典型元素って聞いたことがあるか?

周期表の中央部分(3 族~ 11 族)が遷移元素で、外側部分(1 族 2 族と 12 族~ 18 族)が典型元素であり、その両者は化学的特徴が大きく異なるんです。

今回は「典型元素」と「遷移元素」の違いと「典型元素」の 12 族~16 族の特徴について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.周期表と元素

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周期表は、なぜあのような隙間の空いた並び方になっていると思いますか?

それは電子配置で最外殻に入っている電子の数縦に揃えたいから、こういう並びになっているのです。

では、ここから原子の構造と電子殻についておさらいしましょう。

1-1.周期表と電子

陽子と中性子が集まって構成している原子核の周りを、とても小さなマイナスの電荷をもつ電子が飛び周っています。この電子は決められた部分を飛んでいて、その空間のことを電子殻と言うのです。

電子は内側から入ることが決まっていて、一番内側の殻から順番に、K 殻、L 殻、M 殻…と名付けられていて Q 殻まであります。それぞれの電子殻には入ることができる電子の数が決まっていて、K 殻は 2 個、L 殻は 8 個、M 殻は 18 個というようにだんだんと多くなりますが、重要なのは L 殻より外側は最外殻に入っている電子の数8 個で安定化するということです。

周期表では最外殻に入っている電子の数が同じ元素が縦に並んでいます。そして、最外殻に入っている電子の数が同じという事は、化学結合できる電子の数が同じという事で、化学的性質がよく似ているのです。

1-2.最外殻に入る電子の数と遷移元素

周期表を思いついたメンデレーエフを悩ませたのが、遷移元素と呼ばれる現在は周期表の中央部分( 3 族~ 11 族)に配置されている元素です。メンデレーエフは、元素を原子番号順に並べると周期的に性質が似ている元素が繰り返し出てくるという事を発見したことで、周期表を思いつきました。

というのも、当時はまだ電子の存在が明らかにされていなかったからです。それなので、最外殻に入っている電子の数と化学的性質のつながりを見つけることはできませんでした。

メンデレーエフがなぜ遷移元素の存在について悩んだかというと、遷移元素は原子番号が増えても性質が変わらず周期的に似ている元素が出てくるという法則に当てはまらなかったからです。周期表を発表した時、メンデレーエフは遷移元素を欄外にまとめていました。そのくらいよくわからない元素だったのです。

ではなぜ遷移元素はメンデレーエフが発見した法則に当てはまらなかったのでしょうか?

1-3.遷移元素と最外殻電子

電子は通常内側の電子殻から先に入っていきます。そのため原子番号が増えると、最外殻に入っている電子の数が増えていくはずです。しかし、遷移元素は原子番号が増えて電子の数が増えても、最外殻に入っている電子の数が変わりません

なぜなら、遷移元素の電子は内側の電子殻が埋まる前に外側の電子殻に入ってしまうことがあるのです。遷移元素は最外殻に入っている電子の数が 1 ~ 2 個で、どの遷移元素も似ている性質を持っています。

\次のページで「2.典型元素と遷移元素」を解説!/

2.典型元素と遷移元素

2.典型元素と遷移元素

image by Study-Z編集部

言葉の意味を国語辞典でひくと、典型とは型にはまっているという意味があり、遷移とは移り変わるという意味があります。ではここで、典型元素と遷移元素の違いをまとめておきましょう。

2-1.典型元素の特徴

典型元素とは 1 族 2 族と 12 ~ 18 族の元素で、金属元素と非金属元素が約半数ずつ含まれます。同族元素(縦に並んでいる元素)の価電子数( 18 族以外の最外殻に入っている電子の数)は同じなので、化学的性質がよく似ているのです。

そして、18 族以外の価電子数は、族の番号の 1 の位の数と同じことを覚えておきましょう。

化合物の結晶は白色のものが多く、イオンは無色のものが多いです。

2-2.遷移元素の特徴

遷移元素とは 3 ~ 11 族の元素で、すべて金属元素です。価電子数はどれも 1 個か 2 個で、同じ周期の隣り合う元素どうし化学的性質が似ているものが多いという特徴があります。

化合物の種類によって複数の酸化数を取る元素が多く、内側の殻にある電子も一部価電子として働くものがあるのです。

また、典型元素と違い有色のイオンが多く見られます。そして密度が大きいものが多く、融点が高いものが多い事も特徴です。

3.第 12 族「亜鉛族」の元素

ではここから、典型元素について同族元素(周期表で縦に並ぶ元素)で括って学んでいきましょう。典型元素の第 1 族(アルカリ金属)、第 2 族(アルカリ土類金属)、第 17 族(ハロゲン)、第 18 族(希ガス)については下に紹介した「同族元素」の記事をご参照ください。ここからは、それ以外の典型元素である 12 族~ 16 族について解説しましょう。

周期表で左から 12 番目の列である、第 12 族亜鉛族といいます。

亜鉛族は原子番号 30 の Zn(亜鉛)、原子番号 48 の Cd(カドミウム)、原子番号 80 の Hg(水銀)です。

3-1.第 12 族元素の特徴

第 12 族の元素は、価電子が 2 個で 2 価の陽イオンになりやすいです。それ以外に特徴が似ていないので、実は遷移元素に分類されていたこともありました。現在は、第 12 族の元素は全て最外殻に入っている電子が 2 個で、それより内側の殻は電子で満たされているため、典型元素に分類されます。

Zn(亜鉛)は両性元素といって酸とも塩基とも反応するという特徴があるのです。そして、必須ミネラルに分類され人体に必要な栄養素として知られています。しかし同族の、Cd(カドミウム)は公害病の原因になった金属で人体に有害であり、Hg(水銀)も公害病の原因であり人体に害をもたらす元素です。

Hg(水銀)は常温常圧で単体が液体の金属であるという特異な特徴を持つので、覚えておきましょう。

4.第 13 族「ホウ素族」の元素

周期表で左から13番目の列である、第13族ホウ素族といいます。

ホウ素族は原子番号 5 の B(ホウ素)、原子番号 13 の Al(アルミニウム)、原子番号 31 の Ga(ガリウム)、原子番号 49 の In(インジウム)、原子番号 81 の Tl(タリウム)です。

ホウ素を除いた 5 つの金属元素を土類金属と呼ぶこともあります。

\次のページで「4-1.第 13 族元素の特徴」を解説!/

4-1.第 13 族元素の特徴

第 13 族の元素は価電子が 3 個で 3 価の陽イオンになりやすいです。しかし、B(ホウ素)は原子が非常に小さいため安定な陽イオンを作らず、共有結合を形成することが多いという特徴があります。さらに、Tl(タリウム)は 1 価の陽イオンの方が安定です。

第 13 族の中でも Al(アルミニウム)は両性元素で酸とも塩基とも反応したり、透明な酸化物を形成し内側が酸化するのを防いだり、イオン化傾向が大きいが濃硝酸には不動態を形成し解けなかったり、様々な固有の特徴があるので覚えておきましょう。

また、第 13 族の元素は一部で炎色反応を示します。以下に元素と炎色反応の色をまとめましょう。

Ga(ガリウム) 青色

In(インジウム) 藍色

Tl(タリウム) 淡緑色

5.第 14 族「炭素族」の元素

周期表で左から 14 番目の列である、第 14 族炭素族といいます。

炭素族は原子番号 6 の C(炭素)、原子番号 14 の Si(ケイ素)、原子番号 32 の Ge(ゲルマニウム)、原子番号 50 の Sn(スズ)、原子番号 82 の Pb(鉛)です。

うち金属元素は Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)、Pb(鉛)になります。

5-1.第 14 族元素の特徴

第 14 族の元素は最外殻に電子が 4 個と空席が 4 個あり、最大 4 個の原子と結びつくことができます。直線的や平面的さらには立体的にもつながることができ、さまざまな構造を作ることができるという大きな特徴があるのです。

特に C(炭素)は、わたしたちの身体を構成しているタンパク質を作るアミノ酸の骨格部分を担う大変重要な元素ですね。有機化合物は全て C(炭素)を骨格とする化合物です。

Si(ケイ素)も最大 4 個の原子と結びつくことができ、ガラスやセメントなどの材料として活躍してきました。20 世紀を過ぎてからは半導体や太陽電池にも利用されていて、わたしたちの生活に密接に関係している元素です。

Sn(スズ)とPb(鉛)は両性元素ということも、覚えておくといいでしょう。

また、第 14 族の元素は一部で炎色反応を示します。 以下に元素と炎色反応の色をまとめましょう。

Sn(スズ) 淡紫色

Pb(鉛) 淡青色

6.第 15 族「窒素族」の元素

周期表で左から 15 番目の列である、第 15 族窒素族といいます。

窒素族は原子番号 7 の N(窒素)、原子番号 15 の P(リン)、原子番号 33 の As(ヒ素)、原子番号 51 の Sb(アンチモン)、原子番号 83 の Bi(ビスマス)です。

うち金属元素は Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)になります。

6-1.第 15 族の元素の特徴

第 15 族の元素は、最外殻に電子を 5 つ持っていますが、3 価の陰イオンになりやすいとは一概に言えません。N(窒素)と P(リン)の価電子はイオンを作らず共有結合を作ります。また、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)は共有結合性と金属との性質を併せ持つ物性を示し、酸化数は + 3 と + 5 が安定なので覚えておきましょう。

単体は N(窒素)のみが常温常圧で気体であり、他は固体になります。P(リン)は同素体を持つめずらしい元素です。

また、第 15 族の元素は一部で炎色反応を示します。以下に元素と炎色反応の色をまとめましょう。

\次のページで「7.第 16 族「酸素族」の元素」を解説!/

P(リン) 淡青色

As(ヒ素) 淡青色

Sb(アンチモン) 淡紫色

7.第 16 族「酸素族」の元素

周期表で左から 16 番目の列である、第 16 族酸素族といいます。

酸素族は原子番号 8 の O(酸素)、原子番号 16 の S(イオウ)、原子番号 34 の Se(セレン)、原子番号 52 の Te(テルル)、原子番号 84 の Po(ポロニウム)です。

うち金属元素は Po(ポロニウム)になります。

7-1.第 16 族元素の特徴

第 16 族の元素は最外殻に電子を 6 つ持っていて、2 価の陰イオンになりやすいです。第 17 族ハロゲンの元素に次いで電気陰性度が高く反応性が高いといえます。

単体は、常温常圧で O(酸素)のみ気体で、あとは固体です。

また、第 16 族の元素どれも同素体を持つという珍しい特徴があります。特に S(イオウ)は第 14 族の C(炭素)と並んで、様々な同素体を持つことを覚えておきましょう。

典型元素とは 1 族 2 族と 12 ~ 18 族に属し基本的には同族で化学的性質が似ている元素のこと

典型元素とは1 族 2 族と 12 ~ 18 族の元素で、金属元素と非金属元素が約半数ずつ含まれます。

同族元素(縦に並んでいる元素)の価電子数( 18 族以外の最外殻に入っている電子の数)は同じなので、化学的性質がよく似ているのです。

今回は12 ~ 16 族の同族元素について解説しましたが、同じ族の中でも違った性質を持つものもあります。

特徴を持った元素を覚えておくと、これからの化学の学習日々の生活にも大いに役に立つはずです。

" /> 1~2族と12~18族に属する「典型元素」を元研究員がわからりやすくわかりやすく解説 – Study-Z
化学

1~2族と12~18族に属する「典型元素」を元研究員がわからりやすくわかりやすく解説

典型元素って聞いたことがあるか?

周期表の中央部分(3 族~ 11 族)が遷移元素で、外側部分(1 族 2 族と 12 族~ 18 族)が典型元素であり、その両者は化学的特徴が大きく異なるんです。

今回は「典型元素」と「遷移元素」の違いと「典型元素」の 12 族~16 族の特徴について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.周期表と元素

image by iStockphoto

周期表は、なぜあのような隙間の空いた並び方になっていると思いますか?

それは電子配置で最外殻に入っている電子の数縦に揃えたいから、こういう並びになっているのです。

では、ここから原子の構造と電子殻についておさらいしましょう。

1-1.周期表と電子

陽子と中性子が集まって構成している原子核の周りを、とても小さなマイナスの電荷をもつ電子が飛び周っています。この電子は決められた部分を飛んでいて、その空間のことを電子殻と言うのです。

電子は内側から入ることが決まっていて、一番内側の殻から順番に、K 殻、L 殻、M 殻…と名付けられていて Q 殻まであります。それぞれの電子殻には入ることができる電子の数が決まっていて、K 殻は 2 個、L 殻は 8 個、M 殻は 18 個というようにだんだんと多くなりますが、重要なのは L 殻より外側は最外殻に入っている電子の数8 個で安定化するということです。

周期表では最外殻に入っている電子の数が同じ元素が縦に並んでいます。そして、最外殻に入っている電子の数が同じという事は、化学結合できる電子の数が同じという事で、化学的性質がよく似ているのです。

1-2.最外殻に入る電子の数と遷移元素

周期表を思いついたメンデレーエフを悩ませたのが、遷移元素と呼ばれる現在は周期表の中央部分( 3 族~ 11 族)に配置されている元素です。メンデレーエフは、元素を原子番号順に並べると周期的に性質が似ている元素が繰り返し出てくるという事を発見したことで、周期表を思いつきました。

というのも、当時はまだ電子の存在が明らかにされていなかったからです。それなので、最外殻に入っている電子の数と化学的性質のつながりを見つけることはできませんでした。

メンデレーエフがなぜ遷移元素の存在について悩んだかというと、遷移元素は原子番号が増えても性質が変わらず周期的に似ている元素が出てくるという法則に当てはまらなかったからです。周期表を発表した時、メンデレーエフは遷移元素を欄外にまとめていました。そのくらいよくわからない元素だったのです。

ではなぜ遷移元素はメンデレーエフが発見した法則に当てはまらなかったのでしょうか?

1-3.遷移元素と最外殻電子

電子は通常内側の電子殻から先に入っていきます。そのため原子番号が増えると、最外殻に入っている電子の数が増えていくはずです。しかし、遷移元素は原子番号が増えて電子の数が増えても、最外殻に入っている電子の数が変わりません

なぜなら、遷移元素の電子は内側の電子殻が埋まる前に外側の電子殻に入ってしまうことがあるのです。遷移元素は最外殻に入っている電子の数が 1 ~ 2 個で、どの遷移元素も似ている性質を持っています。

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