周期表で縦に並ぶ「同族元素」を元研究員がわかりやすく解説
高校で化学を学ぶ時に「水兵リーベボクの船…」って元素を覚えたよな。その時に周期表という元素を並べた表を使って学んだはずです。そして、周期表で縦に並んでいる元素のことを同族元素というんです。
今回は「同族元素」とその特徴について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。
ライター/wing
元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!
1.周期表の見方と同族元素
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化学を学ぶ時に必ず出てくるのが元素です。そして多数ある元素をすべて原子番号順に並べ、性質が似ている元素を縦にグループ分けしたものを周期表といいます。
周期表の横の行を第〇周期、縦の列を第〇族と呼ぶので覚えておきましょう。元素は典型元素と遷移元素に分けられ、典型元素は 1 族~ 2 族と 12 族~ 18 族で、遷移元素はその他で周期表の中間部分にある元素です。
典型元素は縦に性質が似ている元素が並んでいます。そして、縦に並んでいる元素=同族元素は電子配置において最外殻に入っている電子の数が同じです。(希ガスはヘリウムが 2 個で後は 8 個)
最外殻に入っている電子の数が同じとは、どのような意味があるのでしょうか?
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1-1.周期表の並び方
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周期表は原子番号順に左上から元素が並んでいます。1 族の 1 番上に水素、18 族の 1 番上にヘリウムときて、1 族の 2 周期目にリチウムが配置されていますよね。
なぜこのような隙間が空いた並び方になっているのでしょう?それは、電子配置で最外殻に入っている電子の数を縦に揃えたいから、このような並びになっているのです。
では、ここから原子の構造と電子配置についておさらいしましょう。
1-2.周期表と電子配置
陽子と中性子が集まって構成している原子核の周りを、とても小さなマイナスの電荷をもつ電子が飛び周っています。この電子は決められた部分を飛んでいて、その空間のことを電子殻と言うのです。
電子は内側から入ることが決まっていて、一番内側の殻から順番に、K 殻、 L 殻、M 殻…と名付けられていて Q 殻まであります。周期表で横に並んでいる元素は、電子が入っている最外殻が何殻か?が同じ元素です。例えば第 1 周期の元素は最外殻が K 殻で、第 2 周期の元素は最外殻が L 殻になります。
それぞれの電子殻には入ることができる電子の数が決まっていて、K 殻は 2 個、L 殻は 8 個、M 殻は 18 個というように、内側から n 番目の殻に入ることができる最大の個数=2n2 個です。
さらに、重要なのが最大の個数がいくつの場合でも、L 殻より外側は最外殻に入っている電子の数は 8 個で安定化します。
周期表では最外殻が何殻であっても、その殻に入っている電子の数が同じ元素が縦に並んでいるのです。そして、最外殻に入っている電子の数が同じという事は、化学結合できる電子の数が同じという事で、化学的性質がよく似ています。
1-3.化学的性質が似ているとはどういうことか?
最外殻に入っている電子の数(1 族~ 17 族では価電子と言って化学結合に使うことができる電子の数を指します)が同じだと、化学的性質が似るということはどういうことでしょうか?
原子が化学結合したりイオンになったりする時に、価電子がいくつあるかによって、どんな原子と化合物をつくりやすいかやどんなイオンになりやすいかが変わってきます。
第 1 族を例にとって解説しましょう。
第 1 族のアルカリ金属は価電子の数が 1 個の原子たちです。価電子の数が 1 個ということは、安定になるために電子を手放しやすく1 価の陽イオンになりやすいという性質があります。さらに簡単に電子を持っていかれてしまう、ということは酸化されやすいです。(電子を失うことを酸化されると言います。)
そして価電子の数が 1 個しかないため不安定であり、常にその 1 個の価電子を他の原子に渡して安定化したいので、とても反応性が高く常温の水とも激しく反応するのです。
化学反応は電子のやり取りで起こります。一番外側に持っている電子の数が同じという事は、同じような反応が起きやすく、つまり化学的性質が似るということです。
1-4.同族元素
これまでしつこいほどお伝えしたのが、周期表で縦に並んでいる元素=(典型元素では)最外殻に入っている電子の数が同じ元素=化学的性質が似ているという事でした。
よく元素を覚えるときに、「水兵リーベ…」と原子番号順に覚えますが、実は周期表で縦に並んでいる元素を一括りにして覚えたほうが、その後元素の性質を考えるときに便利です。
周期表で縦に並んでいる元素のことを同族元素といい、同族元素の中で特に重要なグループがあります。
第 1 族の水素を除くアルカリ金属、第 2 族のベリリウムとマグネシウムを除くアルカリ土類金属、第 17 族のハロゲン、第 18 族の希ガスです。
先ほど第 1 族の性質について少し触れましたが、ここからは特に重要なその 4 つの同族元素をピックアップして解説していきましょう。
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2.第 1 族アルカリ金属
周期表で一番左の列である、第 1 族をアルカリ金属といいます。
アルカリ金属は水素を除く原子番号 3 の Li(リチウム)、原子番号 11 の Na(ナトリウム)、原子番号 19 の K(カリウム)、原子番号 37 の Rb(ルビジウム)、原子番号 55 の Cs(セシウム)、原子番号 87 の Fr(フランシウム)です。
2-1.なぜ水素はアルカリ金属に入れられないの?
周期表で一番左の列ですが、水素はアルカリ金属ではありません。
水素はかなり特別な性質で、電子の数が 1 個なので電子を渡して 1 価の陽イオンにもなりますし、逆に電子をもらって 1 価の陰イオンにもなります。
このような挙動を示す元素は他になく、他の元素と同じグループに分類することができないので、水素はアルカリ金属というグループには入れられないのです。
2-2.アルカリ金属の特徴
先ほどもお話ししましたが、価電子の数が 1 個なので、電子を渡して 1 価の陽イオンになりやすく酸化されやすいです。
アルカリ金属元素は金属でありながら、軽くて柔らかいという特徴を持っています。そして反応性が高く、水とでもすぐ反応してしまうため、単体を保存する時は石油中に保存する事を覚えておきましょう。空気中にも酸素や水分が含まれているため、扱いには十分に注意する必要があるのです。
また、アルカリ金属はそれぞれに炎色反応を呈します。炎色反応というのは、高温で反応する時に可視光線としてエネルギーを放出するため、炎の色が変化する現象の事です。
では、それぞれの炎色反応の色を見ていきましょう。
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Li(リチウム) 赤色
Na(ナトリウム) 黄色
K(カリウム) 赤紫色
Rb(ルビジウム) 暗赤色
Cs(セシウム) 青紫色
炎色反応にフランシウムが入っていませんが、Fr(フランシウム)は放射性元素で安定同位体が存在せず、数が半分に減ってしまう時間(=半減期)が 22 分と短くあっという間に崩壊してしまいます。
そのため、実はまたあまりよくわかっていません。しかし、原子番号と価電子数が 1 個であることは確認されていて性質はセシウムに似ていると思われるため、アルカリ金属の仲間になっています。
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