今回は中生代について解説していきます。

中生代はなんといっても恐竜によって特徴づけられる時代です。古生物にまったく興味がない人でも、恐竜のことは知っているでしょう。恐竜達が地上を闊歩していた中生代について学んでみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

中生代について

image by iStockphoto

中生代とは現在より約2億5200万年前から約6600万年前までの期間を表す地質学的時代区分です。さらに中生代は古いほうから、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀に区分されています。中生代は何より恐竜の時代として知っている人も多いはずです。人間はなぜか恐竜が大好きで、たくさんいる古生物の中でも屈指の人気を誇っています。

恐竜が繁栄した中生代ですが、他の大型の生物もたくさん繁栄していて、生物的には豊かな時代だったようです。これは非常に温暖だった気候が影響しているのかもしれません。しかし、酸素濃度は現在よりだいぶ低かったようです。恐竜を含め、大型動物が地上に栄えていた中生代は、約6600万年前に突然の終わりを迎えます。今回はこのような中生代について紹介してみましょう。

上記の画像は中生代の想像図です。

古生代末の大量絶滅からの繁栄

ElrathiakingiUtahWheelerCambrian.jpg
Wilson44691 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

中生代の前の時代である古生代の末、約2億5200万年前に地球史上最大級の生物大量絶滅が起こりました。今見つかっている化石記録によると、海洋生物の無脊椎動物が科のレベルで52パーセント、脊椎動物は科のレベルで82パーセントも絶滅したと推定されています。古生代には大繁栄していた三葉虫やフズリナなどすべて絶滅してしまいました。ちなみに、原因はよくわかっていません。

この大量絶滅の影響が大きく、中生代に入っても生物の多様性は数百万年も回復しませんでしたが、中生代の最初の三畳紀(約2億5200万年~約2億年前)中には生物の多様性が回復しました。中生代には、六放サンゴ、セラタイト型アンモナイト、ベレムナイト、翼形二枚貝、放散虫、貝蝦、ウミユリなどが繁栄したことが知られています。

上記の画像は古生代で絶滅した三葉虫の化石画像です。

恐竜の台頭

Pteranodon amnh martyniuk.jpg
Matt Martyniuk - 投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, リンクによる

生物の多様性が回復していくにつれて恐竜が台頭してきました。恐竜とは双弓類から分かれた鳥盤類と竜盤類の系統を指します。鳥盤類はトリケラトプスやステゴサウルスなどです。竜盤類はさらに竜脚形類と獣脚類に分かれていて、竜脚類形類にはブラキオサウルスやディプロドクスなどが、獣脚類にはティラノサウルスやヴェロキラプトルなどに加えて鳥類が含まれます。

恐竜に間違えられがちですが、中生代には他の大型爬虫類も繁栄していました。プテラノドンなどの翼竜、イクチオサウルスなどの魚竜、プレシオサウルスなどの首長竜などです。これらは恐竜によく似ていますが、系統的に異なる生物になります。また、現生の鳥類は獣脚類に分類され、恐竜類の生き残りとも言えるようです。実際、最近の研究では、中生代でも羽毛を持つ獣脚類が多かったと考えられています。

上記はプテラノドンの化石画像です。先ほど述べたように、厳密にいえばプテラノドンは恐竜ではありません。

恐竜の特徴

Supersaurus.jpg
Zach Tirrell from Plymouth, USA - Supersaurus, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

恐竜の特徴は、二足歩行する爬虫類であることで、巨大な尻尾を使ってバランスを取っていたものと考えられています。これは恐竜の際立った特徴です。恐竜とは、簡単に言えば直立歩行に適した骨格を持った爬虫類ということになります。恐竜は三畳紀にはまだ小さい生き物でしたが、やがて巨大なものが現れるようになり、ジュラ紀(約2億年前~約1億4500万年前)の後期には、スーパーサウルスのような全長30メートルにもなる種を含む史上最大級の動物になっていきました。

恐竜はジュラ紀から白亜紀(約1億4500万年前~6600万年前)にかけて大繁栄したことが知られていますが、この理由の一つに独特の呼吸器官の獲得が考えられてます。獣脚類は気のうとよばれる袋を体の中にいくつも持ち、それを使って肺に酸素を送り込み、効率的に呼吸していたようです。現生の鳥類も同じシステムで呼吸しています。

実は三畳紀からジュラ紀にかけて大気中の酸素濃度が13パーセント程度にまで低下していました。気のうはこの酸素濃度の低下に適応するために獲得された仕組みのようです。恐竜は、この効率的な呼吸システムのために、中生代において繁栄できたのかもしれません。

上記の画像はスーパーサウルスの化石画像です。

\次のページで「パンゲア超大陸の分裂」を解説!/

パンゲア超大陸の分裂

Pangaea continents ja.svg
en:User:Kieff - File:Pangaea continents.png, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

古生代から中生代前半にかけて、地球上には巨大な超大陸パンゲアが存在していました。パンゲアの周囲を取り囲む超大洋はパンサラサ、パンゲア大陸東側の巨大な湾のような領域はテチス海と呼びます。パンゲア大陸はウェゲナーが大陸移動説を思いつくきっかけになったものです。ウェゲナーは、大西洋の両岸で海岸線が酷似していることや、両岸に分布する地質学的な証拠に連続性があることなどを根拠に、大西洋を囲むすべての大陸は昔はくっついていたと考えました。

その超大陸からそれぞれの大陸が分裂し、現在の配置になったというのがウェゲナー意見です。当時は証拠不十分でもあり、ウェゲナーの生前はなかなか認められませんでしたが、現在では広く認められるようになりました。パンゲア大陸は中生代まで存在しつづけますが、ジュラ紀の約1億8000万年前以降、次の時代である新生代までに何段階かにわたって分裂していきます。

まず北側のローラシア大陸と南側のゴンドワナ大陸に分裂し、さらにゴンドワナ大陸は、南アメリカ大陸とアフリカ大陸に分裂し、南極大陸、オーストラリア大陸、インド亜大陸などが分裂して、最終的に現在のような海陸配置になりました。

上記の画像はパンゲア大陸の模式図です。

白亜紀の温暖化と海洋無酸素イベント

Diatoms through the microscope.jpg
Prof. Gordon T. Taylor, Stony Brook University - corp2365, NOAA Corps Collection, パブリック・ドメイン, リンクによる

白亜紀は化石記録が豊富になる約5億4100万年前以降で最も温暖な時期だったことで有名です。海洋底の拡大速度が速く、火山活動等が活発でした。そのため、大量の二酸化炭素が大気中に放出され、大気中の二酸化炭素濃度が現在の数倍から十倍近くも高かったと考えられています。現在とはまったくことなる温暖な気候だったようです。

また、この時代には海水中の溶存酸素が低下して無酸素状態になるという現象が、繰り返し生じたことが知られています。これが海洋無酸素イベントと呼ばれる現象です。海に住んでいる動物も酸素呼吸をしているので、溶存酸素が低下すると生存できません。したがって、海洋無酸素イベントが生じると海生動物は壊滅的なダメージを受けます。

海洋無酸素イベントはどうやら温暖化によって引き起こされるようです。温暖化により大陸の化学風化が増え、海に大量のリンが流入します。このリンによって海の表層のプランクトンが活発になり、大量の有機物が生成され、その有機物が海中の酸素と反応することにより海洋無酸素イベントが発生するようです。

上記の画像は植物プランクトンの一種である珪藻の画像になります。

 

恐竜の絶滅

Chicxulub radar topography.jpg
NASA/JPL-Caltech - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA03379, パブリック・ドメイン, リンクによる

知っている人もいるかもしれしれませんが、今から約6600万年前、恐竜は突然姿を消してしまいます。恐竜だけではありません。翼竜、首長竜、モササウルス、古生代から繁栄していたアンモナイトも完全に絶滅しました。また、二枚貝類、腕足類、コケムシ類、円石藻や有孔虫など、このとき種のレベルで最大約75パーセントが一斉に絶滅したと推定されています。

この大量絶滅の原因は隕石の衝突のようです。1991年、現在のメキシコのユカタン半島北東部で、原因となった隕石の衝突によるクレーターが発見されました。このクレーターはチクシュルーブクレーターと名付けられ、直径は170~200キロメートルに達します。天体衝突によって地表から巻き上げられた大量の塵が日光を遮ることにより、生態系が崩壊し多くの生物が絶滅したと考えられているようです。

しかし、塵の影響は数か月しか続かないため、この説には問題点もあります。隕石の衝突が大量絶滅のきっかけになったことは確実ですが、大量絶滅のメカニズムについてはまだわかっていないことがたくさんあるようです。いずれにしろ、この大量絶滅によって中生代は終わりを迎え、新生代が始まります。

上記の画像はチクシュルーブクレーターの模式図です。

栄枯盛衰

栄枯盛衰

image by Study-Z編集部

大繁栄していた恐竜も、約6600万年前に起こった隕石の衝突という突発的な出来事によって絶滅してしまいました。しかし、この隕石の衝突によって繁栄していた大型爬虫類の多くが絶滅したことにより、次の新生代が哺乳類の時代となり、ひいては人類の台頭へとつながっていくのです。

結局、我々人類の繁栄も、その多くが運によって左右されているという事実に考え込まずにはいられません。人類も、地球の歴史、さらには宇宙の歴史の一コマに過ぎないという事を忘れずにいるのは、人間にとって有益であるように思われます。

" /> 恐竜の時代「中生代」とは?理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
地学地質・歴史理科

恐竜の時代「中生代」とは?理系ライターがわかりやすく解説

今回は中生代について解説していきます。

中生代はなんといっても恐竜によって特徴づけられる時代です。古生物にまったく興味がない人でも、恐竜のことは知っているでしょう。恐竜達が地上を闊歩していた中生代について学んでみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

中生代について

image by iStockphoto

中生代とは現在より約2億5200万年前から約6600万年前までの期間を表す地質学的時代区分です。さらに中生代は古いほうから、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀に区分されています。中生代は何より恐竜の時代として知っている人も多いはずです。人間はなぜか恐竜が大好きで、たくさんいる古生物の中でも屈指の人気を誇っています。

恐竜が繁栄した中生代ですが、他の大型の生物もたくさん繁栄していて、生物的には豊かな時代だったようです。これは非常に温暖だった気候が影響しているのかもしれません。しかし、酸素濃度は現在よりだいぶ低かったようです。恐竜を含め、大型動物が地上に栄えていた中生代は、約6600万年前に突然の終わりを迎えます。今回はこのような中生代について紹介してみましょう。

上記の画像は中生代の想像図です。

古生代末の大量絶滅からの繁栄

ElrathiakingiUtahWheelerCambrian.jpg
Wilson44691投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

中生代の前の時代である古生代の末、約2億5200万年前に地球史上最大級の生物大量絶滅が起こりました。今見つかっている化石記録によると、海洋生物の無脊椎動物が科のレベルで52パーセント、脊椎動物は科のレベルで82パーセントも絶滅したと推定されています。古生代には大繁栄していた三葉虫やフズリナなどすべて絶滅してしまいました。ちなみに、原因はよくわかっていません。

この大量絶滅の影響が大きく、中生代に入っても生物の多様性は数百万年も回復しませんでしたが、中生代の最初の三畳紀(約2億5200万年~約2億年前)中には生物の多様性が回復しました。中生代には、六放サンゴ、セラタイト型アンモナイト、ベレムナイト、翼形二枚貝、放散虫、貝蝦、ウミユリなどが繁栄したことが知られています。

上記の画像は古生代で絶滅した三葉虫の化石画像です。

恐竜の台頭

Pteranodon amnh martyniuk.jpg
Matt Martyniuk投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, リンクによる

生物の多様性が回復していくにつれて恐竜が台頭してきました。恐竜とは双弓類から分かれた鳥盤類と竜盤類の系統を指します。鳥盤類はトリケラトプスやステゴサウルスなどです。竜盤類はさらに竜脚形類と獣脚類に分かれていて、竜脚類形類にはブラキオサウルスやディプロドクスなどが、獣脚類にはティラノサウルスやヴェロキラプトルなどに加えて鳥類が含まれます。

恐竜に間違えられがちですが、中生代には他の大型爬虫類も繁栄していました。プテラノドンなどの翼竜、イクチオサウルスなどの魚竜、プレシオサウルスなどの首長竜などです。これらは恐竜によく似ていますが、系統的に異なる生物になります。また、現生の鳥類は獣脚類に分類され、恐竜類の生き残りとも言えるようです。実際、最近の研究では、中生代でも羽毛を持つ獣脚類が多かったと考えられています。

上記はプテラノドンの化石画像です。先ほど述べたように、厳密にいえばプテラノドンは恐竜ではありません。

恐竜の特徴

Supersaurus.jpg
Zach Tirrell from Plymouth, USA – Supersaurus, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

恐竜の特徴は、二足歩行する爬虫類であることで、巨大な尻尾を使ってバランスを取っていたものと考えられています。これは恐竜の際立った特徴です。恐竜とは、簡単に言えば直立歩行に適した骨格を持った爬虫類ということになります。恐竜は三畳紀にはまだ小さい生き物でしたが、やがて巨大なものが現れるようになり、ジュラ紀(約2億年前~約1億4500万年前)の後期には、スーパーサウルスのような全長30メートルにもなる種を含む史上最大級の動物になっていきました。

恐竜はジュラ紀から白亜紀(約1億4500万年前~6600万年前)にかけて大繁栄したことが知られていますが、この理由の一つに独特の呼吸器官の獲得が考えられてます。獣脚類は気のうとよばれる袋を体の中にいくつも持ち、それを使って肺に酸素を送り込み、効率的に呼吸していたようです。現生の鳥類も同じシステムで呼吸しています。

実は三畳紀からジュラ紀にかけて大気中の酸素濃度が13パーセント程度にまで低下していました。気のうはこの酸素濃度の低下に適応するために獲得された仕組みのようです。恐竜は、この効率的な呼吸システムのために、中生代において繁栄できたのかもしれません。

上記の画像はスーパーサウルスの化石画像です。

\次のページで「パンゲア超大陸の分裂」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: