パスツールはフランス出身の生化学者、細菌学者です。パスツールという実験器具(ピペットの一種)もあるから聞いたことある奴もいるでしょう。パスツールは低温殺菌や、ワクチンによる予防接種を開発した人物で、風味をそのままにおいしい牛乳やワインを飲めるのはパスツールのお陰です。
そんなパスツールについて科学者の伝記を読んで育ったリケジョ、たかはしふみかが解説していきます。
ライター/たかはし ふみか
小学生の頃、科学者の伝記を次から次へと読んでいたリケジョ。パスツールという名前は、ファーブル昆虫記のファーブルの伝記に登場したことで知った。
ルイ・パスツールの経歴
1822年12月27日にフランスで生まれたルイ・パスツール。父親はなめし皮職人をしていました。
1846年に博士号を取得、1849年に発表した酒石酸(ワインにたまる沈殿)の性質の解明の論文をきっかけにストラスブール大学で化学の教授になります。そして1854年に、リールにできた理科大学の学部長に指名され、1857年には、高等師範学校の事務局長兼理学部長と順調に昇進を続けました。この頃、ワインの腐敗の原因を突き止めて欲しいと依頼されます。この研究をきっかけにパスツールは微生物学の道に進むこととなりました。
1861年に「自然発生説の検討」というそれまでの常識を覆す本を書きます。自然発生説については後程説明しますね。翌1862年、ワインの腐敗原因を探る中で味や香りを損なわずに殺菌する低温殺菌法の開発につながる実験をクロード・ベルナールと共に始めました。そして1865年、蚕の大量死の謎について研究し、蚕(カイコ)の卵が原生生物によって感染していることを突き止めました。
また嫌気性菌の発見をしたのもパスツールです。嫌気性菌と酸素が不要が無くても生きていける細菌のことで、菌によっては普通の濃度の酸素によって死んでしまうこともあります。逆に酸素が必要なのは好気性菌です。
様々な功績を残したパスツールは1895年9月28日に亡くなりました。
医学への貢献、そもそもワクチンて何?
パスツールの医学への貢献と言えばワクチンによる予防接種という病気の予防方法を生み出したことです。ところでワクチン、予防接種は冬場によく聞きますがなぜそれでインフルエンザなどの病気を防ぐことができるのかその原理は知っていますか?まずは体に菌が入るのを防ぐ免疫についてから確認していきましょう
免疫ってなに?
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免疫とは体内に入った異物から体を守る仕組みのことです。この異物とは細菌やウイルスのことを指します。どうやって体を守るのかとうと、この侵入した異物(抗原)を免疫細胞が異物と識別しているのです。そして免疫細胞が異物を攻撃して体を守っています。ちなみにこの免疫細胞は骨髄で生まれているのです。
この抗原に対して体の中では抗体が作られ、体を守ってくれています。これを自然免疫というのです。一方、同じ種類の抗原がもう一度体内に侵入した時、以前できた免疫が対応することを獲得免疫と呼びます。抗原や抗体については血液の記事でも説明しているので読んでみてくださいね。
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ワクチンと予防接種
ワクチンとは感染症を予防するための医薬品で、病原体の毒を弱めたり無くした抗原(体内に入る異物)を体内に投与するものです。すると体内で抗体が作られ、その感染症に対する免疫を獲得することができます。予防接種とは免疫を付けるために抗原物質(ワクチン)を打つことです。
イギリスのジェンナーが一度かかった天然痘に再びかからないことから天然痘のワクチンを発見しました。天然痘とは天然痘ウィルスによる感染症で、体中に水ぶくれができます。致死率は20~50%とかなり高い病気です。パスツールはジェンナーのワクチンを弱毒化し、これは(弱毒)生ワクチンと呼ばれています。
狂犬病のワクチンもパスツールが開発しました。このワクチンは予防でけではなく、早期であればすでに感染した患者の発病を防止する効果もあります。
日本とパスツールの関係
日本の細菌学の父として知られている北里柴三郎。北里はペスト菌を発見し、破傷風の治療方法を開発しました。その名前が入った北里大学がありますね。この大学は北里研究所の創立50周年の際に設立されています。北里はドイツに留学し、パスツールと共に「近代細菌学の開祖」と呼ばれているコッホのもとで学びました。そしてその帰国の際にパスツールと出会いサイン入りの写真をもらったそうです。
またパスツールが蚕の大量死について研究した際には、徳川14代の徳川家茂が贈った蚕の卵が使われました。日本が江戸時代の頃にワクチンが開発されたのですね。
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自然発生説とパスツール
先ほど登場した「自然発生説」とは簡単に言うと、「生物は何もないところから勝手に生まれる」ということです。例えば完璧な密室にいきなりネズミが現れるわけありませんね。どこかに隙間があって入り込んだと考えるでしょう。しかし17世紀の初めくらいまではこの親がいなくても無生物から生き物が生まれるというこの説が信じられていました。
あの有名なアリストテレスも「ウナギは泥から発生する」と著書に書いています。ウナギが泥から発生するならウナギが採れなくなる心配はないですね。
自然発生説の真偽
そんな自然発生説はイタリアの生物学者、フランチェスコ・レディによって否定されます。レディはふたをする肉としない肉を用意し、ハエの蛆が発生するかを調べたのです。その結果、ふたをしたものでは蛆が発生せず、ふたをしていないものは卵を産まれて蛆が発生しました。ただしレディはハエが自然発生しないことを証明したものの、体内の寄生虫は自然発生するものとしていました。
その後、顕微鏡が発明されると「微生物は自然発生する」と言う説が唱えられるようになり、その真偽が議論されるようになりました。そして1861年にパスツールは実験によって十分な養分と空気があっても親がいなければ自然に発生しないこと、微生物も自然に発生するわけではないという事がわかったのです。
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