「孤軍奮闘」を使いこなそう
今回の記事では「孤軍奮闘」の意味・使い方・類語などを説明しました。「孤軍奮闘」の類義語を紹介してきましたが、周りに味方がいない中でどうしているのかというところに少し違いがありました。
「孤軍奮闘」は奮闘し頑張っているようすが表現されており、主体的な動きをとっていることがわかります。一方で、「四面楚歌」や「孤立無援」は敵に取り囲まれていたり周りに味方がいないという状況は伝わりますが、だからどういう行動をとっているのかまでは述べられていません。ここが大きな違いですね。
この記事では「孤軍奮闘」について解説する。
端的に言えば孤軍奮闘の意味は「手助けのない中で、一人で頑張ること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「孤軍奮闘」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ヤマトススム
10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。
「孤軍奮闘」には、次のような意味があります。ポジティブなニュアンスがあることをチェックしておきましょう。
1.援軍もなく孤立した中でよく戦うこと。また、だれの援助も受けずに一人で努力すること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
四字熟語「孤軍奮闘」について、詳しく見てみましょう。援軍がない状態というのは、自分一人だけ、もしくは、自分を含む一つのグループだけで戦っているようすです。また、よく戦っているということですが、その結果がどうかではなく、過程としてよくやっているという意味になります。
なお、一人で勝手にやっているというネガティブな表現ではなく、一人でありながらよくやっているというポジティブな意味合いになっていますね。
次に「孤軍奮闘」の語源を確認しておきましょう。前半と後半の二字ずつに分けて語源を確認していきます。
「孤軍」のほうは、孤立した軍隊や軍勢のことです。戦場で陣形を組みながら戦う中で、孤立してしまった軍のことを指しています。陣形については、中国に八陣があるように、日本でも「魚鱗」や「鶴翼」などにアレンジしたものを使っていました。そういった陣形による戦の中で、孤立してしまうこともあるのですね。
「奮闘」は文字通り「奮い立って戦っているようす」のことです。平たく言うと、とにかく頑張っているようすなのですが、「奮」も「闘」も日常とはかけ離れたような強い意味合いの字なので、格別に頑張っているようすが伝わります。
\次のページで「「孤軍奮闘」の使い方・例文」を解説!/
「孤軍奮闘」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。二つの例文で意味を確認していきますよ。
1.国語辞典の編集は知識と教養と膨大な時間を要するが、あなた方は少数で孤軍奮闘している。
2.周りに味方がいない状況で孤軍奮闘したが、今年の騎馬戦は敗北に終わった。
例文については、1.のほうは国語辞典の編集という困難な仕事に対して、少人数で努力を続けているようすを表現しています。本来はもっとたくさんの人数で取り組むべき仕事であるのに、少ない人数でやっているというニュアンスも感じられますね。
2.のほうは、本当の戦ではありませんが、語源に近いようすを表しています。さまざまな陣形を組んで有利に戦おうととするものの、結局周りが敵だらけになってしまったという状況です。
「孤軍奮闘」の類義語の一つめは、「四面楚歌」です。意味は、「敵に囲まれて孤立し、助けがないこと」を表しています。「四面楚歌」のほうは、周りが敵ばかりであるのは「孤軍奮闘」と同じですが、どちらかというと窮地に陥っているイメージです。
語源は、中国の「史記」がもとになっています。楚の項羽が敵の漢の軍勢に四面を取り囲まれたときに、漢の軍勢から楚の歌が聞こえてきたため味方は漢に降伏し本当に周りは敵だけになってしまったと嘆いたことから。
\次のページで「「孤立無援」」を解説!/
もう一つの類義語である「孤立無援」を説明していきます。こちらの意味は、「仲間がおらず、助けてくれるもののないこと」です。
周りに味方がいない状況であることを示していますが、それで今どうしているのかはわかりません。「四面楚歌」は窮地に陥っているイメージでしたが、「孤立無援」は客観的な状況だけを伝える表現と言えるかもしれません。「孤軍奮闘」と比べると、意味としては「孤軍」の部分だけになりますね。
さらに、「孤軍奮闘」の対義語も見ていきますよ。ここでも、二つの表現を紹介します。
「孤軍奮闘」の対義語には、「共存共栄」があります。意味は「敵対することなく、互いに生存し栄えること」です。「共存」とは、「二つ以上のものが敵対しないで、互いに存在したり生存したりすること」を表しています。「共栄」のほうは「ともに栄えること」となっていますよ。
一人で戦うという「孤軍奮闘」に対して、ともに生存し栄えようという意味合いで対義語となっているのが「共存共栄」と言えますね。
もう一つの対義語は、「相互扶助」です。基本的な意味は「互いに助け合い支え合うこと」で、略して「互助」と言われることもありますよ。
「相互」がお互いにという意味で、「扶」が支える、「助」が助けるという意味を表しています。「孤軍奮闘」は「孤軍奮闘する」と名詞に「する」を加えて動詞として使うことができますが、「相互扶助」のほうは名詞としてのみ使うのが一般的です。
「孤軍奮闘」の英訳には、「fight alone」があります。意味は「一人で戦う」です。「孤軍奮闘」という表現と比べると簡素な表現に感じられますが、あえて「一人で」ということで「本来は複数で戦う場面」というニュアンスが含まれますね。「fight unsupported」とすると「助けなく戦う」となり、複数で戦うはずが味方がなく戦うという印象がより強くなります。
また、「put up a solitary struggle」でも英訳として使うことができますよ。直訳すると「一人での戦いを続ける」となり、奮闘中であるようすが伝わる表現ですね。
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今回の記事では「孤軍奮闘」の意味・使い方・類語などを説明しました。「孤軍奮闘」の類義語を紹介してきましたが、周りに味方がいない中でどうしているのかというところに少し違いがありました。
「孤軍奮闘」は奮闘し頑張っているようすが表現されており、主体的な動きをとっていることがわかります。一方で、「四面楚歌」や「孤立無援」は敵に取り囲まれていたり周りに味方がいないという状況は伝わりますが、だからどういう行動をとっているのかまでは述べられていません。ここが大きな違いですね。
今回の記事では「孤軍奮闘」の意味・使い方・類語などを説明しました。「孤軍奮闘」の類義語を紹介してきましたが、周りに味方がいない中でどうしているのかというところに少し違いがありました。
「孤軍奮闘」は奮闘し頑張っているようすが表現されており、主体的な動きをとっていることがわかります。一方で、「四面楚歌」や「孤立無援」は敵に取り囲まれていたり周りに味方がいないという状況は伝わりますが、だからどういう行動をとっているのかまでは述べられていません。ここが大きな違いですね。