この記事では「歯に衣着せぬ」について解説する。

端的に言えば歯に衣着せぬの意味は「遠慮せずに思ったことを言う」ことですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「歯に衣着せぬ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「歯に衣着せぬ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「歯に衣着せぬ(はにきぬきせぬ)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「歯に衣着せぬ」の意味は?

「歯に衣着せぬ」には、次のような意味があります。

思ったとおりをずけずけと言う。「―◦ぬ批評」
[補説]「衣 (きぬ) 」は衣服のこと。「歯に絹着せぬ」と書くのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「歯に衣着せぬ」

思ったことがあれば、遠慮せずに相手に率直に伝えるさまを「歯に衣着せぬ」といいます。辞書に「ずけずけと」とありますが、これは遠慮や加減をしないではっきりと口に出す様子を表す副詞です。

キーワードは「はっきりする」「遠慮しない」こと。
たとえば上司や先輩が間違ったことをしていて、周囲もおかしいと思っているものの、遠慮して黙っている状況があるとします。そこで「それは違うと思います」とはっきり言う人がいたならば、その発言は「歯に衣着せぬ」物言いであるといえるのです。良い意味・悪い意味どちらに対しても使うことができるので、文脈によって判断しましょう。

注意点としては、「衣(きぬ)」を「ころも」と読まないこと、そして漢字を「絹」としないことです。

「歯に衣着せぬ」は否定形として使われ、「歯に衣着せず」も同義語です。ちなみに肯定形にして「歯に衣着せる」とは言いませんが、「奥歯に衣着せる」(はっきり言わず、思わせぶりに言う)という対義語が存在します。

・否定形「歯に衣着せぬ」「歯に衣着せず」は同義語
・肯定形「奥歯に衣着せる」は対義語

(「歯に衣着せる」とは言わないので注意)

「歯に衣着せぬ」の語源は?

次に「歯に衣着せぬ」の語源を確認しておきましょう。

ここでの「衣」とは衣服・着物を指します。歯が実際に服を着ることはありませんが、衣類を身にまとう歯を一度想像してみてください。とても思い通りに話ができる状態ではないことがわかりますよね。文字通り口ごもって、言いたいことが言えない状態となるはずです。

逆に、「歯に衣着せぬ」とは歯が衣服を着ておらず、言いたいことを口に出すことができる様子を表します。「衣着せぬ」とは比喩表現ですが、一度イメージすれば納得できる語源であるといえるでしょう。

\次のページで「「歯に衣着せぬ」の使い方・例文」を解説!/

「歯に衣着せぬ」の使い方・例文

「歯に衣着せぬ」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.今年ブレイクした芸能人Aは、テレビ番組での歯に衣着せぬ物言いで人気を集めた。
2.彼女の歯に衣着せぬ発言は非常に的確で、周囲からの信頼も厚い。
3.母の指摘は正論だが、時としてその歯に衣着せぬ言い方は厳しく感じる。

「歯に衣着せぬ」は形容詞として文中で使われ、代表的なものとしては

・歯に衣着せぬ物言い
・歯に衣着せぬ言い方
・歯に衣着せぬ発言   などが挙げられます。

自分ではなく他人に対して使われるのが一般的です。また、与える意味合いは場面や心情によって変化します。
たとえばみんなが我慢していることを誰かが歯に衣着せず発言すれば、周囲には「助かった!よくぞ言ってくれた」とポジティブに受け取られ、「歯に衣着せぬ発言がその場を救った」のように文中でも褒め言葉として作用するでしょう。

しかし反対に、誰かのミスなどに対して歯に衣着せぬ指摘をすれば、相手によっては責められたと感じてネガティブに捉えるかもしれません。この場合には「歯に衣着せぬ指摘が相手を苦しめた」として、悪い意味合いをもつでしょう。

「歯に衣着せぬ」の類義語は?違いは?

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それでは「歯に衣着せぬ」の類義語を確認していきましょう。

「忌憚なく」

「忌憚(きたん)なく」は、遠慮やためらいのない様子をいう表現です。

そもそも忌憚とは、いやがることや遠慮することを指します。否定の語を伴い「忌憚なく言う・述べる」「忌憚のない意見」などのように使われることが一般的です。

「腹蔵なく」

「腹蔵(ふくぞう)なく」は本心を隠さずに表に出す様子を指します。

腹蔵とは、本心を隠して決して表に出さないことをいい、そこに否定語を伴って使われることが一般的です。本音で語り合う際に「腹を割って話そう」などと言いますが、「腹蔵なく〜」にも同様に正直・本音であるというニュアンスが含まれています。

\次のページで「「胸襟を開く」」を解説!/

「胸襟を開く」

「胸襟(きょうきん)を開く」は、思いをすっかり打ち明けるという意味の慣用句です。

胸襟とは、胸のうちや心の中、本心のことをいいます。その胸襟を開くことで、心に秘めた思いを打ち明けるという意味合いが込められているのです。

「歯に衣着せぬ」の対義語は?

次に「歯に衣着せぬ」の対義語を確認しましょう。

「奥歯に衣着せる」

「奥歯に衣着せる」は、どこか思わせぶりに物事を言う様子を表す慣用句です。

ポイントは、ただの「歯」ではなく「奥歯」に衣を着せること。そして「歯に衣着せぬ」とは対照的に、「奥歯に衣着せる」ははっきりとせず曖昧であることを表します。混同しないよう確認しておきましょう。

「奥歯に物が挟まる」

「奥歯に物が挟まる」とは、思いをはっきりと口にせず曖昧に言う様子を表す慣用句です。

みなさんは食後、何かが奥歯に挟まってストレスを感じたことはありませんか。それが原因で実際に物が言えなくなるわけではなくとも、慣用句としての「奥歯に物が挟まる」状態とは、普段と比べてはっきりとした物言いができないことを示しているのです。

そこから意味が転じ、何かを隠しているような、要点をぼかした曖昧な様子を「奥歯に物が挟まる」で表すことができます。「歯に衣着せぬ」の対義語として覚えておきましょう。

「歯に衣着せぬ」の英訳は?

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最後に「歯に衣着せぬ」の英語表現を確認しましょう。

「outspoken」

outspoken は意見や批評をする際に「遠慮なく率直に言う」ことを表す形容詞です。

ちなみに動詞 outspeak には「力強く話す・遠慮なく話す」などの意味があり、「歯に衣着せず話す」の英訳のひとつとして使うことができます。

an outspoken criticism
率直な(歯に衣着せぬ)批評

\次のページで「「frank」」を解説!/

「frank」

frank は「率直な・包み隠さない」という意味をもつ形容詞です。主に人や話に対して使われ、それらが率直で正直な様子や態度であることを表現できますよ。

a frank opinion
率直な(歯に衣着せぬ)意見

My elder sister is frank with me about everything.
姉は私には何事もオープン(正直)である。

「歯に衣着せぬ」を使いこなそう

この記事では「歯に衣着せぬ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

相手の顔色を伺って言葉をオブラートに包んで伝えることも、率直に「歯に衣着せぬ」物言いをすることも、どちらも大切なコミュニケーション能力ではないでしょうか。シンプルだけれどあえて比喩を使って表現している点に、言葉の深みや日本語の面白みが隠れているように思います。日常生活で今後「歯に衣着せぬ」何かに出会ったら、どのようなニュアンスで使われているかを確認してみてくださいね。

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【慣用句】「歯に衣着せぬ」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「歯に衣着せぬ」について解説する。

端的に言えば歯に衣着せぬの意味は「遠慮せずに思ったことを言う」ことですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「歯に衣着せぬ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「歯に衣着せぬ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「歯に衣着せぬ(はにきぬきせぬ)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「歯に衣着せぬ」の意味は?

「歯に衣着せぬ」には、次のような意味があります。

思ったとおりをずけずけと言う。「―◦ぬ批評」
[補説]「衣 (きぬ) 」は衣服のこと。「歯に絹着せぬ」と書くのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「歯に衣着せぬ」

思ったことがあれば、遠慮せずに相手に率直に伝えるさまを「歯に衣着せぬ」といいます。辞書に「ずけずけと」とありますが、これは遠慮や加減をしないではっきりと口に出す様子を表す副詞です。

キーワードは「はっきりする」「遠慮しない」こと。
たとえば上司や先輩が間違ったことをしていて、周囲もおかしいと思っているものの、遠慮して黙っている状況があるとします。そこで「それは違うと思います」とはっきり言う人がいたならば、その発言は「歯に衣着せぬ」物言いであるといえるのです。良い意味・悪い意味どちらに対しても使うことができるので、文脈によって判断しましょう。

注意点としては、「衣(きぬ)」を「ころも」と読まないこと、そして漢字を「絹」としないことです。

「歯に衣着せぬ」は否定形として使われ、「歯に衣着せず」も同義語です。ちなみに肯定形にして「歯に衣着せる」とは言いませんが、「奥歯に衣着せる」(はっきり言わず、思わせぶりに言う)という対義語が存在します。

・否定形「歯に衣着せぬ」「歯に衣着せず」は同義語
・肯定形「奥歯に衣着せる」は対義語

(「歯に衣着せる」とは言わないので注意)

「歯に衣着せぬ」の語源は?

次に「歯に衣着せぬ」の語源を確認しておきましょう。

ここでの「衣」とは衣服・着物を指します。歯が実際に服を着ることはありませんが、衣類を身にまとう歯を一度想像してみてください。とても思い通りに話ができる状態ではないことがわかりますよね。文字通り口ごもって、言いたいことが言えない状態となるはずです。

逆に、「歯に衣着せぬ」とは歯が衣服を着ておらず、言いたいことを口に出すことができる様子を表します。「衣着せぬ」とは比喩表現ですが、一度イメージすれば納得できる語源であるといえるでしょう。

\次のページで「「歯に衣着せぬ」の使い方・例文」を解説!/

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