真面目な受験生というのは、この世で一番ストレスを抱えてしまう存在かもしれませんね。ストレスを抱えてしまったがため、本来するべき方向に努力が行かず、「あさっての方向」に努力してしまう生徒もいるのでしょう。

ん?「あさっての方向」の意味、もちろん分かっていますよね?「見当違いの方向」という意味です。うーん。ここはやはり解説が必要なようです。

院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で働いている日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「あさっての方向」の意味や語源は?

image by iStockphoto

「あさっての方向」という言葉、耳慣れない人もいるかもしれません。「いや、あさってってどこだよ…」と思う人もいるかもしれませんね。まずは「あさっての方向」の意味と語源をチェックしていきましょう。

「あさっての方向」の意味は「見当違いの方向」

まずは「あさっての方向」の辞書での意味を確認していきましょう。「あさっての方向」では辞書に載っていない場合があるので、今回は「あさって」で調べてみました。国語系の辞典の「あさって」の記述は次の通りです。

1.明日の次の日。みょうごにち。「―会いたい」「紺屋(こうや)の―」
2.(「―の方」「―の方向」などの形で)見当はずれ。「―の方を向く」

出典:広辞苑 第7版(岩波書店)「あさって【明後日】」

広辞苑には「あさって」は2つの意味が掲載されていました。1番目は私たちが日常生活で多用する一般的な意味ですね。一方「あさっての方向」における「あさって」の意味は2番目です。「見当はずれ」という意味ですね。

「あさって(見当はずれ)」と「方向」を組み合わせた「あさっての方向」は、「見当違いの方向」という意味になります。

「あさっての方向」の語源は「明日に目を向けていないこと」?

では、この「あさっての方向」の語源や由来は何なのでしょうか。正確なことは分かっていませんが、「明日に目を向けるべきなのに、明後日(あさって)という見当違いの方を向いているという意」から生まれた言葉だとする説があります。明日に大事な用事がある場合に、明後日のことを考えていたら良くないですし、まさに見当違いですよね。

\次のページで「「あさっての方向」の使い方を例文とともに確認!」を解説!/

「あさっての方向」の使い方を例文とともに確認!

image by iStockphoto

続いて、「あさっての方向」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「あさっての方向」は「右を向くべきなのに左を向いている」といった具体的な方向を表す場合はもちろん、議論や方針の”方向”といった、「方向性」というニュアンスでも使用できます

1.おい!何であさっての方向を見ているんだ!しっかり前を見て運転しなさい!
2.私はサッカーが苦手だ。ボールを蹴るといつもあさっての方向に飛んでいく。
3.A国とB国の停戦交渉は難航し、議論があさっての方向に行ってしまった。

例文1では「見当違いの方向を見て運転するな。しっかり前を見て運転しろ」という文脈で「あさっての方向」が使用されています。車を運転するときは、明後日の方向を見るのは厳禁です。しっかりと前を見て運転しないと、交通事故の原因になります。気をつけてください。

例文2では、「ボールを蹴るといつも狙いとは違う方向に飛んでいく」という文脈で「あさっての方向」が使用されています。正面にいる味方にパスを出そうとしても、右や左に大きくそれた場所にボールが飛んで行ってしまう…ような場合について言及していますね。

例文3では、「停戦交渉が難航し、議論が全く関係のない話題に切り替わってしまった」という文脈で「あさっての方向」が使用されています。戦争はお互いの国が対立して起きるものです。よって交渉の場では、停戦の議論とは関係のない対立による議論の紛糾が起きてしまうこともあるでしょう。

「あさっての方向」の類義語は?

続いて「あさっての方向」の類義語を確認していきましょう。「あさっての方向」の類義語は「あさってを向く」「頓珍漢な方向」「ホームラン」です。意味を確認し、「あさっての方向」と比較してみてください。

\次のページで「「あさってを向く」:全く見当違いの方を向く」を解説!/

「あさってを向く」:全く見当違いの方を向く

「あさってを向く」は「全く見当違いの方を向く」という意味のことわざです。向くべき方向を向かず、全く見当違いの方向を見ている場合に使用されます。「あさっての方向」と同じ語源の言葉です。

「頓珍漢な方向」:的外れな方向

「頓珍漢(とんちんかん)な方向」は「的外れな方向」という意味の表現です。「頓珍漢」は「つじつまが合わない」「的外れな」という意味を持つ表現ですね。「あさっての方向」と意味やニュアンスの違いはありません。

「ホームラン」:(主にスポーツの場面で)見当違いの方向

「ホームラン」も実は、「あさっての方向」と似たような意味で使用されることがある表現です。例えばサッカーの試合で、シュートがゴールの上に大きく外れることがあります。この場合、「ボールがあさっての方向に飛んで行った」と言うことはもちろん可能ですが、「ホームランした」と冗談めかしく言うことも可能です。

「ホームラン」は野球でスタンドにボールが直接飛び込むことを指しますが、他のスポーツで、見当違いの方向にボールが高く飛んで行った場合も、「ホームラン」と比喩的に表現することがあります

「あさっての方向」の英語表現は?

image by iStockphoto

続いて、「あさっての方向」の英語表現を見ていきましょう。「あさっての方向」に近い意味を表す英語表現は「misguided」です。意味や例文をチェックしていきましょう。

「misguided」:見当違いな

「misguided」は「見当違いな」という意味の英単語です。「あさっての方向」は「見当違いの方向」という意味ですので、「misguided」と使われる場面が被る部分があります。例文を確認していきましょう。

1.The discussion between Company A and Company B became contentious, and the topic gradually took a misguided turn.
A社とB社の議論は紛糾し、話は徐々にあさっての方向に進んでいった。

2.It is dangerous to drive looking in the misguided direction.
あさっての方向を見て運転するのは危険です。

\次のページで「「あさっての方向」ばかり見ていると、危ないですよ!」を解説!/

「あさっての方向」ばかり見ていると、危ないですよ!

今回は「あさっての方向」について解説しました。「あさっての方向」は「見当違いの方向」という意味の表現です。「あさって」のもう一つの意味、とても意外でしたね。

車や自転車を運転している時はもちろん、道を歩いている時でも、「あさっての方向」を見ながら歩くのは危険です。見るべき方向でいつ何が起こるか分かりませんから。しっかりと見るべき方向を見ましょう。

" /> “あさって”ってどっち?「あさっての方向」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

“あさって”ってどっち?「あさっての方向」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

真面目な受験生というのは、この世で一番ストレスを抱えてしまう存在かもしれませんね。ストレスを抱えてしまったがため、本来するべき方向に努力が行かず、「あさっての方向」に努力してしまう生徒もいるのでしょう。

ん?「あさっての方向」の意味、もちろん分かっていますよね?「見当違いの方向」という意味です。うーん。ここはやはり解説が必要なようです。

院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で働いている日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「あさっての方向」の意味や語源は?

image by iStockphoto

「あさっての方向」という言葉、耳慣れない人もいるかもしれません。「いや、あさってってどこだよ…」と思う人もいるかもしれませんね。まずは「あさっての方向」の意味と語源をチェックしていきましょう。

「あさっての方向」の意味は「見当違いの方向」

まずは「あさっての方向」の辞書での意味を確認していきましょう。「あさっての方向」では辞書に載っていない場合があるので、今回は「あさって」で調べてみました。国語系の辞典の「あさって」の記述は次の通りです。

1.明日の次の日。みょうごにち。「―会いたい」「紺屋(こうや)の―」
2.(「―の方」「―の方向」などの形で)見当はずれ。「―の方を向く」

出典:広辞苑 第7版(岩波書店)「あさって【明後日】」

広辞苑には「あさって」は2つの意味が掲載されていました。1番目は私たちが日常生活で多用する一般的な意味ですね。一方「あさっての方向」における「あさって」の意味は2番目です。「見当はずれ」という意味ですね。

「あさって(見当はずれ)」と「方向」を組み合わせた「あさっての方向」は、「見当違いの方向」という意味になります。

「あさっての方向」の語源は「明日に目を向けていないこと」?

では、この「あさっての方向」の語源や由来は何なのでしょうか。正確なことは分かっていませんが、「明日に目を向けるべきなのに、明後日(あさって)という見当違いの方を向いているという意」から生まれた言葉だとする説があります。明日に大事な用事がある場合に、明後日のことを考えていたら良くないですし、まさに見当違いですよね。

\次のページで「「あさっての方向」の使い方を例文とともに確認!」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: