この記事では「冠婚葬祭」について解説する。

端的に言えば冠婚葬祭の意味は「元服・婚礼・死・祖先に関わる儀式や行事」ですが、お祝いや祭礼に関わる幅広い意味やニュアンスが含まれている。きちんと理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「冠婚葬祭」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「冠婚葬祭」の意味や語源・使い方まとめ

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早速、「冠婚葬祭」の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「冠婚葬祭」の意味は?

冠婚葬祭」には、次のような意味があります。

元服・婚礼・葬儀・祖先の祭祀のこと。古来最も重要とされてきた四つの大きな儀式。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「冠婚葬祭」

結婚式葬式のイメージがありますが、元服・婚礼・葬儀・祖先に関わる儀式全般を指す言葉です。たとえば、婚礼に関わる儀式として、結婚式だけでなく結納お見合いも含まれています。

「冠婚葬祭」の由来は?

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冠・婚・葬・祭のすべての文字に、それぞれの儀式の意味があります。一文字ずつ確認しましょう。

」は、主に元服にまつわる儀式を指しています。現在は元服という言葉が使われることはありませんが、現在でいう成人式のことです。成人式だけでなく、人生の節目にあたる儀式・行事すべてが当てはまります。お宮参り、初節句、七五三、入学、就学、定年退職、そして喜寿など長寿祝いが「冠」にあたるものです。

」は、主に婚礼にまつわる儀式を指しています。結婚式と披露宴、というイメージがありますが、より多くの儀式や行事を指す文字です。前述の結納やお見合い以外にも、縁談や婚姻届の提出も、「婚」にまつわる儀式といえます。

」は人の死に関わる儀式全般を指す文字です。こちらは葬儀通夜のイメージがありますが、それ以外の儀式も「葬」に含まれます。お葬式に限らず、死を見届ける臨終や、告別式、死後に行われる法事法要もすべて「葬」にあたる儀式です。

」は祖先に関わる儀式を指しています。「祭」は「祀」に通じていて、祖先を祀る上で親族同士が交流を深める、という意味も込められているのです。そのため、現在でいう法事、お盆、正月、七夕、節分、お彼岸、お中元、お歳暮など、1年の節目にあたる行事の多くが含まれます。

こうした、生活に関わる行事を総称した言葉が、「冠婚葬祭」です。

\次のページで「「冠婚葬祭」の使い方・例文」を解説!/

「冠婚葬祭」の使い方・例文

冠婚葬祭は生活や社会の中でも頻出し、見かける機会の多い四字熟語のひとつです。

こちらは冠婚葬祭にも着用していただけるスーツです。

兄は仕事が忙しく、会えるのは冠婚葬祭のときくらいだ。

「冠婚葬祭」の類義語は?違いは?

生活の多くに関わる儀式を総称した言葉として、「冠婚葬祭」はかなり一般的な言葉ですが、他にも似たような意味の言葉があります。

「慶弔」

慶弔は「けいちょう」と読みます。「慶」は結婚や出産など喜ぶべきことを、「弔」は死に関わる悲しむべきことを指す文字です。

祝い事ととむらい。結婚・出産などのよろこび事と葬式。 「 -電報」 「 -用の礼服」

出典:大辞林 第三版(三省堂)「慶弔」

どちらかといえば、冠婚葬祭よりもフォーマルな印象の言葉といえます。また、よりはっきりと「婚礼」に関わる行事と「葬儀」に関わる行事であることが伝わる言葉です。就業規則などの書類でも使用されることがあります。

「祭祀」

祭祀は「さいし」と読みます。元々は神道で使われていた言葉ですが、祖先に関わる行事を指す言葉として一般的です。

神々や祖先などをまつること。祭典。祭儀。まつり。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「祭祀」

こちらも慶弔と同様に、冠婚葬祭よりフォーマルな印象を与える言葉です。

冠婚葬祭のひとつ「元服」はどんな儀式?

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冠婚葬祭は現在でも使用され、馴染みの深い言葉といえますが、「冠」に当たる「元服」という儀式は、現在では行われていません成人式とどう違うのでしょうか。

\次のページで「「元服」とは?」を解説!/

「元服」とは?

元服とは、奈良時代以降の日本で伝統的に行われてきた、成人したことを示すための儀式です。厳密には男性が成人したことを示すための儀式で、女性の場合は「裳着(もぎ)」という別の儀式がありました。

なぜ冠婚葬祭の「冠」が元服を示すかというと、元服の儀式におけるもっとも重要な意義が、冠を被ることだったからです。「冠位十二階」で代表されるように、かつての日本では冠がその人の地位を示していました。冠を被ってその地位を明白にし、社会の一翼を担うという意味が込められていたのです。

もうひとつ、元服では成人した男性に「諱(いみな)」が与えられます。諱はいわゆるファーストネームですが、当時の日本では軽々しく口外してはいけない名前でした。主君の名前の一部を諱に使うことも多く、主君とのつながりを示す大切な名前だったのです。現在、子どもに名前をつける際に親の名前の一部を使うのは、元服の名残だといわれています。

「元服」と「成人式」の違い

よく、元服は現在でいう成人式だといわれますが、実際には違う部分があります。大きく違うのは、元服の年齢が定まっていないところです。

現在の日本では、成人式はその年に20歳になる人を対象にした式典として行われています。元服では、多くの場合において10代の男性が対象になりました。それにはいくつか理由があるのです。

まず、昔の日本の平均寿命が現在よりもずっと短かったことが挙げられます。奈良時代では平均寿命が24歳と、今の大学生くらいの年齢が平均寿命だったのです。これは、医療技術の未熟さだけでなく、天候不順による不作の影響も大きかったとされています。元服が定着し始めた室町時代には不作に戦乱が重なり、平均寿命は15歳にまで落ち込みました。それだけ、若くして命を落とす人が多かったのです。

戦乱が続いたことは、元服の年齢が定まらない理由にもつながっています。元服を迎えないと主君のあとを継ぐことができないので、主君が戦死したら跡継ぎに早く元服させる必要があったのです。

また、元服した際に与えられる諱には主君との強いつながりが現われるため、政略的な元服が行われることも珍しくありませんでした。こうした事情も、元服の年齢が定まらない一因となったのです。

そのため、元服を迎える年齢には幅広いばらつきがあります。織田信長は13歳、徳川家康は15歳で元服を迎えましたが、徳川家康の息子である義直は7歳で元服を迎えました。

ここまでご紹介した元服にまつわる歴史でも明らかなように、もともと元服は武家社会の中でも上流階級でのみ行われた神聖な儀式でした。元服という儀式が定着し始めた頃は、武家や公家でない人間が元服という儀式を行う必要がなかったのです。

室町時代以降、元服は徐々に一般人の間にも浸透していきます。あわせて、元服の在り方も簡略化されていきました。元々は髪を結い、烏帽子を被せる厳粛な儀式でしたが、やがて月代(さかやき)と呼ばれる髪型を作る程度の内容に変わっていったのです。

「冠婚葬祭」を使いこなそう

今回、この記事では「冠婚葬祭」について、その意味や由来、使い方について説明しました。

日常生活に密着した言葉といえる「冠婚葬祭」は、様々なシーンで登場します。小説やエッセイなどの文章で普通に使われるのはもちろん、社会人のマナーとしても「冠婚葬祭」に関する知識が必要です。

「冠婚葬祭」という言葉だけでなく、この記事でご紹介した儀式についても覚えておくといいでしょう。

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国語言葉の意味

「冠婚葬祭」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「冠婚葬祭」について解説する。

端的に言えば冠婚葬祭の意味は「元服・婚礼・死・祖先に関わる儀式や行事」ですが、お祝いや祭礼に関わる幅広い意味やニュアンスが含まれている。きちんと理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「冠婚葬祭」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「冠婚葬祭」の意味や語源・使い方まとめ

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早速、「冠婚葬祭」の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「冠婚葬祭」の意味は?

冠婚葬祭」には、次のような意味があります。

元服・婚礼・葬儀・祖先の祭祀のこと。古来最も重要とされてきた四つの大きな儀式。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「冠婚葬祭」

結婚式葬式のイメージがありますが、元服・婚礼・葬儀・祖先に関わる儀式全般を指す言葉です。たとえば、婚礼に関わる儀式として、結婚式だけでなく結納お見合いも含まれています。

「冠婚葬祭」の由来は?

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冠・婚・葬・祭のすべての文字に、それぞれの儀式の意味があります。一文字ずつ確認しましょう。

」は、主に元服にまつわる儀式を指しています。現在は元服という言葉が使われることはありませんが、現在でいう成人式のことです。成人式だけでなく、人生の節目にあたる儀式・行事すべてが当てはまります。お宮参り、初節句、七五三、入学、就学、定年退職、そして喜寿など長寿祝いが「冠」にあたるものです。

」は、主に婚礼にまつわる儀式を指しています。結婚式と披露宴、というイメージがありますが、より多くの儀式や行事を指す文字です。前述の結納やお見合い以外にも、縁談や婚姻届の提出も、「婚」にまつわる儀式といえます。

」は人の死に関わる儀式全般を指す文字です。こちらは葬儀通夜のイメージがありますが、それ以外の儀式も「葬」に含まれます。お葬式に限らず、死を見届ける臨終や、告別式、死後に行われる法事法要もすべて「葬」にあたる儀式です。

」は祖先に関わる儀式を指しています。「祭」は「祀」に通じていて、祖先を祀る上で親族同士が交流を深める、という意味も込められているのです。そのため、現在でいう法事、お盆、正月、七夕、節分、お彼岸、お中元、お歳暮など、1年の節目にあたる行事の多くが含まれます。

こうした、生活に関わる行事を総称した言葉が、「冠婚葬祭」です。

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