今回は、「原子核崩壊」について解説していきます。

「原子核崩壊」は、不安定な原子核が安定な原子核へと姿を変えるときに起こる反応です。この反応の理論は、原子力発電などの科学技術を支えるもので、日本を含む世界中で研究開発されているぞ。今回は、「原子核崩壊」のメカニズムや種類について説明する。ぜひ、この記事を読んで「原子核崩壊」について学んでくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。放射化学、放射線物理学、原子力工学なども勉強中。

原子核について

image by PIXTA / 47015060

原子は、原子核その周りに存在する電子から構成されます。そして、原子核は複数の陽子と中性子が集合したものです。原子の化学的な性質は、原子核中の陽子の個数によって決定されますよね。陽子が1つであれば水素、陽子が2つであればヘリウムといった具合です。一方、中性子の数は、化学的な性質にほとんど影響を与えません。つまり、陽子がただ1つ含まれる原子は、中性子が何個含まれていても水素なのです。

では、中性子の数は原子核にどのような影響を与えるのでしょうか。実は、中性子の数は原子核の安定度に影響を与えます。水素の場合を例にとって考えてみましょう。天然に存在する水素は、中性子の数が0個(軽水素)、1個(重水素)、2個(三重水素)の合計3種類の同位体がありますよ。これらの存在比は軽水素が99.99%、重水素が0.01%、三重水素は極めて0に近い値となっています。したがって、水素の場合には中性子の数が0個の軽水素が最も安定的に存在することになりますね。重水素や三重水素は、安定度が低く存在しずらいものであることがわかります。

原子核崩壊とは?

先ほど、原子核には安定度という概念があり、存在しやすい原子核と存在しにくい原子核があると述べました。ここでは、安定度の低い原子核がどのような反応を起こすのかを考えますね。実は、安定度の低い原子核は、安定度の高い原子核へと変身するという性質があります。この変身の過程が原子核崩壊です。原子核崩壊の際には、非常に大きなエネルギーが放出されます

原子核崩壊について、より詳しく考えましょう。原子核崩壊のとき、安定度の低い原子核はいくつかの陽子や中性子の放出し、安定度の高い原子核に変化します。このときに放出される陽子や中性子のかたまりが放射線の正体なのです。また、放射線を出す性質がある原子核を放射性核種といい、放射線を出す能力のことを放射能といいます。

原子核崩壊の種類について学ぼう!

ここでは、原子核崩壊の種類について学びます。どのような条件において、どの種類の原子核崩壊が起きているのかをしっかりと理解できるようにしましょう。

\次のページで「アルファ崩壊」を解説!/

アルファ崩壊

アルファ崩壊

image by Study-Z編集部

アルファ崩壊は、不安定な原子核が、陽子と中性子をそれぞれ2つずつ含んだかたまり(ヘリウム原子核)を放出することにより、より安定的な原子核へと変化する反応です。アルファ崩壊は、原子番号が大きい原子核が、原子番号の小さい原子核へと変化する際に起こります

また、アルファ線と呼ばれる放射線の正体は、アルファ崩壊の際に放出されるヘリウム原子核なのです。ヘリウム原子核は比較的大きいことから、薄い紙などを通り抜けることはできません。ですから。アルファ線を遮蔽するのは簡単ですよ。しかしながら、アルファ線は電離作用が大きく、人体などに与える影響が大きいので注意が必要です

ベータマイナス崩壊

ベータマイナス崩壊

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ベータマイナス崩壊は、不安定な原子核が電子と反ニュートリノを放出し、より安定的な原子核へと変化する反応です。ベータマイナス崩壊は、中性子の数が陽子の数よりも多い原子核が、別の原子核に変化する際に起こる傾向がありますよ。

放出される電子は、ベータ線の正体でもあります。ベータ線を遮蔽するためには薄い金属板などが必要です。また、ベータ線はアルファ線に比べて電離作用が小さいとされています。

ベータプラス崩壊

ベータプラス崩壊

image by Study-Z編集部

ベータプラス崩壊は、不安定な原子核が陽電子とニュートリノを放出し、より安定的な原子核へと変化する反応です。陽電子は、電子と同じ質量で、陽子と同じ電荷をもった粒子ですよ。ベータプラス崩壊は、陽子の数が中性子の数よりも大きい原子核が、別の原子核に変化する際に起こることがあります。ここで放出される陽電子も、ベータ線として扱われますよ

陽子の数が中性子の数よりも大きい原子核は、電子捕獲反応(エレクトロンキャプチャー)と呼ばれる反応で、別の原子核に変化する場合もあります。電子捕獲反応(エレクトロンキャプチャー)が起きると、強いガンマ線が放出されますよ。ガンマ線も放射線の1つですよね。

\次のページで「ガンマ線の正体」を解説!/

ガンマ線の正体

原子核崩壊に伴って放出される代表的な放射線には、アルファ線とベータ線だけではなく、ガンマ線も含まれています。先ほど、電子捕獲反応(エレクトロンキャプチャー)が起こるときにガンマ線が放出されると述べましたが、実はアルファ崩壊やベータ崩壊が起こる際にもガンマ線が生じるのです。

しかしながら、アルファ崩壊やベータ崩壊の反応式にはガンマ線は含まれていませんよね。どのようなメカニズムでガンマ線が生じるのでしょうか?アルファ崩壊やベータ崩壊が起きた直後の原子核は励起状態にあるのです。励起状態とは、通常の状態(基底状態)よりも原子核がエネルギーを過剰に有していることを指します。そして、この過剰なエネルギーが放出されるときにガンマ線が生じるのです。

ガンマ線は電磁波であり、非常に強い透過能力をもちます。そのため、ガンマ線を遮蔽する場合には、厚い鉛板などが必要になるのです。一方、ガンマ線の電離作用はアルファ線やベータ線に比べて小さくなっていますよ

核分裂反応と連鎖反応

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原子核崩壊の際には、非常に大きなエネルギーが生じます。そこで、原子核崩壊を人為的かつ連続的に起こすことで、安定的に大きなエネルギーを取り出す仕組みが考え出されました。この仕組みを利用しているのが、原子力発電原子力潜水艦です。ここでは、どのようにして、原子核崩壊を人為的かつ連続的に起こさせるのかを考えましょう。

特定の原子核熱中性子を照射すると、その原子核は2つの別の原子核に分裂します。この際に、複数の中性子も生じますよこの中性子はもう一度、特定の原子核に衝突します。すると、同様の核分裂反応が生じて、中性子が出てきますよね。このような反応を繰り返すことができれば、安定的に大きなエネルギーを取り出すことができるのです。この繰り返しの過程を、連鎖反応といいます。

核分裂反応と連鎖反応を起こすことができる原子核は限られており、この性質をもつ物質を核燃料として用いるのです。現在、核燃料にはウラン235が用いられていますよ。

原子核崩壊について理解しよう

原子核崩壊は、核物理や放射化学といった学問の基本中の基本の部分です。このような知識をベースにして、原子力工学などを学んでいきます。核エネルギーに興味のある方は、まずはこの記事の内容を頭に入れておきましょう!

ぜひ、この機会に原子核崩壊について学んでみてください。

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物理理科量子力学・原子物理学

原子核崩壊のメカニズムとは?理系学生ライターが詳しくわかりやすく解説!

今回は、「原子核崩壊」について解説していきます。

「原子核崩壊」は、不安定な原子核が安定な原子核へと姿を変えるときに起こる反応です。この反応の理論は、原子力発電などの科学技術を支えるもので、日本を含む世界中で研究開発されているぞ。今回は、「原子核崩壊」のメカニズムや種類について説明する。ぜひ、この記事を読んで「原子核崩壊」について学んでくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。放射化学、放射線物理学、原子力工学なども勉強中。

原子核について

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原子は、原子核その周りに存在する電子から構成されます。そして、原子核は複数の陽子と中性子が集合したものです。原子の化学的な性質は、原子核中の陽子の個数によって決定されますよね。陽子が1つであれば水素、陽子が2つであればヘリウムといった具合です。一方、中性子の数は、化学的な性質にほとんど影響を与えません。つまり、陽子がただ1つ含まれる原子は、中性子が何個含まれていても水素なのです。

では、中性子の数は原子核にどのような影響を与えるのでしょうか。実は、中性子の数は原子核の安定度に影響を与えます。水素の場合を例にとって考えてみましょう。天然に存在する水素は、中性子の数が0個(軽水素)、1個(重水素)、2個(三重水素)の合計3種類の同位体がありますよ。これらの存在比は軽水素が99.99%、重水素が0.01%、三重水素は極めて0に近い値となっています。したがって、水素の場合には中性子の数が0個の軽水素が最も安定的に存在することになりますね。重水素や三重水素は、安定度が低く存在しずらいものであることがわかります。

原子核崩壊とは?

先ほど、原子核には安定度という概念があり、存在しやすい原子核と存在しにくい原子核があると述べました。ここでは、安定度の低い原子核がどのような反応を起こすのかを考えますね。実は、安定度の低い原子核は、安定度の高い原子核へと変身するという性質があります。この変身の過程が原子核崩壊です。原子核崩壊の際には、非常に大きなエネルギーが放出されます

原子核崩壊について、より詳しく考えましょう。原子核崩壊のとき、安定度の低い原子核はいくつかの陽子や中性子の放出し、安定度の高い原子核に変化します。このときに放出される陽子や中性子のかたまりが放射線の正体なのです。また、放射線を出す性質がある原子核を放射性核種といい、放射線を出す能力のことを放射能といいます。

原子核崩壊の種類について学ぼう!

ここでは、原子核崩壊の種類について学びます。どのような条件において、どの種類の原子核崩壊が起きているのかをしっかりと理解できるようにしましょう。

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