働く女性「職業婦人」が就いた職種は?仕事内容や現代への影響を元大学教員がわかりやすく解説
「職業婦人」の職業5:タイピスト
By Mohylek – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
オフィスワークに関連する「職業婦人」の代表がタイピストです。タイピストは文字通りタイプライターで文字を打つ仕事。高度なパソコンスキルを持っている女性と言えるでしょう。
タイピストとして事務員になる「職業婦人」が増加
昭和初期の日本は、経済が発展するにつれてオフィスが増加。それに伴い事務員のニーズが高まります。オフィスの雑用をする事務員とは別に雇用されたのがタイピスト。タイプライターを打てる女性は、一般的な事務員よりもやや格上に位置づけられました。
タイピストになるためには、専門の養成学校でトレーニングを受けます。今でいう職業訓練校みたいな場所。そこを卒業すると企業に就職、晴れてタイピストとなります。タイピストのニーズは高く、就職には困らなかったようです。
高度なスキルと知性が求められたタイピスト
タイピストは文字を打つだけではなく、原稿を校正する能力も求められました。もとになる原稿は手書きや口頭であるため、分かりにくい、つじつまが合わないなどの問題が発生します。それを見極めながら仕上げることもタイピストの大事な仕事でした。
さらに欧米の資本が流入する日本では、翻訳原稿をタイプライターで打つこともしばしば。そんなときタイピストは、翻訳ミスを見つけて確認することも求められました。知性と教養も、タイピストとして必要とされたのです。
「職業婦人」は昭和初期のモダンな女性の働く姿
「職業婦人」は、自営業や奉公ではなく、契約による正規雇用された女性たち。女性会社員の先駆けとも言えよう存在でした。現代には「職業婦人」に関連する仕事が意外と多く残っているものです。エレベーターガールやバスガールは「レトロ」な職業として注目されますが、昭和初は流行の最先端。デパートに行く機会があったら、昭和初期の客になった気分で「職業婦人」に由来する仕事を見てみましょう。きっと、現代社会がより生き生きとした空間に見えてくるはずです。