この記事では「戦戦恐恐」について解説する。

端的に言えば戦戦恐恐の意味は「恐れ慎む様子」と「恐れてびくびくしている様子」の2つですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「戦戦恐恐」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「戦戦恐恐」の意味や語源・使い方まとめ

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「戦戦恐恐」は「せんせんきょうきょう」と読みます。それでは早速、戦戦恐恐の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「戦戦恐恐」の意味は?

戦戦恐恐には、次のような意味があります。

恐れつつしむさま。恐れてびくびくしているさま。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「戦戦恐恐」

使われている漢字からして、何かに恐怖を感じていることが分かりやすい熟語ですが、「恐れつつしむ様子」と「恐れてびくびくしている様子」の2つの意味をもつ熟語でした。似ているように思えますが、1つ目の「恐れつつしむ」には、相手に対して謙虚な姿勢で臨む意味があり、びくびくしているのとは異なります。現在では、2つ目の「恐れてびくびくしている様子」を指す言葉として使われることが多くなりました。

「戦戦恐恐」の由来は?

「戦戦恐恐」という言葉は、「」と「」の2つの漢字から成っている四字熟語です。一般的に「戦」は「いくさ」や「たたかう」と読みますが、実は「戦(おのの)く」という読み方もあります。「恐れおののく」の「おののく」です。「戦戦恐恐」の「戦」は「おののく」という意味だとされており、「恐」という漢字とあわせて「恐れてびくびくしている」という意味になります。

この熟語の由来は、中国の詩「詩経」にある「戦戦兢兢 如臨深淵 如履薄氷」という一節です。簡単に意訳すると、「薄氷を踏むかのように、あるいは深い淵をのぞくように、慎重かつ謙虚に行動する」といった意味になります。この時点では、「恐れおののく」と「恐れつつしむ」という、2つの意味が混同されていることが伺えますね。その後、長い年月を経て日本語の四字熟語として完成されたのが「戦戦恐恐」です。

「戦戦恐恐」の使い方・例文

「戦戦恐恐」は、人の様子を形容する言葉です。それでは、「戦戦恐恐」の例文を見てみましょう。

いつか母にゲームのやりすぎでしかられるのではないかと、私は戦戦恐恐としていた。

子どもたちは戦戦恐恐としつつ、その家の前を通り過ぎた。

この例では、現在一般的に使われる「恐れてびくびくしている様子」を示す言葉として使っています。

\次のページで「「戦戦恐恐」の類義語は?違いは?」を解説!/

戦戦恐恐と面接会場に向かう。

隊員たちは戦戦恐恐としながら、行方不明者の捜索にあたった。

この例では、結果がわからない、先行きの見えない不安感を示す言葉として「戦戦恐恐」が使われており、「恐れつつしむ様子」に近いものがあります。

あまりこの使い方はしませんが、「戦戦恐恐」の使い方の1つです。

「戦戦恐恐」の類義語は?違いは?

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恐れてびくびくする様子」という意味での「戦戦恐恐」には、いくつかの類義語があります。

「戦々慄々」

「戦々慄々」は「せんせんりつりつ」と読みます。こちらは「戦戦恐恐」とほとんど同じ意味ですが、どちらかといえば人物の様子よりもその場の様子を示す言葉です。

部下に厳しい上司のせいで、職場はいつも戦々慄々としていた。

戦々慄々とした雰囲気の中、彼は勇気を持って手を挙げた。

「小心翼翼」

「小心翼翼」は「しょうしんよくよく」と読みます。こちらも意味は「戦戦恐恐」と変わりませんが、より人間の様子を表すことに特化した熟語です。

環境が前職と大きく変わったため、彼女は小心翼翼としていた。

サッカー未経験者の自分にパスが回ってきたらどうしようかと、私は試合のたびに小心翼翼としていた。

ほとんど同じ意味でも、これらの言葉は使うべき場面が違いますので、文脈や意味に注意することが重要です。

\次のページで「「戦戦恐恐」の対義語は?」を解説!/

「戦戦恐恐」の対義語は?

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それでは、「戦戦恐恐」の対義語となる言葉を見ていきましょう。対義語を知ることで、「戦戦恐恐」の意味がより理解しやすくなります。

「大胆不敵」

「大胆不敵」は「だいたんふてき」と読み、度胸があって何も恐れない様子を表す熟語です。

大胆不敵にも、その兵士は敵陣を突破して味方の元へたどり着いた。

周囲の視線を気にも留めず、大胆不敵に言い放った。

「泰然自若」

「泰然自若」は「たいぜんじじゃく」と読みます。「泰然」も「自若」も落ち着いていて物ごとに驚かない様子を示す熟語で、この2つが組み合わさった四字熟語が「泰然自若」です。

ここでの「」は「わかい」ではなく、「〇〇な様子」を表す文字で、「自分らしい、自然らしい様子」と言う意味での「自若」となります。

どんなときも、父は泰然自若としていた。

泰然自若とした姿は、周囲の人間を安心させた。

強調表現が使われる熟語

「戦戦恐恐」は、「戦」と「恐」をそれぞれ2つずつ重ねた四字熟語です。同じ漢字を2つ重ねることで、その意味を強めたり表現している状況をより明確にしています。二字熟語の場合、「人々」や「山々」、「口々」などが当てはまり、一般的に使用する機会も多い熟語です。このような熟語を「畳語(じょうご)」といいます。この畳語の組合せでできた四字熟語も数多く存在していて、「戦戦恐恐」もその1つなのです。畳語で構成されたほかの四字熟語も見てみましょう。

「喧々囂々」

「喧々諤々」は「けんけんごうごう」と読みます。前半の「喧々」と後半の「囂々」がそれぞれ畳語になっている熟語です。

「喧々囂々」には次のような意味があります。

多くの人が銘々勝手に発言してやかましいさま。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「喧々囂々」

\次のページで「「意気揚々」」を解説!/

彼の一言が、喧々囂々たる議論の引き金となった。

我が家の食卓はいつも喧々囂々としている。

なお、「喧々諤々(けんけんがくがく)」はよく聞く表現ですが、「喧々囂々」と「侃々諤々(かんかんがくがく)」が混ざった誤った表現です。

「意気揚々」

「意気揚々」は「いきようよう」と読みます。後半の「揚々」の部分が畳語となっている熟語です。意気揚々も幅広い場面で使われる熟語ですが、次のような意味があります。

得意で元気のあふれているさま。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「意気揚々」

試合の勝利を確信した私は、意気揚々と家を後にした。

大物を釣り上げ、意気揚々とキャンプ場に戻ってきた。

ポジティブな表現からネガティブな表現まで、様々な場面で人が得意そうにしている様子を表す言葉として、使われる機会の多い熟語です。

「戦戦恐恐」を使いこなそう

今回の記事では、「戦戦恐恐」の意味や使い方、例文について説明しました。小説や小論文で自分が使用する場面も、読解問題や読書で自分が目にする機会も多い熟語です。この機会にしっかりと意味をおさえておきましょう。あわせて、類義語や対義語についても、知っておくことで文章の表現が広がります。特に類義語は、ほとんど意味が同じでも使う文脈が違いますので、微妙なニュアンスの違いを知っておくことが大切です。

さらに、「戦戦恐恐」を含めた「畳語」という熟語の仕組みについても触れました。「畳語に該当する熟語を答えなさい」といった試験対策になるのはもちろんですが、これをきっかけに熟語の構造に興味を持っていただければ幸いです。そうすることで、もし自分が読んでいる文章に知らない熟語が登場しても、使われている漢字と文脈、そして構造から、意味を推測することができます。単語を暗記するように熟語と意味を対応させて覚えるだけでなく、その背景も知っていくことで、理解を深め、応用の幅を広げることができるので、ぜひ挑戦してみてくださいね。

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【四字熟語】「戦戦恐恐」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「戦戦恐恐」について解説する。

端的に言えば戦戦恐恐の意味は「恐れ慎む様子」と「恐れてびくびくしている様子」の2つですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「戦戦恐恐」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「戦戦恐恐」の意味や語源・使い方まとめ

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「戦戦恐恐」は「せんせんきょうきょう」と読みます。それでは早速、戦戦恐恐の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「戦戦恐恐」の意味は?

戦戦恐恐には、次のような意味があります。

恐れつつしむさま。恐れてびくびくしているさま。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「戦戦恐恐」

使われている漢字からして、何かに恐怖を感じていることが分かりやすい熟語ですが、「恐れつつしむ様子」と「恐れてびくびくしている様子」の2つの意味をもつ熟語でした。似ているように思えますが、1つ目の「恐れつつしむ」には、相手に対して謙虚な姿勢で臨む意味があり、びくびくしているのとは異なります。現在では、2つ目の「恐れてびくびくしている様子」を指す言葉として使われることが多くなりました。

「戦戦恐恐」の由来は?

「戦戦恐恐」という言葉は、「」と「」の2つの漢字から成っている四字熟語です。一般的に「戦」は「いくさ」や「たたかう」と読みますが、実は「戦(おのの)く」という読み方もあります。「恐れおののく」の「おののく」です。「戦戦恐恐」の「戦」は「おののく」という意味だとされており、「恐」という漢字とあわせて「恐れてびくびくしている」という意味になります。

この熟語の由来は、中国の詩「詩経」にある「戦戦兢兢 如臨深淵 如履薄氷」という一節です。簡単に意訳すると、「薄氷を踏むかのように、あるいは深い淵をのぞくように、慎重かつ謙虚に行動する」といった意味になります。この時点では、「恐れおののく」と「恐れつつしむ」という、2つの意味が混同されていることが伺えますね。その後、長い年月を経て日本語の四字熟語として完成されたのが「戦戦恐恐」です。

「戦戦恐恐」の使い方・例文

「戦戦恐恐」は、人の様子を形容する言葉です。それでは、「戦戦恐恐」の例文を見てみましょう。

いつか母にゲームのやりすぎでしかられるのではないかと、私は戦戦恐恐としていた。

子どもたちは戦戦恐恐としつつ、その家の前を通り過ぎた。

この例では、現在一般的に使われる「恐れてびくびくしている様子」を示す言葉として使っています。

\次のページで「「戦戦恐恐」の類義語は?違いは?」を解説!/

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