今回は「締めのラーメンがなぜ美味しいか」について勉強していこう。

ここでの「締め」とは「お酒を飲んだ後の」と考えるといいでしょう。まだ未成年だというやつは身近な大人に話を聞いてみてもいいでしょう。

意外と知らない体の仕組みを、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.「締めの〇〇」ってなに?

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まずは今回のテーマである「締めのラーメン」について簡単に説明しますね。

1-1.鍋の締めは雑炊?うどん?

中高生にとって「締めの〇〇」といえば、鍋の締めを思い浮かべる人が多いでしょう。うどんや雑炊、ラーメンが一般的ですよね。最近は鍋の種類も豊富になり、チーズリゾットのように洋風の締めも人気があるようです。もちろんこれも美味しいのですが、今回はお酒好きな大人向けのお話になるかもしれません。

1-2.飲み会終わりに締めのラーメン

今回のテーマはお酒を飲んだ後の「締めのラーメン」です。よくドラマなどでも「締めにラーメン行くか!」というようなセリフがありますよね。なぜお酒を飲んだ後はラーメンを食べたくなるのでしょうか。また、ラーメンが美味しく感じられるのでしょうか。今回はその疑問に答えます。

2.アルコール分解のメカニズム

2.アルコール分解のメカニズム

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その理由について説明する前に、アルコールが体内でどう分解されるのかを知っておく必要があるでしょう。生物の授業では各臓器のはたらきについて学びます。まずはそこから見ていきましょう。

\次のページで「2-1.胃・腸による吸収」を解説!/

2-1.胃・腸による吸収

飲んだアルコールは、まず胃で約2割、その後腸で約8割が吸収されるといわれています。吸収されたアルコールは血液に入って肝臓へと進むのです。

急性アルコール中毒ということを聞いたことがあるでしょうか。これは短時間で多量のアルコールを摂取したために血中アルコール濃度が上がってしまうことで起こる中毒症状です。空腹時にお酒を飲むと、直ちに胃から吸収されていくために血中アルコール濃度が上がりやすくなります。最初の乾杯での一気飲みには要注意ですね。

2-2.肝臓での分解

肝臓の機能といえばアルコールの分解でしょう。まず血液によって運ばれてきたアルコールアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解されます。アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素のはたらきで酢酸に分解され、 最終的に残るのは水と二酸化炭素です。これらの過程において、糖分と酸素がエネルギー源として必要になります。

国や地域によってお酒に強いか弱いかの傾向に差があるのを知っていますか。これは二日酔いの原因であるアセトアルデヒドを分解する酵素、アセトアルデヒド脱水素酵素の型の違いによるものです。血液型のように両親から受け継ぐこの型は、お酒への強さに影響しています。アルコール耐性はアレルギーテストのようにパッチ検査ができるので、試してみてもいいですね。

2-3.尿として排出

最終的にアルコールは水と二酸化炭素に分解され、尿や呼気となって排出されます。お酒そのもので水を多量に摂取しているものの、アルコールを摂取した後は水分不足になりがちなのは意外と知られていません。これはアルコールによって代謝が活発になるとともにアルコールが抗利尿ホルモンの分泌を抑えることによって利尿作用がはたらくためです。アルコール分解の過程でも水が使われるため、水分不足になってしまうと分解が進まず、二日酔いの原因になることを覚えておきたいですね。

3.アルコール分解が体に与える影響

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これら分解の過程を踏まえた上で、なぜ締めのラーメンが美味しく感じられるのかを見ていきましょう。

\次のページで「3-1.エネルギー(ブドウ糖)不足」を解説!/

3-1.エネルギー(ブドウ糖)不足

アルコールの分解には糖分と酸素が必要不可欠です。これをエネルギーとし、酵素のはたらきによって分解が進みます。つまりこのとき血液中の糖分(ブドウ糖)を消費することで血糖値が減少してしまうのです。これを元に戻そうと体が判断するため、結果として空腹感が出て「何か食べたい」という気持ちにさせられるということですね。

糖分を多く含むものといえば炭水化物でしょう。ラーメン以外にもおにぎりや雑炊、焼きそばなどを締めとして提供しているお店は少なくありません。いつかもし居酒屋に行く機会があればチェックしてみてくださいね。デザートのメニューのすぐ前に炭水化物のメニューが用意されているはずですよ。

3-2.塩分やアルカリ性を欲する

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人の血液は弱アルカリ性に保たれているのですが、ビールをたくさん飲むことでそのバランスは酸性に傾くことがわかっています。そのため、血糖値同様、元に戻そうとする意識がはたらくことで体はアルカリ性食品を欲するようになるでしょう。ラーメンの麺にはかんすいと呼ばれるアルカリ性の液体(豆腐作りでいうにがり)が必要不可欠です。アルカリ性食品であるラーメンが美味しく感じられるのは、体が求めているものだからこそかもしれませんね。

さらに、ビールにはカリウムが多く含まれています。体内においてカリウムとバランスをとっているのはナトリウムなので、カリウム過多の状況ではナトリウムを摂取することで平衡を保とうとするでしょう。その結果、塩分がほしくなるのです。ラーメンには十分な塩分が含まれていますよね。

3-3.二日酔い

忘れてはいけないのは二日酔いです。分解の過程で生成するアセトアルデヒドが二日酔いの原因としてよく知られていますね。さらに水分不足、血糖値低下、血中pHやナトリウム・カリウムのバランス異常によっても様々な症状が出ます。飲酒はほどほどに、酒は飲んでも飲まれるな、ということでしょう。

\次のページで「4.アルコールを飲んで失明?」を解説!/

4.アルコールを飲んで失明?

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海外では密造酒や粗悪品のお酒を飲んで失明したり死亡したりといったニュースが後を絶ちません。これは通常お酒の原料となるエタノールではなく、工業用の安いメタノールが混ざっていたために起きるものです。メタノールはホルムアルデヒド、ギ酸の過程を経て分解されます。どちらも毒性の強い物質であり、網膜にはアルコール脱水素酵素が多く存在することから、その影響が強く出てしまうのです。もちろん通常のルートで販売されているものであれば心配無用ですが、知識として知っておくといいでしょう。

アルコールが分解されていることの証明!

お酒を飲んで体内に吸収されたアルコールは、たくさんの糖分と酸素をエネルギーとしてアセトアルデヒドに分解されます。アセトアルデヒドはアルコールそのものよりも毒性が強く、二日酔いの原因物質です。これを酵素のはたらきによって酢酸、さらに水と二酸化炭素に分解され、最終的には尿として排出されるということでしたね。

ここまでの過程で体内では多くの糖分が使われて不足状態になり、身体は自然と糖分を求めるようになります。また、お酒によって体内は酸性に傾くため、アルカリ性を欲するようになるでしょう。ビールをたくさん飲んだ場合はカリウムの多量摂取により、ナトリウム(つまり塩分)を摂ることでバランスをとろうとします。体が欲している糖分、アルカリ性、ナトリウムを兼ねそろえたものがラーメンなのです。ただし、お酒を飲む時間はそもそも夜であることが多く、お酒もおつまみもカロリーが高いのは言うまでもありません。そこにラーメンを付け加えてしまうと…明らかにカロリーオーバーになるでしょう。くれぐれも飲みすぎ食べすぎには気を付けたいものですね。

 

画像引用:いらすとや

" /> 飲み会終わりの「締めのラーメン」なぜ美味しく感じる?味の仕組みを元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物

飲み会終わりの「締めのラーメン」なぜ美味しく感じる?味の仕組みを元塾講師がわかりやすく解説

今回は「締めのラーメンがなぜ美味しいか」について勉強していこう。

ここでの「締め」とは「お酒を飲んだ後の」と考えるといいでしょう。まだ未成年だというやつは身近な大人に話を聞いてみてもいいでしょう。

意外と知らない体の仕組みを、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.「締めの〇〇」ってなに?

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まずは今回のテーマである「締めのラーメン」について簡単に説明しますね。

1-1.鍋の締めは雑炊?うどん?

中高生にとって「締めの〇〇」といえば、鍋の締めを思い浮かべる人が多いでしょう。うどんや雑炊、ラーメンが一般的ですよね。最近は鍋の種類も豊富になり、チーズリゾットのように洋風の締めも人気があるようです。もちろんこれも美味しいのですが、今回はお酒好きな大人向けのお話になるかもしれません。

1-2.飲み会終わりに締めのラーメン

今回のテーマはお酒を飲んだ後の「締めのラーメン」です。よくドラマなどでも「締めにラーメン行くか!」というようなセリフがありますよね。なぜお酒を飲んだ後はラーメンを食べたくなるのでしょうか。また、ラーメンが美味しく感じられるのでしょうか。今回はその疑問に答えます。

2.アルコール分解のメカニズム

2.アルコール分解のメカニズム

image by Study-Z編集部

その理由について説明する前に、アルコールが体内でどう分解されるのかを知っておく必要があるでしょう。生物の授業では各臓器のはたらきについて学びます。まずはそこから見ていきましょう。

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