この記事では「コロンブスの卵」について解説する。

端的に言えばコロンブスの卵の意味は「卵を立てること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語塾講師で、ヨーロッパの文化に詳しいライターのトミー先生を呼んです。一緒に「コロンブスの卵」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トミー先生

元国語塾講師で、通信教育で英語と国語の「赤ペン先生」などもやっていた。実はドイツ語が得意で、外国語を学ぶことにより国語を理解するのに役立つと実感している。今回は「コロンブスの卵」について、語源と意味と使い方を自分でしっかり理解できるよう、わかりやすく解説していく。

「コロンブスの卵」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「コロンブスの卵(たまご)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。アメリカ大陸を「発見」したとされるコロンブスを知らない人はいないでしょう。イタリア人のクリストファー・コロンブスはスペインの船に乗り、ヨーロッパの東にあるインドを目指して西回りの航路をとったのですね。地球は丸いから西回りでも行けるはずだと信じたのですよ。

しかし、本当に地球が丸いかどうかわからない時代のことですから、どこまで行っても果てしない海が続くばかりで、船員たちは全員不安になり、このまま航海を続けることに大反対。コロンブスはそれでもなお船を進め、ついに「西インド諸島」にたどり着いたのでしたね。もちろんそこはインドではなくアメリカだったのですが。では、卵がコロンブスとどんな関係にあるのか、考えてみることにしましょう。

「コロンブスの卵」の意味は?

コロンブスの卵」には、次のような意味があります。手元にある国語辞典には次のように書かれていますね。

《大陸発見はだれにでもできると評されたコロンブスが、卵を立てることを試みさせ、一人もできなかった後に卵の尻をつぶして立てて見せたという逸話から》だれでもできそうなことでも、最初に行うことはむずかしいということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「コロンブスの卵」

「地球は丸い」という情報さえ確実なものだったら、インドに行くのにアフリカ最南端の喜望峰を回らず、西回りで行けるはずだ、と誰でも考えつくでしょう。ただ、そんな危険な航海を誰もやってみようとすることはなかったのですね。当時地球はテーブルのように平らなものだと考えられていたので、西に向かえば落ちてしまうということになりますから。

しかしあくまでも地球は丸いと信じたコロンブスは、1492年10月12日に、カリブ海に浮かぶバハマ諸島の一つにたどり着き、ここがインドだと誤解したので、今でもこの地域の島々を西インド諸島と呼んでいるのですよ。現在のような図面がきちんとできていさえすれば、たしかに誰でもここにたどり着けますね。

「コロンブスの卵」の語源は?

次に「コロンブスの卵」の語源を確認しておきましょう。ジロラモ・ベンゾーニが1565年に刊行した『新世界史』に「コロンブスの卵」の逸話が収録されているのですよ。ヨーロッパに戻ってきたコロンブスに対して、アメリカ発見は西回りの航路をとりさえすれば誰にでもできたことだと批判する人たちがいたのですね。それに対してコロンブスは、卵を立ててみろと言ったのですが、もちろん誰にもできませんでした。コロンブスは卵の底を割って立てたということですね。しかしこれは、どうやら作り話のようですよ。

これよりずっと以前、1420年に「ブルネレスキの卵」の話があるのですから。ルネサンス時代の建築家ブルネレスキは、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオレ教会建設のコンペの際に、大理石の上に卵を立ててみろと言って誰もできなかったのでした。そのとき彼はまさに「コロンブスの卵」と同じことをやって見せて、このコンペに勝ったというのですね。

\次のページで「「コロンブスの卵」の使い方・例文」を解説!/

「コロンブスの卵」の使い方・例文

コロンブスの卵」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

先日ある経営コンサルティングの主催するセミナーで、まったく新しい発想のノウハウを習ったが、それはまさにコロンブスの卵だった。

コロンブスの卵の話は、日本でも昔から児童ブックなどで紹介されていて、教育に用いられるキーワードになっています。

商売を繁盛させるためには、同じことばかりやっていてはダメで、コロンブスの卵を見習うべきだ。

コロンブスの卵」が作り話だとしても、日本でもよく知られている話ですね。逸話というのは確かに面白い話なのですが、そこから何か新しい発想や教訓などが得られるようになっているのですよ。ですから「コロンブスの卵」というのは、コロンブスが卵を立ててみせたという話から、何事につけても新しい着想を考え出すことが大切だという教訓を読み取らせるものになっていますね。

「コロンブスの卵」の類義語は?違いは?

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コロンブスの卵」の類義語として、「発想の転換」を紹介してみましょう。この用語は「コロンブスの卵」とは違って逸話がもとになっているのではありませんが、それまで誰にもできなかったことを成し遂げるためのきっかけになるという意味では、共通していますね。

「発想の転換」

発想の転換」は、文字通り発想を変えることです。何かを企画するとき、われわれはいつもあるルールに基づいて作業を進めますが、これまでの経験ではどうしてもうまくいかないとき、「発想の転換」をする必要があるのですね。「コロンブスの卵」のようなたとえ話ではなく、直接的な表現になっていますね。

\次のページで「「コロンブスの卵」の対義語は?」を解説!/

飲食店を開業するにあたって、これまでのメニューではなく、お客様の立場に立って発想の転換をする必要があります。

あなたは、研究開発を担当しているのですから、発想の転換についてじっくり考える時間も必要ですよ。

「コロンブスの卵」の対義語は?

発想の転換」を意味する「コロンブスの卵」の対義語として、「マンネリ」というのはどうでしょうか。

「マンネリ」

マンネリ」は、「コロンブスの卵」と同じように、mannerismという英語からきていますから、英語の発音通りに「マンネリズム」ということもありますね。型にはまった手法にこだわって、独創性がないことを言いますから、まさに「コロンブスの卵」の対義語として適切ですね。動詞としての使い方としては、「マンネリ化する」というのもありますね。

そろそろマンネリを脱しないことには、顧客がこの店舗から離れてしまうかもしれない。

最初は新しい取り組みだったが、それはもうマンネリ化してしまっている。

「コロンブスの卵」の英訳は?

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コロンブスの卵」の英語訳は、Columbus' eggということになりますが、英語訳というよりはもともと英語だったのですから、「コロンブスの卵」という日本語の表現は外来語ですね。また、新しい発想という意味の「コロンブスの卵」と同じように使われている英語には、lateral thinkingがありますね。

「Columbus' egg」

Columbus' eggは、日本語の「コロンブスの卵」と同じように、そのままで使うことができますよ。

\次のページで「「lateral thinking」」を解説!/

His idea ist new just like Columbus' egg.
彼のアイデアはまったく「コロンブスの卵」のように新しい。

「lateral thinking」

lateral thinkingをそのまま日本語に訳すと、「水平思考」という意味になります。欧米の論理の展開において、思考は垂直なものというイメージがありますから、それを水平にするというのはまさに発想の転換ということですね。

Lateral thinking ist a way of solving a problem by thinking in a original way.
水平思考というのは、オリジナルな方法で考えることによって問題を解決する方法のことである。

「コロンブスの卵」を使いこなそう

この記事では「コロンブスの卵」の意味・使い方・類語などを説明しました。「コロンブスはアメリカ大陸を発見した」という文を、トミー先生が中学生のとき英語の授業で習いましたが、コロンブス自身はインドにたどり着いたと信じていたそうですね。新しい発想をするというのはなかなか難しいですが、これを機会に「発想の転換」をいろいろ試みてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「コロンブスの卵」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「コロンブスの卵」について解説する。

端的に言えばコロンブスの卵の意味は「卵を立てること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語塾講師で、ヨーロッパの文化に詳しいライターのトミー先生を呼んです。一緒に「コロンブスの卵」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トミー先生

元国語塾講師で、通信教育で英語と国語の「赤ペン先生」などもやっていた。実はドイツ語が得意で、外国語を学ぶことにより国語を理解するのに役立つと実感している。今回は「コロンブスの卵」について、語源と意味と使い方を自分でしっかり理解できるよう、わかりやすく解説していく。

「コロンブスの卵」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「コロンブスの卵(たまご)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。アメリカ大陸を「発見」したとされるコロンブスを知らない人はいないでしょう。イタリア人のクリストファー・コロンブスはスペインの船に乗り、ヨーロッパの東にあるインドを目指して西回りの航路をとったのですね。地球は丸いから西回りでも行けるはずだと信じたのですよ。

しかし、本当に地球が丸いかどうかわからない時代のことですから、どこまで行っても果てしない海が続くばかりで、船員たちは全員不安になり、このまま航海を続けることに大反対。コロンブスはそれでもなお船を進め、ついに「西インド諸島」にたどり着いたのでしたね。もちろんそこはインドではなくアメリカだったのですが。では、卵がコロンブスとどんな関係にあるのか、考えてみることにしましょう。

「コロンブスの卵」の意味は?

コロンブスの卵」には、次のような意味があります。手元にある国語辞典には次のように書かれていますね。

《大陸発見はだれにでもできると評されたコロンブスが、卵を立てることを試みさせ、一人もできなかった後に卵の尻をつぶして立てて見せたという逸話から》だれでもできそうなことでも、最初に行うことはむずかしいということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「コロンブスの卵」

「地球は丸い」という情報さえ確実なものだったら、インドに行くのにアフリカ最南端の喜望峰を回らず、西回りで行けるはずだ、と誰でも考えつくでしょう。ただ、そんな危険な航海を誰もやってみようとすることはなかったのですね。当時地球はテーブルのように平らなものだと考えられていたので、西に向かえば落ちてしまうということになりますから。

しかしあくまでも地球は丸いと信じたコロンブスは、1492年10月12日に、カリブ海に浮かぶバハマ諸島の一つにたどり着き、ここがインドだと誤解したので、今でもこの地域の島々を西インド諸島と呼んでいるのですよ。現在のような図面がきちんとできていさえすれば、たしかに誰でもここにたどり着けますね。

「コロンブスの卵」の語源は?

次に「コロンブスの卵」の語源を確認しておきましょう。ジロラモ・ベンゾーニが1565年に刊行した『新世界史』に「コロンブスの卵」の逸話が収録されているのですよ。ヨーロッパに戻ってきたコロンブスに対して、アメリカ発見は西回りの航路をとりさえすれば誰にでもできたことだと批判する人たちがいたのですね。それに対してコロンブスは、卵を立ててみろと言ったのですが、もちろん誰にもできませんでした。コロンブスは卵の底を割って立てたということですね。しかしこれは、どうやら作り話のようですよ。

これよりずっと以前、1420年に「ブルネレスキの卵」の話があるのですから。ルネサンス時代の建築家ブルネレスキは、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオレ教会建設のコンペの際に、大理石の上に卵を立ててみろと言って誰もできなかったのでした。そのとき彼はまさに「コロンブスの卵」と同じことをやって見せて、このコンペに勝ったというのですね。

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