この記事では「南船北馬」について解説する。

端的に言えば南船北馬の意味は「絶えず旅をしていて、せわしないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「南船北馬」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「南船北馬」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは、早速「南船北馬(なんせんほくば)」の意味や語源・使い方を説明します。対になる「南」と「北」など印象的な漢字が並びますが、意味や語源について詳しく見ていきましょう。

「南船北馬」の意味は?

「南船北馬」には、次のような意味があります。まずは、現在使われている意味合いについて、チェックしていきますよ。

1.あちらこちらと絶え間なく旅を続けること。転じて、あちらこちらと忙しく動きまわること。

出典:四字熟語辞典(学研)

「南船北馬」は、「南船」で南方で船に乗り、「北馬」で北方では馬に乗っていることを表しています。そこから、いつも旅をしているようなイメージにつながりますよ。

転じて、旅ではなくても仕事や何らかの業務などで、忙しく動きまわっているようすを「南船北馬」と表現することもありますよ。「南船北馬」を楽しむというよりは、仕事や何かの目的のために「南船北馬」の日々を送るというニュアンスです。

「南船北馬」の語源は?

次に「南船北馬」の語源を確認しておきましょう。

中国で古くから「胡人(こじん)は馬を便とし、越人(えつじん)は船を便とす」という言葉があり、胡人とは中国北方の異民族のこと、越人とは中国南方の越諸族のことです。中国北方では馬を移動手段とし南方では船を移動手段とすることが一般的であったことを表しています。

中国の北方は山間部や平原が多く、また降水量も少ないため、移動手段は馬が中心となりました。一方、南方では、長江を中心に幅の広い河川や湖が多く、船による移動手段が発達していました。川の上流と下流の行き来だけではなく、長江あたりは川幅が広く向こう岸が見えないほどで場所によっては日本の瀬戸内海ぐらいの川幅がありますよ。

\次のページで「「南船北馬」の使い方・例文」を解説!/

「南船北馬」の使い方・例文

「南船北馬」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。もともとの意味で使う場合と転じて広がった意味合いで使う場合がありますよ。

1.大相撲の力士は本場所の合間に全国各地へ地方巡業へ行くので、まさに南船北馬と言える。
2.彼は、クレーム処理でさまざまな地域に出張し、南船北馬の日々を送っている。

例文の1.は、力士にとっては仕事ではありますが、各地を巡りながらその土地その土地でのふれあいもあって、たびに近い印象がありますね。もとの旅するという意味合いに近い例文でした。

2.のほうは、仕事上の出張であちこちに赴くようすが表現されています。こちらは、旅をするという印象ではなく、仕事上でやむなく駆けまわっているようすが伝わりますね。

「南船北馬」の類義語は?違いは?

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それでは、「南船北馬」の類義語についての説明です。意味合いのうち、どの部分に非常に近い意味となっているのかをチェックしていきましょう。

「東奔西走」

「南船北馬」の類義語には、「東奔西走(とうほんせいそう)」があります。意味は、「仕事や用事によって、あちこち忙しく走り回ること」です。

「南船北馬」の南北に対して、「東奔西走」の「東西」も広範囲に移動しているニュアンスを与える表現になっています。また、「奔走」で「物事がうまく運ぶように駆け回るなど努力すること」という意味がありますよ。

\次のページで「「多事多端」」を解説!/

「多事多端」

もう一つの類義語には、「多事多端(たじたたん)」があります。意味は、「仕事が多くて非常に忙しいようす」です。「多事」はするべきことが多いようすを表し、「多端」は「端」に始まりを表すので「多くのことが新たに始まる」という意味合いになります。

「南船北馬」や「東奔西走」とは違って移動を表す意味合いはありませんが、非常に忙しいようすを表現していますよ。

「南船北馬」の対義語は?

次は、「南船北馬」の対義語についての説明です。

「悠悠自適」

「南船北馬」の対義語には、「悠悠自適(ゆうゆうじてき)」があります。意味は、「俗世間から身を引いて、のんびりと思うままに暮らすこと」です。「悠悠」はゆったりと落ち着いたようすを表し、「悠々」「優遊」「優游」と書くことがありますよ。「自適」のほうは、自分の思うままに楽しんだり暮らすことを表します。

「南船北馬」の現代の転じた意味合いでは「忙しい」という意味合いが強いので、のんびりしたニュアンスのある「悠悠自適」とはちょうど反対の意味合いになりますね。

「閑雲野鶴」

対義語には、もう一つ「閑雲野鶴(かんうんやかく)」があります。意味のほうは、「世俗に拘束されず、自由にのんびりと暮らすこと」です。「閑雲」は大空にゆったりと浮かんでいる雲のことで、「野鶴」は野で気ままに遊んでいる鶴のことを表しています。

「南船北馬」の忙しいという意味合いと逆に、「閑雲野鶴」には広範囲に走り回るかどうかの意味合いはありませんが自由で気ままなニュアンスがりますよ。

「南船北馬」の英訳は?

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最後に、「南船北馬」の英訳について見ていきます。もちろん語源は違ってきますが、ほぼ同じ意味合いの表現がありますよ。

「being on the move」

「南船北馬」の英訳として、「being on the move」があります。「on the move」は転々と移動することを表しており、転じて「忙しい、多忙である」という意味です。「駆けまわる」と「忙しい」の意味を併せ持つ表現になっています。

ほかには、「on the move」の部分を「on the go」「on the run」「on the rush」「on the jump」などとしても、同様の意味で使うことができますよ。さらに、ストレートな表現でいうと「being busily engaged in(忙しく従事している)」という表現もあります。

\次のページで「「南船北馬」を使いこなそう」を解説!/

「南船北馬」を使いこなそう

今回の記事では「南船北馬」の意味・使い方・類語などを説明しました。もともあちこちを旅するという意味でしたが、転じて忙しく走り回るようすを表すようになっています。

現代の日本では馬で旅をすることは考えづらいので、旅をするという部分よりも忙しく動きまわっているという部分に焦点があたって使い続けられているのかもしれません。現代のように飛行機や新幹線がある時代からすると、馬では広範囲に移動しているニュアンスにつながりづらいですよね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「南船北馬」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「南船北馬」について解説する。

端的に言えば南船北馬の意味は「絶えず旅をしていて、せわしないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「南船北馬」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「南船北馬」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは、早速「南船北馬(なんせんほくば)」の意味や語源・使い方を説明します。対になる「南」と「北」など印象的な漢字が並びますが、意味や語源について詳しく見ていきましょう。

「南船北馬」の意味は?

「南船北馬」には、次のような意味があります。まずは、現在使われている意味合いについて、チェックしていきますよ。

1.あちらこちらと絶え間なく旅を続けること。転じて、あちらこちらと忙しく動きまわること。

出典:四字熟語辞典(学研)

「南船北馬」は、「南船」で南方で船に乗り、「北馬」で北方では馬に乗っていることを表しています。そこから、いつも旅をしているようなイメージにつながりますよ。

転じて、旅ではなくても仕事や何らかの業務などで、忙しく動きまわっているようすを「南船北馬」と表現することもありますよ。「南船北馬」を楽しむというよりは、仕事や何かの目的のために「南船北馬」の日々を送るというニュアンスです。

「南船北馬」の語源は?

次に「南船北馬」の語源を確認しておきましょう。

中国で古くから「胡人(こじん)は馬を便とし、越人(えつじん)は船を便とす」という言葉があり、胡人とは中国北方の異民族のこと、越人とは中国南方の越諸族のことです。中国北方では馬を移動手段とし南方では船を移動手段とすることが一般的であったことを表しています。

中国の北方は山間部や平原が多く、また降水量も少ないため、移動手段は馬が中心となりました。一方、南方では、長江を中心に幅の広い河川や湖が多く、船による移動手段が発達していました。川の上流と下流の行き来だけではなく、長江あたりは川幅が広く向こう岸が見えないほどで場所によっては日本の瀬戸内海ぐらいの川幅がありますよ。

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