この「鬼に金棒」という言葉、調べると色々面白いんですよ。語源も意外ですし類義語もたくさんあります。今回はその「鬼に金棒」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「鬼に金棒」の意味や語源は?

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「鬼に金棒」という言葉、聞いたことがないという人はいないでしょう。使ったことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、実はとても奥の深い言葉なのです。まずは、その「鬼に金棒」の意味と語源について見ていきます。

「鬼に金棒」の意味は「強いものがますます強くなる」

最初に、「鬼に金棒」の辞書での意味を確認していきましょう。「鬼に金棒」は国語辞典には次のような意味が掲載されています。

それを手に入れることによって、強いものがますます強くなることのたとえ。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆鬼に金棒(かなぼう)」

「鬼に金棒(おににかなぼう)」は「それを手に入れることによって、強いものがますます強くなること」を意味することわざです。ただでさえ強い鬼が金棒(金属でできた棒)を武器に戦ったら、さらに強くて手が付けられなくなりますよね。もともと強いものに、さらに強力な味方や武器が加わる際に使用します。

なお、「金棒」は「鉄杖(てつじょう)」や「金梃子(かなてこ)」といった言葉で言い換えが可能です。よって「鬼に鉄杖」や「鬼に金梃子」という言い方をされることもあります。意味は「鬼に金棒」と全く同じです。

「鬼に金棒」の語源は“かるた”!

この「鬼に金棒」が広く使われるようになったのは江戸時代中期のこと。江戸時代中期に、京都や大坂、江戸では「いろはがるた」とよばれるかるたが作られ人々が遊ぶようになっていました。そして、この「鬼に金棒」は江戸版の「いろはがるた」の「お」の札に登場します

かるたとして人々が遊ぶことで、多くの人に意味が共有されるようになっていったのでしょう。江戸時代のかるたが由来というのは、少し意外でしたね。

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「鬼に金棒」の使い方を例文とともに確認!

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続いて、「鬼に金棒」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「鬼に金棒」は基本的には、「好条件が加わる」という意で望ましいというプラスのニュアンスで使用されます。(マイナスのニュアンスを言い表したい場合は、類義語のコーナーをご参照ください。)

1.うちのプロジェクトチームに敏腕の弁護士が加わった。これで法的な問題が起きても安心だ。まさに鬼に金棒だ。
2.この車は燃費が良くて価格も安い。それでいて安全性の評価も高い。まさに鬼に金棒だ。
3.応援しているプロ野球チームに、メジャー通算100本塁打の助っ人が加入するらしい。現在も首位を走っているし、鬼に金棒とはこのことだな!

例文1では、「上手くいっているプロジェクトチームに、さらに敏腕弁護士という強い味方が加わった」ことを、「鬼に金棒」ということわざで表しています。例文2では、「燃費が良くて価格が安い車に、さらに安全性の高評価がついている」ことを「鬼に金棒」ということわざで表していますね。例文3では、「首位を走るプロ野球チームに、メジャーリーグで活躍した助っ人が加入する」ことを「鬼に金棒」ということわざで表しています。

このように、「強いものや好調なものに、さらに好条件が加わる」というプラスのニュアンスで使用されるのが、「鬼に金棒」ということわざなのです。

「鬼に金棒」の類義語は?

次に、「鬼に金棒」の類義語をご紹介します。「鬼に金棒」の類義語は「弁慶に薙刀」「獅子に鰭」「虎に翼」です。ここでは、意味を確認し「鬼に金棒」との比較を行っていきます。

「弁慶に薙刀」:強いものがますます強くなる

「弁慶に薙刀(べんけいになぎなた)」は「それを手に入れることによって、強いものがますます強くなること」を意味することわざです。意味やニュアンスにおいて、「鬼に金棒」との違いはありません。

弁慶は源義経に仕えたとされる人間離れした怪力の僧。ただでさえ怪力で敵に回したら恐ろしい弁慶に、薙刀(長い槍のような刀)を持たせたら、さらに強く手が付けられなくなりますよね。

「獅子に鰭」:強いものがさらに強く

「獅子に鰭(ししにひれ)」は「強いものが、それが加わることでさらに強くなること」を意味することわざです。「鬼に金棒」と意味やニュアンスの違いは、ほぼありません。

「獅子」は百獣の王であるライオンのこと。そのライオンに、水中で自由に動き回るための鰭がついたら、陸でも海でも最強となり手が付けられませんよね。

「虎に翼」:勢力のある者にさらに勢いが…

「虎に翼」は「勢力のある者にさらに勢力を加えること」のたとえであることわざです。ただでさえ強い虎に翼がついて空が飛べるようになったら、それは恐ろしいですよね。

この「虎に翼」は、「鬼に金棒」とはニュアンスが異なります。「虎に翼」は、横暴な人物が勢いを得て更に横暴になる場合など好ましくない事例に使用されることが特徴です。「鬼に金棒」は基本は好ましい事例に用いられるので、ここが違いですね。

「鬼に金棒」の英語表現は?

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続いて、「鬼に金棒」の英語表現を確認していきましょう。「鬼に金棒」は日本語独特のことわざなので、そのまま直訳しても意味は通じません。「鬼に金棒」の意味から考えていくのが良いでしょう。

「be doubly strong」:2倍の強さになる

be doubly strong」は、直訳すると「2倍の強さになる」となります。「強いものがさらに強くなる」というニュアンスは示せているでしょう。ただ、「be doubly strong」は好ましい事例にも好ましくない事例にも使用できるため、英語から日本語への翻訳の際は「鬼に金棒」を使うか「虎に翼」を使うかの判断が必要となるでしょう。

1.If Mr. Smith were to join our organization, we would be doubly strong.
スミス氏が我々の組織に加われば、鬼に金棒なのだがなぁ。

2.The only weakness of our team is the lack of power. If Johnson were to join our team, he would make up for the lack of power and our team would be doubly strong.
私たちのチームの唯一の弱点はパワー不足だ。もしジョンソン選手がチームに仲間入りしてくれれば、鬼に金棒なのだが。

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最強の組み合わせ!「鬼に金棒」

今回の記事では、「鬼に金棒」について解説しました。「鬼に金棒」は「それを手に入れることによって、強いものがますます強くなること」を意味することわざです。もともと強いものに、さらに強力な味方や武器が加わる際に使用します。鬼が金属の棒を持って暴れたら、手が付けられないでしょう。まさに最強の組み合わせですね!

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国語言葉の意味

強い鬼と金棒のタッグ!「鬼に金棒」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

この「鬼に金棒」という言葉、調べると色々面白いんですよ。語源も意外ですし類義語もたくさんあります。今回はその「鬼に金棒」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「鬼に金棒」の意味や語源は?

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「鬼に金棒」という言葉、聞いたことがないという人はいないでしょう。使ったことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、実はとても奥の深い言葉なのです。まずは、その「鬼に金棒」の意味と語源について見ていきます。

「鬼に金棒」の意味は「強いものがますます強くなる」

最初に、「鬼に金棒」の辞書での意味を確認していきましょう。「鬼に金棒」は国語辞典には次のような意味が掲載されています。

それを手に入れることによって、強いものがますます強くなることのたとえ。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆鬼に金棒(かなぼう)」

「鬼に金棒(おににかなぼう)」は「それを手に入れることによって、強いものがますます強くなること」を意味することわざです。ただでさえ強い鬼が金棒(金属でできた棒)を武器に戦ったら、さらに強くて手が付けられなくなりますよね。もともと強いものに、さらに強力な味方や武器が加わる際に使用します。

なお、「金棒」は「鉄杖(てつじょう)」や「金梃子(かなてこ)」といった言葉で言い換えが可能です。よって「鬼に鉄杖」や「鬼に金梃子」という言い方をされることもあります。意味は「鬼に金棒」と全く同じです。

「鬼に金棒」の語源は“かるた”!

この「鬼に金棒」が広く使われるようになったのは江戸時代中期のこと。江戸時代中期に、京都や大坂、江戸では「いろはがるた」とよばれるかるたが作られ人々が遊ぶようになっていました。そして、この「鬼に金棒」は江戸版の「いろはがるた」の「お」の札に登場します

かるたとして人々が遊ぶことで、多くの人に意味が共有されるようになっていったのでしょう。江戸時代のかるたが由来というのは、少し意外でしたね。

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