化学

天才科学者「フリッツ・ハーバー」はどんな人物?現役講師がわかりやすく解説

なぜ「アンモニアの合成」が重要なのか?

アンモニアといえば高校化学でも初めの方に登場する、比較的なじみ深い物質ですよね。なぜこのアンモニアが重要視されるのかといえば、それはこの物質が作物の肥料として必要になるためです。

ハーバー・ボッシュ法が発明されるまで、アンモニアは主に硝石、つまり鉱物を原料にしてつくられていました。鉱山から掘り出す硝石の量には限界があります。いずれ硝石が底を尽きれば、肥料がつくれなくなり、人口を支える分の作物ができず、飢餓が訪れると考えられていました。

その反面ハーバー・ボッシュ法は、空気中にいくらでもある窒素と、人工的な合成も可能で、発酵によっても得られるメタンからできる水素を使います。硝石が尽きる心配がなくなり、増え続ける人口を支えるための肥料の原料が大量生産できるようになったのです。

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人口を支える作物を作るために必要な肥料の原料になる一方、アンモニアは火薬の原料としても使われる。つまり、戦時中には弾薬や爆薬をつくるために必要とされるんだ。

ドイツはこの技術があったおかげで、第一次世界大戦中の弾薬製造に困らなかった。肥料と火薬、命を支えるものと奪うものの材料になるのがアンモニアなんだな。

フリッツ・ハーバーの栄光と転落

フリッツ・ハーバーの人生は、一言で表すには難しい奇妙なものです。

「肥料にも火薬にも使われるアンモニアの合成方法の確立」、「アンモニアの合成と毒ガスの開発という、異なる方向性の研究」、「ユダヤ家系に生まれながらも改宗し、最後はユダヤ人に味方して離職」、「祖国に尽くしながらも、最後には祖国に裏切られた科学者」…。

運命に翻弄された生涯だったように感じます。それでも、彼がその折々に自身の持つ化学の知識を十分に発揮した天才科学者であったことは間違いないでしょう。

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yu_onozuka