この記事では「破顔一笑」について解説する。
端的に言えば、破顔一笑の意味は「顔をほころばせ、にっこり笑うこと」です。笑顔には違いないが大爆笑ではないぞ。言葉の持つニュアンスや類義語との違いを押さえておこう。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「破顔一笑」の意味を確認し、使い方や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「破顔一笑」の意味と使い方

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では、さっそく辞書で「破顔一笑」の意味を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「破顔一笑」の意味

まずは辞書で「破顔一笑」の意味をチェックしましょう。「破顔」と「一笑」についても見ていきますよ。

顔をほころばせて、にっこり笑うこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「破顔一笑」 


顔をほころばせて笑うこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「破顔」 

1.ちょっと笑うこと。にっこりすること。
2.一つの笑いぐさにすること。また、笑うべきものとして問題にしないこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「一笑」

破るという字の印象から、「破顔一笑」は顔をくしゃくしゃにして大笑いするようなイメージを持つ人がいるかもしれませんね。しかし辞書を見ると「破顔」とは「顔をほころばせ、笑う」ことです。また、「一笑」とは「ちょっと笑う」「にっこりする」ことですね。「破顔一笑」は、大爆笑することではありません。「顔をほころばせ、にっこり笑う」というニュアンスの笑いなのです。

「破顔一笑」の使い方

「破顔一笑」はどのように使えばいいのでしょうか。次は例文で使い方を見ていきましょう。

1.試験結果を確認するまで彼女はずっと顔を強張らせていたが、自分の受験番号を見つけて破顔一笑した。
2.いつも険しい表情をしている彼だが、昨年生まれた初孫が訪れるときだけは破顔一笑するらしい

\次のページで「「破顔一笑」の類義語」を解説!/

最初の例文は、受験に合格したことを確認してにっこりしたという意味です。学校での合格発表でもよく見られる光景ですし、ネットで確認しても思わずにっこりしてしまいますね。2番目の例文は、ふだんあまり笑顔を見せない人でも、幼い孫の様子には思わず笑顔を見せてしまうという意味です。これも、よくありそうな光景ですね。

「破顔一笑」の類義語

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「破顔一笑」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「破顔微笑(はがんみしょう)」:自然に笑みがこぼれる

「微笑」は「びしょう」ではなく「みしょう」とよみます。「破顔微笑」「心に悟るところがあり、自然に笑みがこぼれる」という意味。鎌倉時代の道元の著書『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』に由来しています。

「仏がささげられた華を手にして拈(ねん)じたところ、大衆はその意味がわからなかったが、弟子の摩訶迦葉(まかかしょう)だけは理解してほほ笑んだ」という故事にちなんだ言葉です。「拈華微笑(ねんげみしょう)」ともいいます。

「喜色満面」:喜びが顔全体にあふれている

「喜色」は「うれしそうな表情」「喜んでいる」という意味です。「色」という単語は、それだけで「人の顔色」「表情」などの意味があります。「満面」は「顔中(かおじゅう)」「顔全体」という意味。「喜色満面」が意味するのは「喜びを隠しきれず、うれしそうな表情が顔全体にあふれ出ている」ことです。「破顔一笑」と比べると「喜色満面」のほうが喜びの表現が大きいですね。

\次のページで「「頬がゆるむ」など:うれしくなってニコニコする」を解説!/

「頬がゆるむ」など:うれしくなってニコニコする

四字熟語以外にも「破顔一笑」と同じ意味を持つ言葉はあります。「頬がゆるむ」「うれしくなってニコニコする」「堅かった表情がやわらいで、口元がゆるむ」という意味です。「孫に会うと、つい頬がゆるんでしまう」といった使い方をします。ほかにも「笑みがこぼれる」「笑みを浮かべる」「口元がほころぶ」といった表現がありますよ。

「破顔一笑」の反対語

「破顔一笑」と反対の意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「顔面蒼白(がんめんそうはく)」:顔色が青ざめて見える

「顔面」は「顔の表面」、「蒼白」の「蒼」は深い青色のこと。「顔面蒼白」「病気や怪我、恐怖などのせいで、顔に血の気がなく青ざめて見えること」です。うれしいことがあると自然に笑みがこぼれるように、悲しい知らせや恐怖のせいで、すっとあおざめてしまうことがあります。「旅先で父が急死したという知らせに、彼女は顔面蒼白になった」といった使い方をしますよ。

「言笑自若(げんしょうじじゃく)」:平然としている

「言笑」は「打ち解けて笑いながら話すこと」、「自若」は「落ち着いていて、少しも慌てない様子」という意味があります。「言笑自若」「何があっても、平然としている」という意味です。

語源は『蜀史(しょくし)』関羽伝(かんうでん)。戦いで受けた矢傷が痛む関羽は、宴会のさなかに医者の手術を受けます。傷口を切開し、骨を削り、血があふれだしても平然と酒をのみ談笑していたという故事です。思わず口元がゆるむ「破顔一笑」に対して、「言笑自若」は大変の状態なのに平然とほほ笑んでいるという違いがあります。

「破顔一笑」の英訳

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次は「破顔一笑」を英語でどう表現するか見ていきましょう。

\次のページで「「smile broadly」:満面に笑みを浮かべる」を解説!/

「smile broadly」:満面に笑みを浮かべる

「smile」は「ほほ笑む」、「broadly」は「大まかに」「広く」などのほか「満面に」の意味があります。smile broadly「満面に笑みを浮かべる」という意味です。「She smiled broadly」で「彼女は満面に笑みを浮かべた」ですね。

「broadly」を別の単語に変えるとさまざまな笑い方が表現できます。「smile happily」は「うれしそうにほほ笑む」、「smile sadly」は「悲しげにほほ笑む」、「smile bitterly」は「苦々しそうに笑う」ですよ。

「break into a broad smile」:急に満面の笑みを浮かべる

「break intoには、「急に何かの動作を始める」という意味があります。「break into laughter」は「急に笑い出す」、「break into song」は「急に歌い出す」、「break into tears」は「急に泣き出す」ですね。

「broad」は「大きな」「広い」などのほかに「満面に」の意味があります。break into a broad smileは直訳すると「急に満面の笑みを浮かべる」という意味なので「破顔一笑する」ですね。

「破顔一笑」を使いこなそう!

この記事では、「破顔一笑」の意味を調べ、使い方や類義語などを解説しました。

「破顔一笑」は、大爆笑することではなく「顔をほころばせ、にっこり笑うこと」です。大爆笑、微笑、苦笑など、その人が置かれた状況によっていろいろな笑いがあり、いろいろなニュアンスの言葉があります。類義語との細かい違いを理解して「破顔一笑」を使いこなしてくださいね。

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国語言葉の意味

大笑いじゃない!「破顔一笑」の意味・使い方・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「破顔一笑」について解説する。
端的に言えば、破顔一笑の意味は「顔をほころばせ、にっこり笑うこと」です。笑顔には違いないが大爆笑ではないぞ。言葉の持つニュアンスや類義語との違いを押さえておこう。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「破顔一笑」の意味を確認し、使い方や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「破顔一笑」の意味と使い方

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では、さっそく辞書で「破顔一笑」の意味を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「破顔一笑」の意味

まずは辞書で「破顔一笑」の意味をチェックしましょう。「破顔」と「一笑」についても見ていきますよ。

顔をほころばせて、にっこり笑うこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「破顔一笑」 


顔をほころばせて笑うこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「破顔」 

1.ちょっと笑うこと。にっこりすること。
2.一つの笑いぐさにすること。また、笑うべきものとして問題にしないこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「一笑」

破るという字の印象から、「破顔一笑」は顔をくしゃくしゃにして大笑いするようなイメージを持つ人がいるかもしれませんね。しかし辞書を見ると「破顔」とは「顔をほころばせ、笑う」ことです。また、「一笑」とは「ちょっと笑う」「にっこりする」ことですね。「破顔一笑」は、大爆笑することではありません。「顔をほころばせ、にっこり笑う」というニュアンスの笑いなのです。

「破顔一笑」の使い方

「破顔一笑」はどのように使えばいいのでしょうか。次は例文で使い方を見ていきましょう。

1.試験結果を確認するまで彼女はずっと顔を強張らせていたが、自分の受験番号を見つけて破顔一笑した。
2.いつも険しい表情をしている彼だが、昨年生まれた初孫が訪れるときだけは破顔一笑するらしい

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