ポイントは「ごくわずか」を意味する「一縷」ですが、具体的に何を指すのか、わからないまま使っている人も多い。今回は「一縷の望み」が持つ可能性がどのくらいなのか、また正確な意味や使い方・類義語なども一緒に解説する。
大学で日本語と日本文学について学び、塾講師時代には国語の指導にも力を入れていたというカワナミを呼んです。さっそく見ていこう。
ライター/カワナミ
大学では日本語と日本文学について学び、塾講師時代には国語の指導に力を入れていた。日本語が大好き。出産後しばらく育児に専念していたが、やはり言葉を扱う仕事をしたいと思い、webライターに「一縷の望み」を託している。
「一縷の望み」の可能性はごくわずか?
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「一縷の望み」の可能性は本当に「ごくわずか」です。絶望的な状況で、その望みが叶うのは奇跡とも言える、そんなわずかな可能性を「一縷の望み」といいます。
想像してください。例えばサッカーの試合で同点のまま試合が終わり、勝敗はPK戦で決めるという場面。相手は自分達よりも遥かに強いと言われていたのに、どうにかこぎつけた同点です。もしかしたらダメかもしれない。けれど、わずかでも希望があるなら繋いでほしい。祈るような気持ちで、選手に「一縷の望み」を託します。
「一縷の望み」は、可能性は限りなくないに近いけれど、その先にあるはずの望みへとどうにか繋げてほしいという、希望的観測が含まれた言葉なのです。
「一縷の望み」の意味や類語・使い方まとめ
「一縷の望み」の正しい意味や使い方を見ていきましょう。
「一縷の望み」の意味は「わずかな希望」
「一縷の望み」は「いちるののぞみ」と読みます。辞書を使って正確な意味を押さえましょう。「一縷の望み」では辞書に載っていないため、ここでは「一縷」と「望み」に分けて単語ごとに調べました。
いち‐る【一×縷】
1.1本の糸。また、そのように細いもの。
「船は―の黒烟を波上に残し」〈鉄腸・南洋の大波瀾〉
2.ごくわずかであること。ひとすじ。「一縷の望みを残す」
出典:デジタル大辞泉(小学館)「一縷」
のぞみ【望み】
1.そうなればよい、そうしたいと思うこと。願い。希望。「望みが大きい」「長年の望みがかなう」
2.望ましい結果を得る可能性。よいほうに進みそうな見込み。「助かる望みはない」「一縷いちるの望みがある」
3.人望。名望。「江湖の望みを一身に集める」
4.ながめ。眺望。
「青波に―は絶えぬ」〈万・一五二〇〉
出典:デジタル大辞泉(小学館)「望み」
「一縷の望み」とは「わずかな希望」という意味です。引用元の例を参考にすると「一縷」は意味2の「ごくわずかであること・ひとすじ」、「望み」は意味2の「望ましい結果を得る可能性・よいほうに進みそうな見込み」がそれぞれ当てはまります。
「一縷」には「一本の糸」という意味もあるため、糸のように細く掴みづらいと考えるとわかりやすいでしょう。「一縷」は次の由来の項目を通してさらに詳しく解説します。
「一縷」の由来は漢字の意味
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「一縷」は「ごくわずかであること・ひとすじ」という意味の言葉です。「一」と「縷」それぞれの漢字の意味を組み合わせてできました。「一」には「わずか・ちょっと」という意味、「縷」には「細々としたひとすじ」という意味があります。「縷」は糸へんが使われているため、「糸」と関連する漢字であることが想像できますね。
この二文字を合わせることで、本当に極わずかであり、細い糸のようなひとすじであることが強調されるのです。
「一縷の望み」の使い方・例文
例文を元に「一縷の望み」の使い方を確認しましょう。
1.第一志望校への合格率はわずかだったが、一縷の望みに賭けて全力で挑戦した。
2.福引の一等の温泉旅行を当てるために抽選券をかき集めた。全てはずれて残りはあと一枚。この一枚に一縷の望みを託す。
3.冷蔵庫にデザートがあるのをすっかり忘れていた。一縷の望みを持って確認したが、消費期限は切れていた。
例文1では、もしかしたら入試に合格するかもしれないという「わずかな希望」を「一縷の望み」と表しています。例文2では、当選への「わずかな希望」を託して最後の一回に挑戦するところです。
例文3は、忘れていたデザートがまだ食べられるかもしれないという「わずかな希望」を持っていましたが、残念な結果となりました。このような状況を「一縷の望みが絶たれる」「一縷の望みが潰(つい)える」と表現することもできます。
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