【四字熟語】「百折不撓」の意味や使い方は？例文や類語も含めてセンター国語190点オーバーの古典・歴史マニアがわかりやすく解説！

ライター／タケダ　タケシ

年間200冊を超える本を読み、センター試験国語では190点オーバーの無類の国語好き。同時に歴史・古典のオタクでもある。熱い語り口が特徴。満点に届かなかった理由は漢字の「書き」ができなかった模様。なお、数学の失敗で国立大にも受からなかったらしい。反面教師にしてくださいとは本人の弁。

「百折不撓」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「百折不撓」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。
桜木先生もおっしゃっていましたが、意味をただ覚えることではなく、元になった故事や経緯を把握することが重要です。意味をサラッと流してもらい、語源に注目してみてください。言葉の持つ歴史や、本当の面白さ、豊かさがわかります。

「百折不撓」の意味は？

「百折不撓」を辞書で引くと、次のような意味が出てきます。言葉を学ぶときは辞典・辞書は極めて有用です。
アナログ・デジタル・ネットどんな辞書でも構いません。こまめに辞書を引くクセをつけてください。
意味はさらっと、と言っていたのに辞書？と思われるかもしれませんが、辞書を引いてわかるものは意味だけではないのです。

ちなみに筆者はネットで調べる場合「コトバンク」と「goo辞典」を使用してます。

ひゃくせつふとう
何度失敗して挫折ざせつ感を味わっても、くじけずに立ち上がること。どんな困難にも臆おくせず、初めの意志を貫くこと。

出典：学研四字熟語辞典

辞書を引くと意味のほかに出典や用例を見ることができます。

先ほどからお話させていただいているように、大事なのはドラマ！であり文化！なので「意味」だけではなく「出典」とか書かれている箇所が非常に重要です。上記の辞書を確認すると出典：蔡邕（さいよう）「橋大尉碑（きょうたいいのひ）」との記載があります。

蔡邕という中国の文化人が、尊敬し使えた橋玄（きょうげん）という人物の功績をたたえる碑文に残した言葉に由来することがわかるのです。

それでは今から1800年前。三国志前夜に活躍した人物のお話です。

「百折不撓」の語源は？

橋玄は碑文が残されるくらいですから当時は相当の有名人。若くして功曹（こうそう、今でいうと地方自治体の人事を取り仕切る人事部長のような役職）につくと、自分より上位の人間の不正を告発。上層部からの圧力がかかっても全く負けずに不正を働いていた役人を有罪にします。このことで有名になり、様々な役職につき功績をあげていきました。兵を率いて戦争でも勝っていますので文武両道の人物です。反面、厳格すぎる性格から嫌われることも多く、牢に入れられたり、左遷されたり。それでも優秀だったので何度も呼び戻され地位を上げていくという、まだ漢が力を維持できていた比較的平和な時代においては類を見ないドラマチックな人生でした。

そんな彼の功績を称えた碑文に記されたのがこの言葉。
『有百折不撓、臨大節而不可奪之風』
百回折れても志をまげず、大任を任されても全く動じない。この言葉の前半部分をとり「百折不撓」として使われています。

「百折不撓」の使い方・例文

「百折不撓」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

元来轟君は金持に似合わない精悍（せいかん）な、腕力と自信の持主で、株式界にいた頃でも百折不撓の評判男だったそうです。〈夢野久作・二重心臓〉

どんなことがあっても挫けずバリバリ仕事をこなす。株式市場で活躍するスーパービジネスマンから漂う自信まで感じられるような文例になっています。

「百折不撓」の類義語は？違いは？

では類義語を見てみましょう。こちらもかっこいい言葉になっています。

「不撓不屈」

強い意志をもって、どんな苦労や困難にもくじけないさま。▽「撓」はたわむ意。転じて、屈すること。「不屈不撓（ふくつふとう）」ともいう

百折不撓と同じ字が使われていますね。倒れるという意味で「倒」をつかったり、不当な扱いにも負けないという意味で「当」を使ったりしてしまうと誤記になりますのでご注意ください。

「不撓不屈」の英訳は？

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では、英訳を見てみましょう。といってもすでに画像に出てますし、こちらの言葉のほうがずっとよく耳にします。

「never give up」

もはや、「ネバーギブアップ」とカタカナで書いても何の違和感もない。日本語としても定着している言葉ですね。知らない人はいないでしょう。不撓不屈はネバーギブアップのこと、といった方がわかりやすいかもしれません。

Never give up.

と単体で使う場合は命令形になりますので、「絶対にあきらめるな！」という表現になり、自分は絶対あきらめない！といいたい場合は

I will never give up.

などの表現になるでしょう。ここでのwillはshallであっても構いません。

橋玄は本人の実績よりも三国志最大級の英雄、曹操を無名時代に見出したエピソードが有名です。橋玄が「いままで天下の素晴らしい人物を見てきたが、君ほどの男はいなかった。私はもう老人だ。君に妻子を託したいくらいだ」と若き曹操に語るところから三国志の物語は始まります。ちなみに橋大尉の大尉とは彼の務めた最高位。日本軍もしくは自衛隊では尉官はそこまで高いポジションではありませんが、この時代においての大尉は軍のトップのこと。つまりは地方の小役人から一国の国防大臣まで登りつめた人物であるのです。平和な時代の大出世はある意味戦乱の時代の出世よりも難しいこと。生まれる年代が50年ズレていたのなら、彼もまた、三国志の有名武将の一人だったのかもしれません。

後年曹操の軍が橋玄の墓の近くを通った際、曹操は丁寧にお参りをしたといいます。自身が有名になるきっかけを作ってくれたことを感謝していたのでしょうか、あるいは自信満々であってもどこかに不安があったところを自身も認めるような大人物に元気づけてもらったことで覇王への道を踏み出せたのでしょうか。心情を想像するだけでも楽しいですね。

「百折不撓」を使いこなそう

百折不撓,、いかがだったでしょうか。非常にかっこいい言葉であり、格調も高く、それでいてメジャーになりすぎていない言葉なのでハッタリを効かすのにピッタリです。あなたの座右の銘は？と聞かれた際に「七転び八起き」や「ネバーギブアップ」と答えてしまうと若干安っぽくなってしまいますが、「百折不撓」と言えばあら不思議。同じ意味なのにちょっと知的かつ強い印象を相手に抱かせるのではないでしょうか。
半分は冗談ですが、本当に「百折不撓」でありたいものだと思います。負けることも折れることもしてもいいのです。強い意志さえ失わなければ。どんなことがあっても曲げない志、持っていたいですね。