世界史

個性的すぎる「アメリカ歴代大統領」10人の生きざまを元大学教員が解説

よぉ、桜木建二だ。アメリカ合衆国大統領は初代のジョージ・ワシントンに始まり、さまざまな人物がつとめてきた。アメリカは二大政党制。共和党と民主党がしのぎを削るなか、大統領らしからぬユニークなキャラクターを排出する。ユニークすぎる言動で世界中の人を驚かせた、世界にインパクトを与える政策や戦争を牽引するなど、記憶の刻まれ方もいろいろだ。

それじゃ、個性あふれる「アメリカ歴代大統領」10人のキャラクターや事件簿、彼らに関連する政策の現代における評価を、世界史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/ひこすけ

文化系の授業を担当していた元大学教員。専門はアメリカ史・文化史。世界史をたどるとき「アメリカ歴代大統領」を避けて通ることはできない。「アメリカ歴代大統領」は、アメリカだけではなく世界に影響を与える存在。そこで今回は「アメリカ歴代大統領」10人をピックアップし、その個性的な生きざまを解説する。

草創期のアメリカ歴代大統領は多様な顔を持つ

image by PIXTA / 13096744

草創期のアメリカ歴代大統領は、政治家に括ることがでないほど、多様な顔を持っています。アメリカ独立戦争があったことから多いのが軍人。その他、思想家、政治学者、建築家としての才能もあわせ持つ教養人が中心でした。

アメリカ建国の父であるジョージ・ワシントン

ジョージ・ワシントンはアメリカ合衆国の初代大統領。政治家であると同時に軍人。黒人奴隷農場主でもあり、奴隷をかかえる南部の支持者を数多く確保していました。アメリカ独立戦争では強い愛国心から信頼度も高かったワシントン。このような彼の顔から、初代大統領にえらばれたのでしょう。

また、彼はフリーメイソンのメンバーであったことでも知られています。フリーメイソンは起源がはっきりとしない友愛結社。アメリカ建国期の政治家はフリーメイソンが多かったという説もあります。フリーメイソンの理念は「自由」「平等」「友愛」「寛容」「人道」の5つ。アメリカの基本理念である「平等」と重なる感じがしますね。

ヨーロッパの思想家と親交があるトーマス・ジェファーソン

トーマス・ジェファーソンは第三代大統領。「アメリカ独立宣言」の起草者のひとりで、すぐれた思想家としての顔を持っていました。ジェファーソンは知識が豊富な人物。そのため得意分野がたくさんありました。園芸、建築、考古学、古生物学にも精通していたそうです。さらに、バージニア大学の創設者の顔も持っているほどでした。

大統領職のあと、ジェファーソンはバージニア大学の運営にも関与。なかでも有名なのが、大学のキャンパスの建築設計です。それは彼の教育・政治の理念をあらわすデザインでした。アメリカの民主主義をあらわすのは、古代ギリシャ様式やローマ様式であると考えたジェファーソン。彼のデザインしたキャンパスは今でも見ることがでます。

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現在の合衆国では1ドル札と25セントコインにジョージ・ワシントンの肖像を使用している。アメリカ建国の父として、政党の違いを超えて国民に支持された存在だ。

アメリカ歴代大統領は白人と非白人のあいだを揺れ動く

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By John Reuben Chapin, 1823-1894 , artist – This image is available from the United States Library of Congress‘s Prints and Photographs division under the digital ID ppmsca.32639. This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing for more information., Public Domain, Link

インディアンとの抗争が激しくなり、さらには南北戦争が勃発する時期になると、合衆国大統領は白人と非白人のあいだを揺れ動きます。「平等」を理念としながらも、その対象となる人は限られていたのが現実。差別的な政策が推進されました。

インディアンの土地を奪うことに躊躇がなかったアンドリュー・ジャクソン

ジョン・クィンシー・アダムスのあと第7代大統領となったのがアンドリュー・ジャクソンです。彼は米英戦争における活躍が認められて大統領になった武闘派の政治家強。ジャクソンの軍人としての歴史は、インディアンの虐殺と共にあります。小さな子供であっても容赦なく殺しましたジャクソン。インディアンの子孫が増えないように、とくに女性の虐殺を徹底したと言われています。

若いころは決闘をたびたび行い、そのとき命中した銃弾が胸に残っていたほどの人物。強硬な態度をとることから陰で「アンドリュー1世」と呼ばれていました。ほかの政治家を攻撃することも多く、ジャクソンには敵が多数いました。そのため暗殺未遂の標的ともなったのです。

エイブラハム・リンカーンは黒人奴隷解放の立役者

エイブラハム・リンカーンは第16代合衆国大統領。政治家になる前は人望ある優秀な弁護士でした。もともと熱心なホイッグ党員だったことから政治家に転身。大統領になったあとは、南北戦争後に黒人奴隷解放を進めたことから「奴隷解放の父」とも呼ばれています。

リンカーンは、奴隷を解放したことで知られていますが、彼個人は解放支持者というわけではありませんでした。奴隷を解放しなければ戦争には勝てないと判断し、解放を決断したと言われています。また、インディアンに関しては徹底的に排除する方針をとっていました。美化されている趣がありますが、実際は完全な「平等主義者」ではなかったようです。

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2代目大統領のジョン・アダムズの妻であるアビゲイルは、奴隷制度には反対する姿勢を示していたそうだ。当時としては、進歩的な考えを持っていた女性。合衆国の建国期から、そのような考えを持っていた人は、少なからずいたようだ。

ルーズベルト家出身のアメリカ歴代大統領は武闘派中心

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By American Press Association – https://www.loc.gov/item/2009633106/, Public Domain, Link

歴代の合衆国大統領のなかでも人気があるのがルーズベルト家出身の二人の政治家。セオドアとフランクリンです。二人とも、リーダーシップあふれる政治家でしたが、生涯を通じて武闘派を感じさせる活動が目立ちました。

探検家として大活躍したセオドア・ルーズベルト

第26代大統領であるセオドア・ルーズベルトは、政治家であると同時に、軍人、探検家、博物学者と、多様な顔を持っています。とくに彼の人気を支えたのが探検家としての活動。1908年に大統領選を辞退したあとすぐにアフリカに渡航します。ライオン、ゾウ、カバなどの野生動物に立ち向かう姿は「男らしさの象徴」として定着しました。

ルーズベルトの二度目の探検は南アメリカのアマゾンです。1912年の大統領選で、ルーズベルトはウィリアム・ハワード・タフトを支持しました。しかしタフトの政策が自分と相反することが判明。そこで革新党をあらたに立ち上げて立候補します。スピーチ中に銃撃されるなどの災難も。彼は選挙に敗れたあと、すぐに南アメリカ探検に赴きました。

海軍の発展に人生をかけたフランクリン・ルーズベルト

第26代大統領のセオドア・ルーズベルトを遠縁の従兄にもつ政治家が、第32代大統領をつとめたフランクリン・ルーズベルトです。フランクリンは、1913年にウィルソン大統領により海軍次官に任命されてから海軍一筋でした。1939年に第二次世界大戦が開始されると、最初は距離を置いていましたが、有名な「隔離演説」のあとに参戦を決断した大統領でもあります。

フランクリンは海軍のイメージが強い大統領ですが、マスコミを通じてプライベートを発信、「良きパパ」としての自己をPRしました。また、ポリオの後遺症により下半身が不自由であったため、日常生活では車椅子を使っています。軍事面で強いリーダーシップをとったフランクリンですが、発信される姿はその反対であることも多かったのです。

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第31代大統領のハーバート・フーヴァーもパワー系の経歴がある政治家のひとり。若き日のフーヴァーは、オーストラリアで鉱山技師として働き、当時の清国にも赴いている。1900年、義和団事件に巻き込まれたときは、バリケードの建設を指揮したらしい。

アメリカ歴代大統領には世界の女性を虜にしたイケメンも

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By Abbie Rowe – John F. Kennedy Presidential Library and Museum, Boston [1], Public Domain, Link

アメリカ歴代大統領は、より多くの支持者を集めるために見た目や話し方の魅力も重視されます。そこで、なかには女性の人気が高いイケメンも登場。イケメン大統領は、合衆国だけではなく海外における注目度をアップさせる相乗効果がありました。

熱愛スキャンダルでメディアに注目され続けたジョン・F・ケネディ

熱愛スキャンダルでメディアに注目され続けた大統領と言えばジョン・F・ケネディでしょう。共和党候補のリチャード・ニクソンと接戦ので争った末に、わずかな票差で選挙戦を制した人物です。アイルランド系アメリカ人として初めて大統領になったケネディ。その端正な顔立ちや色男ぶりも話題ともなりました。

ジョン・F・ケネディの在職中、キューバ危機やベルリンの壁の建設などの歴史的な事件が多発しています。しかし、彼を最も印象付けるのは複数の女性との度重なる不倫報道でしょう。とくに、謎につつまれているのが歌手マリリン・モンローとの熱愛です。周りの説得により関係が終わったあと、モンローがケネディの誕生日パーティーで歌った「ハッピーバースデートゥーユー」は意味深であると話題になりました。

ロナルド・レーガンは元西部劇俳優

ロナルド・ウィルソン・レーガンは西部劇俳優としての経歴を持つ政治家。1937年にワーナーブラザースと契約、二枚目俳優として人気を博しました。その後、ハリウッドがあるカリフォルニア州知事を経て、第40代大統領となります。レーガンは大統領になったあとに暗殺未遂事件に巻き込まれるなど波乱万丈。ユーモアあふれるキャラクターもあり、政治家としても人気を確立しました。

大統領職を辞したあとのレーガンは病気との戦いになります。1993年にアルツハイマー病と診断されたレーガンは、それを国民に公表しました。アルツハイマー病による身体の衰えは、二枚目の西部劇俳優・政治家としての姿とは対照的。とはいえ彼は、療養しながらも93歳と長寿を全うしました。

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個人的には第42代大統領のトーマス・ウッドロウ・ウィルソンもイケメンだと思うな。彼は、プリンストンの学長をつとめ、政治学の博士号も持っている知性派の政治家だ。とくに、行政の研究の創始者としても知られている。学者風の端正な顔立ちにも注目だ。

破天荒なアメリカ歴代大統領は言動にも注目が集まる

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Gage Skidmore from Peoria, AZ, United States of America – Donald Trump, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

ときおり世界を震撼させる破天荒な大統領が登場することも合衆国の特徴です。アメリカは地域ごとに国民の雰囲気が異なり、それが選挙結果に反映されることも。支持率の動向により、私たちがおどろくような破天荒キャラの大統領が生まれることがあるのです。

飲酒量が半端なかったジョージ・W・ブッシュ

第43代アメリカ合衆国大統領をつとめたジョージ・W・ブッシュはアルコール摂取量が半端なかった政治家です。1973年、ハーバード・ビジネス・スクールに通うことを理由に兵役義務を想早期に終えたジョージ・ブッシュ。勉学に励んでいたと思いきや、酒浸りになる日々だったそうです。その後、30歳になったブッシュは、なんと飲酒運転容疑で逮捕されてしまいました。

そんなブッシュの大統領としての存在感を示した事件が、ニューヨークとワシントンD.C.で発生した同時多発テロでしょう。世界の保安官を目指すブッシュは強いリーダーシップを発揮しますが、支持率はどんどん低下。なんとか二回目の当選を果たしますが、2008年の世論調査における不支持率は76%越え。ウォーターゲート事件後のリチャード・ニクソンの不支持率を上回るものでした。

ドナルド・トランプのスピーチはプロレスの煽りに由来

第45代目の大統領となったドナルド・トランプは、合衆国大統領のなかで最も破天荒な言動を繰り返す人物であると言えるでしょう。不動産王であると同時に格闘技が大好きという一面も。自らプロレス興行に出場し、代行試合ではあったものの、マイクをもって相手をあおるパフォーマンスを披露しました。

ドナルド・トランプは大統領になったあとも、相手を挑発するようなスピーチをたびたび行っています。彼の破天荒なスピーチの手法は、プロレスの煽りに由来しているとのこと。プロレス興行におけるトランプの姿を知っているアメリカ人は、彼の挑発的なスピーチには慣れっこ。日本人ほどびっくりしないそうです。

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アメリカ歴代大統領は紳士系と破天荒系が入れ替わることが多い。紳士系のビル・クリントンのあと、破天荒系のブッシュが当選。そのあと、紳士系のバラク・オバマが非白人として初めて大統領に就任した。そのあと破天荒系のトランプが大統領。キャラクター的にも揺り戻しがあるのだろう。

アメリカ歴代大統領のキャラクターが世界を動かすことも

アメリカ歴代大統領は、ここで取り上げた人物以外にも、ユニークなキャラクターや才能を持った人がたくさんいます。世界を揺るがす事件が起こったとき、諸国の中心となりリーダーシップを発揮する合衆国大統領。彼らの政策は、さまざまな立場の違いから、賛否両論となることも少なくありません。政策が決定されるプロセスには、政治理念や政治対立が関わることも多いでしょう。同時に、政策のカラーは大統領の強烈なキャラクターに左右されることもあるのです。そこで、合衆国大統領の個性的なキャラクターに注目すると、アメリカの政策を読み解くヒントになるかもしれません。

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