今回は「肝に銘じる」という言葉について見ていきます。この言葉はきっと多くの人が聞いたことがあるでしょう。ただ、漢字については間違いが多いから注意が必要です。間違いを防ぐためにも、意味をしっかり理解する必要があります。

ずばり言えば、「肝に銘じる」は「心にしっかりと刻みつける」という意味です。この記事で「肝」と「銘じる」の意味もしっかり確認していきましょう。

今回は、その「肝に銘じる」について、意味や類語などを大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「肝に銘じる」の意味と語源は?

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「肝に銘じる(きもにめいじる)」という言葉は、多くの人が一度は聞いたことがあり、そして使ったこともあるのではないでしょうか。ただ、しっかり意味を把握していないと、手書きの時に漢字を間違えてしまいます。そこで、「肝に銘じる」の意味と語源について、辞書を参考にしつつ最初に確認していきましょう。

「肝に銘じる」の意味は「心に深く刻みつける」

国語辞典には、「肝に銘じる」の意味は次のように掲載されています。

心にしっかりと刻みつける。肝に銘ずる。

「師の戒めを―」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆肝に(めい)・じる」

「肝に銘じる」は「心に深く刻み込み、忘れないようにする」という意味の慣用句です。「肝」は「肝臓」を表す時に使われることが多いですが、ここでは「心」という意味を表します。そして「銘じる」は、本来は石や金などに文字を刻み込むことを指しました。2つを合わせて「心に刻み込む」という意味で「肝に銘じる」が使用されているのです。よって、「肝に命じる」は誤りですので注意しましょう。

「肝に銘ずる」という言い方もありますが、意味に違いはありません。

「銘肝」が語源?

「肝に銘じる」の語源はインターネット上には様々な説が載っていますが、はっきりとしたことは分かっていません。ただ、古代に日本から伝わってきた漢語(古代中国から入ってきた漢字の言葉)に、「銘肝(めいかん)」という言葉があります。この言葉を書き下し、「きもにめいず」と読んだことが、日本語における「肝に銘じる」の歴史のスタートであることは、間違いありません。

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「肝に銘じる」の使い方を例文とともに解説!

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続いて、「肝に銘じる」の使い方を、例文を参照しつつ確認していきましょう。「肝に銘じる」は自分について話す時も、相手について話す時も使うことができます。また、「肝に銘じておく」「肝に銘じて○○する」という使い方をすることも多いです。確認していきましょう。

1.決勝戦での敗戦はとても悔しい。この悔しさを肝に銘じて来年リベンジしよう。
2.愛する人にどんな方法を使っても会うことができない辛さがわかっただろう。この辛さを肝に銘じておけ。
3.一瞬の油断が事故につながることを肝に銘じて運転しようと思う。

例文1では、「この悔しさを心に刻み絶対に忘れないようにして、来年リベンジしよう」という意味で「肝に銘じる」が使用されており、例文2では「この辛さを心に刻み込み一生忘れないようにしろ」という意味で「肝に銘じる」が使用されています。「~さを肝に銘じる」という形で使用される場合、「~さ」に当たる部分には、「嬉しさ」「楽しさ」といった明るいニュアンスの言葉ではなく、「悲しさ」「辛さ」「悔しさ」などといったマイナスのニュアンスの言葉が入ることが多いです。

例文3では、「肝に銘じて○○する」という形で使用された場合の例を紹介しました。この場合は、「一瞬の油断が事故につながるということを心に刻み込んだうえで運転しようと思う」という意味になります。

「肝に銘じる」の類義語は?

「肝に銘じる」の類義語は3つあります。「胸に刻む」「心に刻む」「骨に刻む」の3つですね。この3つはとても似た言葉ですが、意味も実は同じです。よって3つまとめて解説していきましょう。

「胸に刻む」「心に刻む」「骨に刻む」深く心にとどめて忘れないようにする

「胸に刻む」「心に刻む」「骨に刻む」は、「深く心にとどめて忘れないようにする」という意味の慣用句です。この3つの言葉の間に、意味やニュアンスの違い、意味の強さの程度の違いはありません。ただ、「胸に刻む」「心に刻む」に比べて、「骨に刻む」の使用頻度は低い印象があります。また、「肝に銘じる」との意味の違いもありません。

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「肝に銘じる」の英語表現は?

次に、「肝に銘じる」の英語表現を確認しましょう。「肝に銘じる」を英語で表した場合、とても近いニュアンスになるのは「take ○○ to heart」です。意味や使い方を例文とともに確認していきましょう。

「take ○○ to heart」

「take ○○ to heart」は「○○を心にとどめる」という意味の表現で、「肝に銘じる」と非常に似たニュアンスを持った言葉です。○○には、肝に銘じる事柄が入るため、正確には「○○を肝に銘じる」という意味になります。場合によって「take to heart ○○」という語順にもなりますが、意味は同じです。

「心にとどめる」という意味の言葉には「keep in mind」などもありますが、「肝に銘じる」に比べると意味が弱く、「絶対に忘れない」というニュアンスを表すことができません。

1.I will take this disappointment to heart and take revenge at next year's tournament.  この悔しさを肝に銘じ、来年の大会にリベンジしよう。
2.He is fighting the enemy taking to heart the grief of his wife's murder妻を殺された悲しみを肝に銘じ、彼は敵と戦っている。

「肝」を使ったその他の慣用句

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「肝に銘じる」は「肝」を「心」という意味で使用した慣用句でした。実は他にも「肝」を使った慣用表現が日本語にはあります。ここではその一部を、「肝」の意味を含めてご紹介しましょう。

「肝が据わる」めったなことでは動揺しない

「肝が据わる(きもがすわる)」は「落ち着いていて、めったなことでは動揺しない」という意味の慣用句です。ここでの「肝」は「物怖じせず臆しない度胸、気力」という意味を表し、「据わる」は「どっしりと落ち着いていて、動じない」という意味を表します。「据わる」を「座る」と書いてしまうミスが散見されるので気をつけましょう。

「肝を潰す」びっくり仰天!

「肝を潰す」は「非常に驚く、びっくり仰天する」という意味の慣用句です。ここでの「肝」は「度胸が宿る肝臓」を意味します。肝臓が潰れると、そこにあるはずの度胸もなくなってしまい、動転してしまう…というニュアンスから生まれた言葉だとされていますね。「肝が潰れる」という言い方もありますが、意味は同じです。

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「肝を冷やす」危ない目に遭ってヒヤリとする

「肝を冷やす」は「危ない目に遭ってヒヤリとする」という意味の表現です。ここでの「肝」は「肝臓」を意味し、「肝臓に冷水を注がれたようにゾッとする気持ち」を表すとされています。なお、「気持ちを冷静にする」という意味の「頭を冷やす」と混同してしまう人が散見されるので、気をつけましょう。

あなたが「肝に銘じて」いることは何ですか?

今回は「肝に銘じる」について解説しました。「肝に銘じる」は「心に深く刻み込み、忘れないようにする」という意味の慣用句です。何か絶対に忘れてはいけないことがある場合に使用します。実は私も「肝に銘じ」ていることがいくつかありますよ。内容は秘密ですが。皆さんは何か、「肝に銘じ」ていることはありますか?

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国語言葉の意味

漢字の間違いに注意!「肝に銘じる」の意味や類語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

今回は「肝に銘じる」という言葉について見ていきます。この言葉はきっと多くの人が聞いたことがあるでしょう。ただ、漢字については間違いが多いから注意が必要です。間違いを防ぐためにも、意味をしっかり理解する必要があります。

ずばり言えば、「肝に銘じる」は「心にしっかりと刻みつける」という意味です。この記事で「肝」と「銘じる」の意味もしっかり確認していきましょう。

今回は、その「肝に銘じる」について、意味や類語などを大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「肝に銘じる」の意味と語源は?

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「肝に銘じる(きもにめいじる)」という言葉は、多くの人が一度は聞いたことがあり、そして使ったこともあるのではないでしょうか。ただ、しっかり意味を把握していないと、手書きの時に漢字を間違えてしまいます。そこで、「肝に銘じる」の意味と語源について、辞書を参考にしつつ最初に確認していきましょう。

「肝に銘じる」の意味は「心に深く刻みつける」

国語辞典には、「肝に銘じる」の意味は次のように掲載されています。

心にしっかりと刻みつける。肝に銘ずる。

「師の戒めを―」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆肝に(めい)・じる」

「肝に銘じる」は「心に深く刻み込み、忘れないようにする」という意味の慣用句です。「肝」は「肝臓」を表す時に使われることが多いですが、ここでは「心」という意味を表します。そして「銘じる」は、本来は石や金などに文字を刻み込むことを指しました。2つを合わせて「心に刻み込む」という意味で「肝に銘じる」が使用されているのです。よって、「肝に命じる」は誤りですので注意しましょう。

「肝に銘ずる」という言い方もありますが、意味に違いはありません。

「銘肝」が語源?

「肝に銘じる」の語源はインターネット上には様々な説が載っていますが、はっきりとしたことは分かっていません。ただ、古代に日本から伝わってきた漢語(古代中国から入ってきた漢字の言葉)に、「銘肝(めいかん)」という言葉があります。この言葉を書き下し、「きもにめいず」と読んだことが、日本語における「肝に銘じる」の歴史のスタートであることは、間違いありません。

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