士という意味になるんですね。

「傑物」:傑出した優れた人物

「傑物」は傑出した優れた人物という意味の言葉です。

「傑物」の「傑」にはひと際優れた人物・ものという意味があります。「精鋭」と同じように「有象無象」の反対の意味をもつ言葉ですね。

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「有象無象」を英語で言うと?

続いて「有象無象」を英語での表現について確認してみましょう。

「small fry」

「small fry」は英語で「有象無象」を言い表せる表現の1つです。

「fry」といえば日本では揚げ物という意味が世間一般で知られていますが、他にも意味を持っており、ここでは幼魚・稚魚を表します。

small(小さい)と fry(稚魚)で取るに足らない小さな稚魚という意味になり、比喩的に重要でない、取るに足らない人々や物を指す表現です。

「mob」「rabble」

「mob」と「rabble」は似た意味を持つ英単語で大衆、野次馬たち、暴徒などの意味があります。

ただ単に大勢に人々を指すのではなく多く集まって暴徒化する人々と言うように否定的なニュアンスのある単語で「有象無象」と近い意味の表現と言えるでしょう。

特に「mob(モブ)」は日本の漫画などでしばしば用いられる「主要人物以外のキャラクター、名前の無いキャラクター」という意味の「モブ(キャラ)」とは本来はかなり異なる意味の単語のため注意が必要です。

「有象無象」の人にならないように努力しよう

今回は「有象無象」の意味や語源や使い方を学んできました。

上で述べたように「有象無象」とは取るに足りない人々を意味する言葉なので人に対してあまり使用するべきではない表現ですが、人から自分対してもそのように言われないように日々努力が必要です。

様々な言葉の意味について学んで豊富な知識をつけることも有象無象ではない優秀な人になるための第一歩かもしれませんね。

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国語言葉の意味

仏教が由来?「有象無象」の意味って?語源・類義語・対義語など文学部卒webライターがわかりやすく解説

この記事では「有象無象」について解説する。
端的に言えば「有象無象」の意味は「取るに足りない雑多な集まり」ですが、「有象」と「無象」がそれぞれどういった意味の言葉か疑問に思ったことはないか?
今回はそんな「有象無象」の意味や語源、類語と比較した使い方の違いなどを文学部卒webライターのリカと一緒に学んでいきます。

ライター/リカ

文学部卒のwebライター。在学中、様々な言葉について論文を執筆し、卒業後も日常で疑問を持った言葉についてすぐに調べることを習慣付けている。

「有象無象」の意味・語源・使い方は?

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それでは早速「有象無象」の意味や語源、使い方を確認してみましょう。

「有象無象」は「取るに足りない雑多な集まり」

「有象無象」を辞書で調べてみると「うざうむざう」という項目が見つかります。「うざうむざう」とは「うぞうむぞう(有象無象)」を古い仮名遣いで表記したものです。

1.仏語。有相(うさう)と無相(むさう)。この世に存在する一切のもの。
2.転じて、取るに足りない、雑多な連中。

出典:角川古語大辞典(角川書店) 「うざうむざう(有相無相・有象無象)」

上記のように「有象無象(有相無相)」には2つの意味が記載されています。

仏語(仏教で使用される言葉)が由来となっており、元々は1のこの世の存在するすべてのものと意味で使用される四字熟語でした。

それが時とともに変化し、2のとるに足りない雑多な集まりという意味で使われるようになったんですね。

現代で「有象無象」が使われている場合、ほとんどが2のとるに足りない雑多な集まりという意味で用いられます。

「有象無象」の語源は?

「有象無象」は「有象」と「無象」の2つの単語から成り立った四字熟語です。上でも述べたように「有象」と「無象」はどちらも仏語(仏教で使用される言葉)で、「有象(有相)」にはこの世に存在する姿や形のある物・事象を指し、「無象(無相)」には有象とは反対に姿形や実体のないものを指します。

これら2つの言葉を合わせて「姿形の有るもの、無いものの一切を含めたこの世に存在するもの全て」という意味の四字熟語になったんですね。

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