この記事では「両刃(りょうば)の剣(つるぎ)」について解説する。

端的に言えば「両刃の剣」の意味は「リスクもともなうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「両刃の剣」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「両刃の剣」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「両刃の剣」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「両刃の剣」の意味は?

「両刃の剣」には、次のような意味があります。まずは、国語辞典で「両刃」がどのように記述されているのか確認しておきましょう。

刃物で両面または両側に刃がついていること。また、そのもの。諸刃(もろは)。 「 -の剣」

出典:大辞林 第三版(三省堂)「両刃」

相手を攻撃するための武器である剣には、両側に刃が付いているのが一般的です。そして、このような刃物を「両刃(りょうば)」といいます。

それに対して、日本刀のように片方にだけ刃が付いているものが「片刃(かたば)」です。もしも、両側に刃が付いていれば、片方は自分の方を向いていることになります。

そうすることで、たしかに攻撃力は上がるかもしれません。しかし、同時に自分自身の身を傷つけてしまう危険性も高まってしまいます。

そんなわけで、大成果を上げる可能性がある反面で大打撃を受けてしまう危険性もはらんでいること「両刃の刃」はたとえて表現しているのです。

「両刃」?それとも「諸刃」?

読者のみなさんの中には『「両刃(りょうば)の剣」ではなく「諸刃(もろは)の剣」なんじゃないの?』と疑問に思われた方もいることでしょう。結論から申し上げますと、「両刃」と「諸刃」のどちらを使っても正解です。

もちろん、両者が表す意味合いも同じだと考えて差し支えありません。さらに、「両刃」と表記されていても「もろは」と読まれることさえあるくらいです。

このような例は、「両手(りょうて)」と「諸手(もろて)」など他にも多数存在します。ちなみに、今回の慣用句において「剣」を「つるぎ」ではなく「けん」と読むのは誤りだとされていますので、注意が必要です。

\次のページで「「両刃の剣」の使い方・例文」を解説!/

「両刃の剣」の使い方・例文

「両刃の剣」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

我が大学に知名度抜群のあの専門家を教授として招くのは、彼の素行の悪さを考えると両刃の剣だとは言えないだろうか。

たとえ両刃の剣だと批判されようとも、今の我々には起爆剤となるインパクトの強い宣伝広告が求められているのです。

たしかに、X社と提携するのは両刃の剣という側面もあるが、得られる利益の方がはるかに大きいと私どもは判断しています。

いずれの例文においても、プラス面のみならずリスクも存在していることをきちんと読み取る必要があります。一つめの例文では、プラス面は抜群の知名度でリスクは素行面の悪さといった具合です。

二つめは明記されていないものの、高い宣伝効果の反面でブランドイメージを損なってしまったりコストがかかり過ぎてしまったりすることが考えられます。三つめの例文に関しては、得られる利益というプラス面に対してX社と提携すること自体がリスクです。

具体的には、X社の経営基盤がぜい弱であるとか、提供される技術が陳腐化しやすいといったことなどが考えられます。

#2 「両刃の剣」の類義語は?違いは?

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「両刃の剣」のように、メリットとリスクの両方があることを表現した言葉には、他にどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものを二つご紹介します。

「ハイリスク・ハイリターン」

「ハイリスク・ハイリターン」は「両刃の剣」の類義語としては、もっともポピュラーなものだといえます。危険度が高い代わりに得られるかもしれない利益(=リターン)もまた高い、そんな意味合いを持った言葉です。

ただし、「両刃の剣」とは意味合いの異なる部分もあります。それは、「ハイリスク・ハイリターン」の「ハイ」の部分です。

リスクとメリットの両面があるものの「両刃の剣」の場合は、その度合いが高いかどうかまでは分かりません。

\次のページで「「長短半ばする」」を解説!/

「長短半ばする」

「長短半ばする」もまた、「両刃の剣」の類義語と考えることができます。こちらの慣用句は、「長所と短所が半分ずつ」という意味です。

ただし、「両刃の剣」のように「短所」=「危険性」とは限りません。この慣用句を使用する際には、その辺りに注意した方がよさそうです。

それでは、これらを用いた例文を確認しておきましょう。

そのオンラインサービスを手がけるベンチャー企業に出資するのは、文字通りハイリターン・ハイリターンである。

たしかに、彼の性格は長短半ばしているかもしれないが、我がクイズ研究会には欠かせない人材ではないだろうか。

#3 「両刃の剣」の対義語は?

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「両刃の剣」対義語にはどのようなものが考えられるのでしょうか。これには、二つのパターンが存在します。

ひとつは、メリットや長所しかないというものです。そして、もうひとつは逆にリスクや短所しかない場合を想定してみると分かりやすいでしょう。

では、こちらも二通りの表現を押さえておきましょう。

「完全無欠」

「完全無欠」は、足りない部分や短所などがまったくないことを表した四字熟語です。「完全」も「無欠」もどちらも欠けている部分が何もない様子を表しています。

いわば、長所しかない状態といっても差し支えありません。このような意味合いを持った四字熟語には、ほかに「全知全能」や「十全十美」などがあります。

「百害あって一利なし」

「百害あって一利なし」は、害ばかりあって利益がまったくないことを表した慣用表現です。こちらは、長所ではなく短所だらけの様子を表したものだといえます。

「百害」の「百」は具体的な数字ではなく、非常にたくさんのという意味を表すときに用いられるものです。それでは、こちらも例文で用法をしっかりと押さえておきましょう。

情報検索サイトの運営陣に完全無欠さを求めるのは、いささか酷なことだとはいえないだろうか。

かかる時期に国会で不適切な質問を繰り返すのは、まさに百害あって一利なしだというものだ。

\次のページで「「両刃の剣」の英訳は?」を解説!/

#4 「両刃の剣」の英訳は?

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それでは、最後に「両刃の剣」を英語で表現するとどうなるのか、いっしょに見ていきましょう。

「cut both ways」

「両刃の剣」を英語で表現したもので、いちばんシンプルかつ分かりやすいのが「cut both ways」です。この表現は、文字通り「どちらのサイドも切りつけてしまう」という意味を表しています。

どちらのサイドもというのは、味方も敵もということです。こちらも例文をよく確認しておいてくださいね。

His words could be cut both ways.
彼の言葉は、もしかすると両刃の剣になりかねない。

「両刃の剣」を使いこなそう

この記事では「両刃の剣」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句は、自分に利益のみならず損害も与えかねないことをたとえたものです。

「りょうば」と「もろは」の二通りの読み方があるこの表現は、日常生活においてもよく使われます。みなさんも、今回学んだことがしっかりと身についたら、積極的にこの慣用句を使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「両刃の剣」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「両刃(りょうば)の剣(つるぎ)」について解説する。

端的に言えば「両刃の剣」の意味は「リスクもともなうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「両刃の剣」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「両刃の剣」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「両刃の剣」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「両刃の剣」の意味は?

「両刃の剣」には、次のような意味があります。まずは、国語辞典で「両刃」がどのように記述されているのか確認しておきましょう。

刃物で両面または両側に刃がついていること。また、そのもの。諸刃(もろは)。 「 -の剣」

出典:大辞林 第三版(三省堂)「両刃」

相手を攻撃するための武器である剣には、両側に刃が付いているのが一般的です。そして、このような刃物を「両刃(りょうば)」といいます。

それに対して、日本刀のように片方にだけ刃が付いているものが「片刃(かたば)」です。もしも、両側に刃が付いていれば、片方は自分の方を向いていることになります。

そうすることで、たしかに攻撃力は上がるかもしれません。しかし、同時に自分自身の身を傷つけてしまう危険性も高まってしまいます。

そんなわけで、大成果を上げる可能性がある反面で大打撃を受けてしまう危険性もはらんでいること「両刃の刃」はたとえて表現しているのです。

「両刃」?それとも「諸刃」?

読者のみなさんの中には『「両刃(りょうば)の剣」ではなく「諸刃(もろは)の剣」なんじゃないの?』と疑問に思われた方もいることでしょう。結論から申し上げますと、「両刃」と「諸刃」のどちらを使っても正解です。

もちろん、両者が表す意味合いも同じだと考えて差し支えありません。さらに、「両刃」と表記されていても「もろは」と読まれることさえあるくらいです。

このような例は、「両手(りょうて)」と「諸手(もろて)」など他にも多数存在します。ちなみに、今回の慣用句において「剣」を「つるぎ」ではなく「けん」と読むのは誤りだとされていますので、注意が必要です。

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