このページでは、「構造タンパク質」について学習していこう。

「構造タンパク質」といわれても、すぐにピンとくるやつは少ないでしょう。これは、タンパク質のもつ機能に着目し、分類したときのいちグループです。多種多様なタンパク質の種類や機能を知ることは、生物の体の機能を理解することにつながるぞ。

今回も、大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

構造タンパク質とは?

私たちの体は半分以上が水分からなりますが、それ以外の成分のうち約20%がタンパク質です。

一口にタンパク質といっても、腕や脚を動かす骨格筋や、内臓、皮ふなどの器官を構成するものや、ホルモンや酵素のように細胞のはたらきを調節するもの、免疫反応の時にはたらく抗体など、じつにさまざまな種類があります。

そんなタンパク質の中でも、体の構造を支える役割をもつタンパク質を「構造タンパク質」とよぶことがあります

構造タンパク質の例

構造タンパク質の例

image by Study-Z編集部

コラーゲン

コラーゲンは構造タンパク質のなかでも、特にイメージしやすいもののひとつでしょう。

テレビやインターネットでも、美肌や関節の痛みに関連してコラーゲンの摂取がすすめられていますよね。じつは、私たちの体内にあるタンパク質の30%ほどはコラーゲンが占めているんです。

image by iStockphoto

私たち人間を含む脊椎動物のもつコラーゲンは真皮軟骨だけでなく、じん帯などにも含まれています。コラーゲンには30近いタイプがあり、各器官によって特定のタイプのコラーゲンが多く存在することが多いようです。

例えば、骨に多く含まれているのは1型コラーゲン。この1型コラーゲンがたくさん集まって繊維状になり、骨の構造を支える弾力性のある素材として機能しています。

3型コラーゲンは真皮や動脈壁に多く含まれるコラーゲンです。こちらは細かな網目状の構造をとり、細胞同士の結合に弾力をもたせています。

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image by iStockphoto

いずれにせよ、コラーゲンは骨や皮膚の構造を支えるのになくてはならないタンパク質。構造タンパク質の代表的な存在といえるでしょう。

ヒトの体内のコラーゲンは加齢によって減少し、さまざまな病気に結びつくことがあります。たとえば、3型コラーゲンが不足するようになると、皮膚や血管が弱くなってしまうのです。美容という点だけでなく、健康維持のためにもコラーゲンは欠かせない物質なんですね。

エラスチン

コラーゲンとともに構造を支える役目を果たしているのがエラスチンとよばれるタンパク質です。エラスチンはコラーゲン繊維の間に入り、形が崩れないよう補強する役割を果たしています。

エラスチンもコラーゲン同様、年齢を経るにしたがって減少する傾向があるのですが、その変化が顕著に表れるのが肌のしわです。エラスチンの減少によって皮膚のコラーゲンが支えられなくなることで、肌の弾力が弱くなったり、しわが増えたりすることがわかっています。

そもそも、真皮におけるエラスチンの存在量は、コラーゲンよりもずっと少ないんです。真皮では約70%がコラーゲンにより成り立っていますが、エラスチンはわずか数%。少しの量の変化が、皮膚の状態に大きく影響します。

身体のなかで特にエラスチンが多く存在しているのが動脈です。心臓から送り出された血液が勢いよく流れる動脈の壁には、血流で破れないくらいの厚みと弾力が必要になります。動脈壁の約50%はエラスチンによって構成されているのです。

やはり加齢によってエラスチンの量が減ると血管に弾力がなくなり、動脈硬化などの疾患に繋がってしまいます。

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ケラチン

コラーゲンやエラスチンとは反対に、硬さを構造維持に生かしているタンパク質もあります。その代表がケラチンです。

細胞は、何種類かの繊維状の物質が複雑に配置されることでその形状を保っています。それぞれの細胞ごとに異なる物質を使い、多様な形状や機能を実現しているんです。

これを細胞骨格といい細胞骨格を維持する繊維状の物質は大きく3つのグループに分けられています。太い管状の繊維である微小管、非常に細いマイクロフィラメント(またはアクチンフィラメント)、そしてその中間くらいの太さになる中間径フィラメントです。

ケラチンは上皮細胞の構造を維持している中間径フィラメントの一種。ケラチンを含んだ細胞が死んで蓄積した部分を私たちは角質とよんでいます。

ケラチンの硬さをもつ角質の層は、私たちの身体を環境変化から防御するバリアのはたらきをしているのです。

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ケラチンたっぷりの上皮組織が変化してできたのが、髪の毛です。ヒト以外の動物で蹄(ひづめ)をもったものもいますが、それらもやはりケラチンが主成分となっています。

ケラチンは硬さが必要な組織を構成する重要なタンパク質なのです。

ヒストン

あまり例は多くありませんが、ヒストンも構造タンパク質として紹介されることがあります。

ヒストンは細胞核の中に存在しているタンパク質です。DNAがヒストンに絡みつき、ヌクレオヒストンという複合体を形成しています。

基本的に、細胞核内では8つのヒストン分子が集まってひとつのかたまりを形成しています。

そして、この1つのかたまりにDNAが2周するよう絡みついて存在しているんです。この構造によってDNAをコンパクトに収納することが可能になっています。

Chromosom.svg
NIH, User:Phrood - http://www.genome.gov/Pages/Hyperion//DIR/VIP/Glossary/Illustration/chromosome.shtml, パブリック・ドメイン, リンクによる

この「ヒストンのひとかたまり+2周するDNA」の構造体をヌクレオソームといいます。DNAが長いほどたくさんのヌクレオソームつながっていることになりますが、これはさらに折りたたまれ、クロマチン(染色質)とよばれる構造体になっているのです。

ヒストンが存在することでヌクレオソームの構造が維持されているということは、「ヒストン=構造タンパク質の一種」と考えることができます。

構造タンパク質不足にならないために

構造タンパク質には体を維持する重要な役割がある、ということがお分かりいただけたかと思います。コラーゲンやエラスチンのところでも言及しましたが、体のタンパク質量は年齢とともに減少しがちです。私たちは日々の食事によって、タンパク質の材料を補給しなくてはいけません。

タンパク質はたくさんのアミノ酸がつながったペプチドで構成されています。私たちが食事でタンパク質を摂取すると、消化管でアミノ酸に分解、さらに吸収することで自身のタンパク質の材料となるのです。

私たちが心がけるべきは栄養バランスの良い食事をとること。糖質や脂質だけでなく、お肉やお魚、豆などのタンパク質を積極的に取るようにしましょう。それをもとにして、新しいタンパク質がつくられるのですから。

代表的な構造タンパク質は覚えておこう!

今回紹介した構造タンパク質はあくまで代表的なものです。ほかにも構造タンパク質にかぞえられるタンパク質は存在します。ほかにどんな構造タンパク質があるのか、探してみるのも面白いでしょう。

イラスト使用元:いらすとや

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タンパク質と生物体の機能理科生物

「構造タンパク質」とは?具体例を挙げながら現役講師がわかりやすく解説

このページでは、「構造タンパク質」について学習していこう。

「構造タンパク質」といわれても、すぐにピンとくるやつは少ないでしょう。これは、タンパク質のもつ機能に着目し、分類したときのいちグループです。多種多様なタンパク質の種類や機能を知ることは、生物の体の機能を理解することにつながるぞ。

今回も、大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

構造タンパク質とは?

私たちの体は半分以上が水分からなりますが、それ以外の成分のうち約20%がタンパク質です。

一口にタンパク質といっても、腕や脚を動かす骨格筋や、内臓、皮ふなどの器官を構成するものや、ホルモンや酵素のように細胞のはたらきを調節するもの、免疫反応の時にはたらく抗体など、じつにさまざまな種類があります。

そんなタンパク質の中でも、体の構造を支える役割をもつタンパク質を「構造タンパク質」とよぶことがあります

構造タンパク質の例

構造タンパク質の例

image by Study-Z編集部

コラーゲン

コラーゲンは構造タンパク質のなかでも、特にイメージしやすいもののひとつでしょう。

テレビやインターネットでも、美肌や関節の痛みに関連してコラーゲンの摂取がすすめられていますよね。じつは、私たちの体内にあるタンパク質の30%ほどはコラーゲンが占めているんです。

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私たち人間を含む脊椎動物のもつコラーゲンは真皮軟骨だけでなく、じん帯などにも含まれています。コラーゲンには30近いタイプがあり、各器官によって特定のタイプのコラーゲンが多く存在することが多いようです。

例えば、骨に多く含まれているのは1型コラーゲン。この1型コラーゲンがたくさん集まって繊維状になり、骨の構造を支える弾力性のある素材として機能しています。

3型コラーゲンは真皮や動脈壁に多く含まれるコラーゲンです。こちらは細かな網目状の構造をとり、細胞同士の結合に弾力をもたせています。

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