
「一網打尽」はずばり、「関係者を一度にすべて捕えること」という意味ですが、ちょっと使い方には注意が必要なんです。
今回はその「一網打尽」の意味や使い方、関連語などを、大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき
ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。
「一網打尽」の意味と語源は?

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「一網打尽(いちもうだじん)」という言葉は、ドラマや小説などで誰もが一度は見聞きしたことがある言葉でしょう。ただ、実際に使用する場合には、注意しなければならない点もあります。まずは、辞書の記述を参考に、「一網打尽」の意味と語源について確認していきましょう。
「一網打尽」の意味は「関係者を一度にすべて捕えること」
「一網打尽」は、次のような意味が国語辞典に掲載されています。
❶ひと網で魚類をごっそりととること。
❷悪人の仲間などを一度にすべて捕らえること
「集団すりを―にする」
明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「いちもう-だじん【一網打尽】イチマウ―」
国語辞典には、上記のように2つの意味が掲載されている場合と、2番目の意味のみ掲載されている場合があります。1番目に掲載されている意味は、文字通りの大元の意味で、現在では漁業でしか使用されません。よってこの記事では、2番目の「悪人の仲間などを一度に全て捕えること」という意味について、解説していきます。
「一網打尽」の語源は中国から?
この「一網打尽」が「悪人の仲間などを一度に全て捕えること」という意味で初めて使われたとされるのは、中国の宋の時代(960-1279)の歴史を記した『宋史』(1345年成立)の「范純仁伝」の一節です。「范純仁伝」に「謗りを造す者をば、公相慶びて曰く、一網打尽にせり、と」(書き下し文)という一節があります。
この一節は、「御史台(現代の検察官)についていた王拱辰という役人が、宰相(現代の首相のような役職)の杜衍とその一族の不正を暴き、全員を牢屋に入れることに成功した時に、喜んで「一網打尽にしてやったぜ!」と言った。」という場面を描いたものです。ここで初めて「一網打尽」が「悪人の仲間などを一度に全て捕えること」と考えられています。
この中国での話が日本に流入し、定着したのでしょう。
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