この記事では「一触即発」について解説する。

端的に言えば、一触即発は「ちょっとしたきっかけで大事件に発展しそうな状態」を指す言葉ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「一触即発」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「一触即発」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは、早速「一触即発」の意味や使い方についてみていきましょう。

「一触即発」の意味は?

一触即発は「いっしょくそくはつ」と読み、次のような意味があります。

ちょっとしたきっかけで大事件に発展しそうな危険なさま。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「一触即発」

「一触即発」は、直訳すれば「ちょっと触っただけですぐに爆発しそうな状態」という意味になります。ぴりぴりとした緊張状態を表すのに良く使われる言葉です。

「一触即発」の由来は?

一触即発は、それぞれの漢字が持つ意味を並べて文章化することで意味がわかる熟語です。

」は、数字の1を示すわけではなく、「ちょっと」とか「少し」という意味になります。

」は、「いじる」とか「手を加える」といった意味です。

」は、「即座」とか「即刻」という熟語にも使われるように、「ただちに」「すぐに」という意味になります。「即ち(すなわち)」とも読みますね。

」は、「勃発」や「発生」といった熟語に使われるように、「(事件などが)おこる」という意味を持っています。

つまり、「一」「触」「即」「発」と並べることで、「ちょっと」「手を加えただけで」「すぐに」「(何かが)おこる」という意味になるのです。

「一触即発」の使い方・例文

一触即発は、危険なことやよくないことが起こりそうなときに使う表現です。それでは、一触即発の例文を見てみましょう。

\次のページで「「一触即発」の類義語は?違いは?」を解説!/

父と母は互いへの不満から関係が悪化し、今では一触即発の状態になっている。

キューバでのミサイル基地建設と海上封鎖により、アメリカとソ連はまさに一触即発となった。

このように、日常的な状況から社会・国際的な内容まで、幅広い場面で使える熟語です。

一方、いいことや喜ばしいことが起こりそうなときに一触即発は使いません。

誕生日を明日に控え、彼は一触即発の状態になっている。

被災地には多くのボランティアが駆けつけ、一触即発の状態となった。

この例文では、誕生日が近くて嬉しさがあふれ出しそうな様子や、多くの人が被災地を支援しようと待ち構えている様子を表そうとしています。こうした場面では、一触即発は使いません。

「一触即発」の類義語は?違いは?

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一触即発には多くの類義語があります。代表的なものをいくつか見ていきましょう。

「危機一髪」

危機一髪は「ききいっぱつ」と読み、以下のような意味になります。

\次のページで「「瀬戸際」」を解説!/

髪の毛1本ほどの差で危険が迫っている状態。きわめてきわどい場合。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「危機一髪」

危機」は「危険」と同じような意味で、危ない状態を示しています。「一髪」は文字通り、髪の毛1本という意味です。つまり、ある危険な物事が、起こるか起こらないか髪の毛1本ほどの差、と言う状態を指しています。

一触即発と似ていますが、危機一髪は危険な物事が起こりそうな状態を指す言葉です。多くの場合、危険な物事が回避された状態で使われます。

危機一髪、両軍の戦闘は回避された。

危機一髪だったが、彼は救助された。

1つ目の例文では、けっきょく戦闘は起きませんでしたし、2つ目の例文でも救助されています。一触即発は、あくまでもこれから危険な状況が起きそうなときに使う言葉です。

有名なおもちゃに「黒ヒゲ危機一髪」がありますが、もし「黒ヒゲ一触即発」だったら意味が少し変わってしまいますね。

さらに、一触即発と危機一髪の大きな違いとして、一触即発はAとBの関係性を示す言葉として使われるのに対して、危機一髪はAの状況説明だけでも使われる点が挙げられます。

「私と彼は一触即発の状態だった」とは使いますが、「私は一触即発だった」とは使いません。これに対し、「私は危機一髪だった」ならば文章が成立するのです。

同じような言葉に「間一髪」がありますが、こちらは「間に合うかどうかわからない」といった状況で使う言葉で、危機一髪よりも幅広い意味を持ちます。

「瀬戸際」

瀬戸際は「せとぎわ」と読みます。「瀬戸」とは小さな海峡を意味していて、瀬戸際は本来、海と瀬戸の境界線のことです。このことから、物事の成功・失敗などの分かれ目のことをいいます。

勝つか負けるかの瀬戸際だ。

人生の瀬戸際に立つ。

瀬戸際は、何らかの選択肢がある状態を示しています。よくない状態・危険な状態になりかねないという意味では一触即発と同じですが、一触即発は「危険な状態になりかけている」のに対し、瀬戸際は「これからの選択や行動によって決まる」という不確定な要素を含んだ表現です。

\次のページで「「一縷千鈞」」を解説!/

「一縷千鈞」

一縷千鈞は「いちるせんきん」と読み、「一縷」は1本の糸、「千鈞」は非常に重い重さを示しています。1本の糸で千鈞もの重さを吊るす様子から、非常に危ない状態を示す言葉で、一触即発にとても近い意味の言葉です。似たような表現で「一髪千鈞」ともいい、こちらは糸が髪に変わっています。

「累卵之危」

累卵之危は「るいらんのき」と読みます。「累卵」は卵を積み重ねた状態を指していて、「」は文字通り危うい(あやうい)状態を指す文字です。累卵之危で「卵を積み重ねたように危うい状態」という意味になります。こちらも、一触即発や一縷千鈞と同じような意味です。

「一触即発」に学ぶ漢字の意味

先に説明したとおり、一触即発の「一」は少し、「触」は手を加える、「即」はすぐに、「発」は何かが起こることを意味しています。このように、漢字はその文字自体が意味を持つ表意文字です。日本語のひらがなや英語のアルファベットのように、その文字自体は意味を成さない文字を表音文字といいます。

四字熟語のユニークな点は、表意文字の組合せで構成されているので、その熟語自体は知らなくても意味を類推できるところでしょう。

類義語で紹介した一縷千鈞は一触即発に比べるとあまり一般的な熟語ではありませんが、「一縷」は「一縷の望み」などの慣用句でも使われる表現ですし、「鈞」は重さを示す古い単位です。この知識があれば、一縷千鈞という熟語そのものは知らなくても、意味を想像することができます。逆に、使われている漢字の意味を熟語と一緒に覚えておけば、あまり見覚えのない漢字であっても熟語の意味から思い出せるかもしれません。

「累卵之危」という熟語を漢字の意味と一緒に知っていれば、「累代」など違う使われ方をしている漢字であっても意味を想像することができます。

四字熟語そのものの知識を問われるような機会はテストくらいですが、文学や論文など、漢字は文系理系を問わずあらゆる場面で触れる表意文字です。四字熟語とそこに使われている漢字の意味をセットで知れば、生活のあらゆる場面で役立つ教養となります。

「一触即発」を使いこなそう

今回の記事では、一触即発について、意味や使い方を説明しました。国語分野だけでなく、日常的にもよく目にする言葉ですが、正確な意味を問われると案外わからないものです。特に、一触即発には類義語が多く、それぞれのニュアンスが微妙に違っていたり、ほとんど変わらなかったりします。場面に合わせて正しく使えるようになりましょう。

さらに、表意文字としての漢字の特徴に注目し、四字熟語と漢字の意味をセットで覚えることについても触れました。この考え方は一触即発だけでなく他の熟語にも応用できますので、ぜひ積極的に活用してくださいね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「一触即発」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「一縷千鈞」

一縷千鈞は「いちるせんきん」と読み、「一縷」は1本の糸、「千鈞」は非常に重い重さを示しています。1本の糸で千鈞もの重さを吊るす様子から、非常に危ない状態を示す言葉で、一触即発にとても近い意味の言葉です。似たような表現で「一髪千鈞」ともいい、こちらは糸が髪に変わっています。

「累卵之危」

累卵之危は「るいらんのき」と読みます。「累卵」は卵を積み重ねた状態を指していて、「」は文字通り危うい(あやうい)状態を指す文字です。累卵之危で「卵を積み重ねたように危うい状態」という意味になります。こちらも、一触即発や一縷千鈞と同じような意味です。

「一触即発」に学ぶ漢字の意味

先に説明したとおり、一触即発の「一」は少し、「触」は手を加える、「即」はすぐに、「発」は何かが起こることを意味しています。このように、漢字はその文字自体が意味を持つ表意文字です。日本語のひらがなや英語のアルファベットのように、その文字自体は意味を成さない文字を表音文字といいます。

四字熟語のユニークな点は、表意文字の組合せで構成されているので、その熟語自体は知らなくても意味を類推できるところでしょう。

類義語で紹介した一縷千鈞は一触即発に比べるとあまり一般的な熟語ではありませんが、「一縷」は「一縷の望み」などの慣用句でも使われる表現ですし、「鈞」は重さを示す古い単位です。この知識があれば、一縷千鈞という熟語そのものは知らなくても、意味を想像することができます。逆に、使われている漢字の意味を熟語と一緒に覚えておけば、あまり見覚えのない漢字であっても熟語の意味から思い出せるかもしれません。

「累卵之危」という熟語を漢字の意味と一緒に知っていれば、「累代」など違う使われ方をしている漢字であっても意味を想像することができます。

四字熟語そのものの知識を問われるような機会はテストくらいですが、文学や論文など、漢字は文系理系を問わずあらゆる場面で触れる表意文字です。四字熟語とそこに使われている漢字の意味をセットで知れば、生活のあらゆる場面で役立つ教養となります。

「一触即発」を使いこなそう

今回の記事では、一触即発について、意味や使い方を説明しました。国語分野だけでなく、日常的にもよく目にする言葉ですが、正確な意味を問われると案外わからないものです。特に、一触即発には類義語が多く、それぞれのニュアンスが微妙に違っていたり、ほとんど変わらなかったりします。場面に合わせて正しく使えるようになりましょう。

さらに、表意文字としての漢字の特徴に注目し、四字熟語と漢字の意味をセットで覚えることについても触れました。この考え方は一触即発だけでなく他の熟語にも応用できますので、ぜひ積極的に活用してくださいね。

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