
栄枯盛衰は世の常とはよく聞くが、東証一部上場企業だったものがこうもあっさりと廃業に追い込まれるとは驚きだよ。
世界史を学ぶと、これまで実に多くの国々が栄枯盛衰を繰り返しながら現代社会にいたっていることがよく理解できる。
戦後、日本国内でさまざまな産業が繁栄と衰退を繰り返してきた様子は、まさに栄枯盛衰であるとはいえないだろうか。
「栄枯盛衰」という四字熟語を使う際のポイントは、やはり栄えている状態にあるものが衰えていく様子が相手に上手く伝わるかどうかです。たとえば、いちばん最初の例文を見てみましょう。
「栄枯」の「栄」や「盛衰」の「盛」は、当然ながら東証一部に上場されるまでの企業になったことです。一方、「枯」や「衰」は、廃業に追い込まれてしまったことで間違いありません。
最良の状態から最悪の状態へと落ちていく様子は、まさに「栄枯盛衰」だといえるものです。
「諸行無常」
「諸行無常(しょぎょうむじょう)」は、この世に変化しないものや無くならないものはないという意味の四字熟語です。この言葉は平家物語の冒頭に登場するので、覚えている方も多いのではないかと思われます。
「諸行」は、この世のすべてのものという意味の仏教用語です。もう一方の「無常」は、変化しないものは存在しないという意味を表しています。
「盛者必衰」
「盛者必衰(じょうしゃひっすい)」もまた、「栄枯盛衰」の類義語といって差し支えのないものです。こちらも、栄えているものもかならずいつかは滅びるという意味合いを持っています。
先ほどの「諸行無常」と合わせて平家物語に登場するので、知名度は抜群です。この場合の「盛者」が平氏を表しているのは、いうまでもありませんね。
では、これらを用いた例文をチェックしておきましょう。
大手小売店がついに身売りなんてニュースを聞くと、徒然草の一節にもあった諸行無常という言葉がつくづく心にしみてくるね。
何といっても盛者必衰というのは世の習いだから、大手の商社に就職できたからといって一生安泰だとは思わない方がいいぜ。
「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の音、諸行無常の響きあり。」この一節を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。それもそのはず。
これは、多くの国語の教科書にも採用されている「徒然草(つれづれぐさ)」の前文だからです。「徒然草」は、無常観をベースにさまざまな事象について筆者の兼好法師が自らの考えを述べています。
この世の中に「永遠」などというものは存在しない、人生は移ろいやすく儚(はかな)いものだ。そんな人生訓を「徒然草」からは読み取ることができます。
#3 「栄枯盛衰」の対義語は?

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さて、「栄枯盛衰」の対義語にはどのようなものがあるのでしょうか。「栄枯盛衰」がこの世は「無常」であることを表した四字熟語ならば、その対義語は「永遠」を表したものになるはずです。
ここでは、そのような意味合いを持った四字熟語を二つご紹介します。
「百世不磨」
「百世不磨(ひゃくせいふま)」は、永遠に消えることなく存在し続けることという意味です。これは、先ほどまでに登場した「無常観」を表す四字熟語とは正反対の意味合いを持っています。
「百世」は、世代が百代も続くほど長い年月という意味の熟語です。もう一方の「不磨」は、磨かないという意味ではなく、磨耗しないという意味を表しています。
つまり、擦り減らないというわけですね。そして、この二つの熟語を合わせてできた「百世不磨」の意味は冒頭で紹介したとおりです。
「千古不易」
「千古不易(せんこふえき)」もまた、「栄枯盛衰」の対義語だといえるものです。こちらも、永遠に変わらないことを意味しています。
この四字熟語を構成する要素のうち「千古」は、はるか昔から現在にいたるまでという意味合いです。もう一方の「不易」は変わらないことを意味しています。
これら二つを組み合わせた「千古不易」の意味は、もうお分かりでしょう。ちなみに「千」を「万」に変えた「万古不易(ばんこふえき)」という四字熟語もあるので、合わせて覚えておくとよいでしょう。
では、こちらも例文で用法を確認しておきます。
我ら親衛隊は百世不磨、この世から「押し」のアイドルが消え去ってしまうその日まで。
水は高き所から低き所へと流れゆく、これが千古不易の真理だというものじゃないかね。
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