この記事では「懐(ふところ)が深い」について解説する。
端的に言えば、懐が深いの意味は「心が広い」です。「懐」の意味はわかっているか?「懐が深い」は人柄を褒める言葉だから、使い方を知っておくと学校やビジネスシーンでもすぐに使えるぞ
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「懐が深い」の意味をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「懐が深い」の意味・使い方

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さっそく「懐が深い」の意味をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「懐が深い」の意味

まず、国語辞典で「懐が深い」の意味をチェックしましょう。

1 相撲で、腕と胸のつくる空間が大きく、相手になかなか回しを取らせない。
2 心が広く、包容力がある。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「懐が深い」

1は相撲の用語です。ここでの「懐」は「前に出した両腕と胸とで囲まれる空間」のこと。身長が高く腕が長い力士は、前に出した腕と胸とで作る空間が広いので、四つに組んだときに相手がなかなか回しをとれない」という意味です。2は「心が広く包容力がある」という意味ですね。なぜそのような意味になるのでしょうか。「懐」を調べてみるとわかりますよ。

1 衣服を着たときの、胸のあたりの内側の部分。懐中。
2 前に出した両腕と胸とで囲まれる空間。
3 周りを山などに囲まれた奥深い場所。
4 外界から隔てられた安心できる場所。
5 物の内部。内幕。
6 持っている金。所持金。
7 胸の内の考え。胸中。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「懐」

1のように「懐」衣服を着たときの胸の内側という意味。昔は着物の「懐」に物を入れて携帯していました。茶席などで使う和紙のことを「懐紙(かいし)」といい、護身用に隠し持つ短剣を「懐剣(かいけん)」といいますね。

ほかに5の「物の内部」「内幕」、7の「胸の内の考え」「胸中」などの意味があります。「懐」は胸の内側の部分であることから「物の内部」や「胸中」のことも指すようになり、「懐が深い」「心が広い」「包容力がある」という意味になりました。

「懐が深い」の使い方

次は例文で「懐が深い」の使い方を見ていきましょう。

\次のページで「「懐が深い」の類義語」を解説!/

1.彼は地位や学歴で人間を判断することがなく、いつも温和でゆとりがあるように見える。あのような人物を懐が深いというのだろう。
2.つい自分と相手を比較してしまう。他者のミスが許せずストレスを感じる。こんなわたしでも懐が深い人間になれるだろうか。

最初の例文は、偏見がなく他者を受け入れる余裕のある彼は、懐が深い人だという意味です。2番目の例文は、相手を認められず嫉妬したり、他者の失敗が許せなかったりする人が、懐が深い人柄に変わることは可能だろうかという意味ですね。

「懐が深い」の類義語

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「懐が深い」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「度量(どりょう)が広い」:多くのものを受け入れる

「度量」の「度」は長さをはかる物差し、「量」は量をはかる升(ます)のこと。転じて「度量」は「長さと容積」という意味になりました。また「心の広がり」や「他人の言動を受け入れる心構え」という意味も持っています。「度量が広い」「多くのものを受け入れる心を持っている」ことです。

「器(うつわ)が大きい」:度量が広い

「器」は「物を入れるもの」ですが、「人物や能力などの大きさ」「器量」という意味があります。「器が大きい」「人としての度量が広い」「能力が十分にある」「細かいことや小さいことを気にしない」という意味です。

\次のページで「「清濁併せ吞む」:善も悪も受け入れる」を解説!/

「清濁併せ吞む」:善も悪も受け入れる

「清濁併せ吞む」「せいだくあわせのむ」と読みます。「清濁」とは「澄んでいることと濁っていること」ですが、「善と悪」「善人と悪人」「賢者と愚者」という意味もありますよ。「呑む」は「飲食物を口から体内に入れる」ことですが、「受け入れる」「妥協する」という意味もあります。

「清濁併せ吞む」は「善も悪も同時に受け入れる」こと。つまり「心が広い」「善も悪も分け隔てなく受け入れる」「度量が大きい」という意味です。

「懐が深い」の反対語

「懐が深い」と反対の意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「料簡(りょうけん)が狭い」:心が狭い

「料簡」は「了見」「料簡」と表記することもあります。「簡」が常用外の読み方であるため常用漢字の「見」を使うようになったもので、どちらも誤用ではありません。「料簡」には「思慮」「分別」「考えをめぐらすこと」「こらえること」などの意味があります。「料簡が狭い」「物の見方や考え方に深さがない」「人を受け入れる心が狭い」という意味です。

「狭量(きょうりょう)」:度量が狭い

「狭い」には「空間に余裕がない」「広がりが少ない」などとともに、「物の見方や考え方に偏りがあって融通がきかない」という意味があります。「量」は「重さや容積をはかる」「かさや容積のこと」「かさをはかる器具」などのほかに、「力」「心の広さ」「能力の大きさ」という意味もありますよ。「狭量」「人を受け入れる心が狭い」という意味です。

「懐が深い」の英訳

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次は英語で「懐が深い」をどのように表現するか見ていきましょう。

「tolerant」:寛大な

「tolerantは形容詞で「寛大な」「寛容な」「許容する」という意味です。

\次のページで「「broad-minded」:心の広い」を解説!/

He is a tolerant person.
彼は懐が深い人だ。

「be tolerant of her failure」は「彼女の失敗を許容する」ですね。「tolerance」は名詞で「寛容」「寛大さ」「忍耐」「tolerate」は動詞で「許容する」「寛大に取り扱う」です。

「broad-minded」:心の広い

「broad-minded「心の広い」「寛大な」「偏見のない」という意味です。

She was a broad-minded person.
彼女は懐が深い人だった。

「broad「広い」「幅がある」という意味ですが「心、知識、活動範囲などが広い」という意味もあります。mindedは形容詞や副詞に接続して「~心を持った」「~気質を持った」という表現になりますよ。ちなみに反対語は「narrow-minded」。「心が狭い」「偏見を持った」という意味です。

「懐が深い」を使いこなそう!

この記事では、「懐が深い」の意味を調べ、例文や類義語などを解説しました。

「懐が深い」の意味は「相撲で、腕と胸のつくる空間が大きく、相手になかなか回しを取らせない」ことです。また、「懐」が胸の内側の部分であることから「物の内部」や「胸中」のことも指すようになり、「懐が深い」「心が広い」「包容力がある」という意味になりました。

「懐が深い」というキーワードで検索すると、懐が深い人の特徴についての記事がヒットします。意見の違いがあっても相手の話にきちんと耳を傾け、人のミスを責めることはなく、自分のミスは素直に謝罪でき、いつも感謝の気持ちを忘れない、誰からも好印象を持たれる人物。そんな「懐が深い」人間になりたいものです。無理でもせめて「懐が深い」を使いこなせる人になってくださいね。

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国語言葉の意味

「懐が深い」の「懐」はどんな意味?使い方・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「懐(ふところ)が深い」について解説する。
端的に言えば、懐が深いの意味は「心が広い」です。「懐」の意味はわかっているか?「懐が深い」は人柄を褒める言葉だから、使い方を知っておくと学校やビジネスシーンでもすぐに使えるぞ
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「懐が深い」の意味をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「懐が深い」の意味・使い方

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さっそく「懐が深い」の意味をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「懐が深い」の意味

まず、国語辞典で「懐が深い」の意味をチェックしましょう。

1 相撲で、腕と胸のつくる空間が大きく、相手になかなか回しを取らせない。
2 心が広く、包容力がある。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「懐が深い」

1は相撲の用語です。ここでの「懐」は「前に出した両腕と胸とで囲まれる空間」のこと。身長が高く腕が長い力士は、前に出した腕と胸とで作る空間が広いので、四つに組んだときに相手がなかなか回しをとれない」という意味です。2は「心が広く包容力がある」という意味ですね。なぜそのような意味になるのでしょうか。「懐」を調べてみるとわかりますよ。

1 衣服を着たときの、胸のあたりの内側の部分。懐中。
2 前に出した両腕と胸とで囲まれる空間。
3 周りを山などに囲まれた奥深い場所。
4 外界から隔てられた安心できる場所。
5 物の内部。内幕。
6 持っている金。所持金。
7 胸の内の考え。胸中。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「懐」

1のように「懐」衣服を着たときの胸の内側という意味。昔は着物の「懐」に物を入れて携帯していました。茶席などで使う和紙のことを「懐紙(かいし)」といい、護身用に隠し持つ短剣を「懐剣(かいけん)」といいますね。

ほかに5の「物の内部」「内幕」、7の「胸の内の考え」「胸中」などの意味があります。「懐」は胸の内側の部分であることから「物の内部」や「胸中」のことも指すようになり、「懐が深い」「心が広い」「包容力がある」という意味になりました。

「懐が深い」の使い方

次は例文で「懐が深い」の使い方を見ていきましょう。

\次のページで「「懐が深い」の類義語」を解説!/

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