この記事では「高を括る」について解説する。

端的に言えば「高を括る」の意味は「大したことはないとみくびる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

活字中毒歴40年の長屋創を呼んです。一緒に「高を括る」の意味や例文、類語などを見ていこう。

ライター/長屋 創

生まれながらの活字中毒者。年間200冊を読破する(マンガを含む)。本一冊の中にひとつでも素敵な表現が見つかれば、それで幸せを感じる。

「高を括る」の意味や由来・使い方まとめ

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それでは早速「高を括る(たかをくくる)」の意味や由来・使い方などを見ていきましょう。

「高を括る」の意味は?

「高を括る」には、次のような意味があります。

その程度を予測する。大したことはないと見くびる。「―・って手ひどい目にあう」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

その程度だろうと安易に予測する。
大したことはないと見くびる。高が知れたことだとあなどる。

出典:大辞林 第三版(三省堂)

「高」とは物や金額などの程度のことです。売上高や生産高、在高といったように使われますね。その程度を「括る=まとめる」というわけで、つまり数量・数値などをざっくりと見積もる、というのが「高を括る」の大まかな意味です。「まあ、だいたいこんなものだろう」と予測する行為ですね。綿密な分析をするわけではなく適当に、あくまで「ざっくりと」見当をつけるというところがポイントです。

そしてそこに、「最初から見くびって」「大したことはないだろうと甘く見て」というニュアンスが加わります。さらに「ちょっと馬鹿にした感じで」という隠し味を足してもいいかもしれません。「軽く嘲るような笑いを浮かべながら」もいいスパイスになりそうです。

要するに、どんな「高」を「括る」にせよ、その行為の根底には「予想数値を敢えて低く設定してやる」という精神が宿っていると考えてください。微塵も「万が一の場合に備えてちょっと高目に設定しておこう」などというリスクヘッジ的思考は存在しません。それでは「高を括る」ことにはならないのです。あまり好きな表現ではありませんが、いわゆる「上から目線」が「高を括る」には必要不可欠であると覚えておいてください。

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「高を括る」の由来は?

それでは次に、なぜ「高を括る」には「見くびる」という意味が含まれるのかを考えていきましょう。

そもそも、「高を括る」の「高」は「石高」の「高」だといいます。「石高」とは日本において秀吉の太閤検地以降用いられた土地の生産量を示す基準ですね。ごくごく簡単にいいますとその国(家)の規模を表しているものです。五百石のナントカ家より一万石のカントカ家のほうが規模としては大きいということになります。

そして、さあ他の国に戦いを仕掛けようとなったとしますね。その時に、相手国の戦力を測るのにまず基準となったのが石高なのです。「あそこの土地が欲しいなあ。よし、戦に勝って我が物にするぞ。えーと、相手の国の強さは、と。石高を括ってみよう。どれどれ、二万石か。こちらは三万石だ。おう、勝てるではないか。むっひっひ。いざ、出陣じゃ」というわけで開戦。しかし、石高はあくまでも国の指標のひとつに過ぎません。すべてが明らかになるものではないのです。石高が低いからといって兵力も低いとは限らない。むしろ、格下だと付け込まれるのを見越して兵力の充実に力を入れている場合だってある。結果、弱いと思って甘く見ていた相手に敗戦。敗因はもちろん兵力を低く見積もっていたこと。

おそらく、このような事例がいくつもあったのでしょう。次第に「おいおい。高を括ってると負けるぞ、これ」という空気になり、やがて「見くびる」「侮る」というニュアンスを込めて「高を括る」が使われるようになったのです。

「高を括る」の使い方・例文

それでは「高を括る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・最近は夜中のラーメンを控えているので血糖値は正常だろうと高を括っていたのだが、健康診断で予想外に高い数値が出て驚いた。ラーメンを焼きそばに替えても駄目ということらしい。

・相手チームは強豪だがエースピッチャーが怪我をしているので楽勝だと高を括っていたら、歴史的大敗を喫した。選手層の厚さを見誤ったのが原因だ。

・少し曇っているけど雨は降らないだろう、と高を括っていたら記録的大雨でずぶ濡れになりました。天気予報を信じるべきでした。

・おれだけは大丈夫だ、と高を括らないほうがいいとおもう。この人生、なにが起きても不思議ではない。高を括るよりは、腹を括っておいたほうがいい。(『おやじ論』勢古浩爾)

・野本氏があれほども自分のものだと信じきっていた妙子が、彼には一とことの断りもなく、一同がまさかこの男がと、高をくくっていた、あのむっつりやの北川氏に嫁してしまったのであった。(『恐ろしき錯誤』江戸川乱歩)

・日ごろから、酒を嗜む謙吉はこの病気を恐れないではなかった。しかしそれは観念だけのことで正直に言えば、まだまだ高をくくっていたのだ。(『春の夜の夢』外村繁)

典型的な使い方としては「高を括った。その結果痛い目を見た」という構図ですね。予測がズバリ的中して良い結果が生まれた場合には「高を括った」とはあまりいいません。「高を括って臨んだけど楽勝だったよ。人生イージーモードだな」といっていえないことはないのですが、一般的ではないですね。負けたから結果的に見くびっていたことになるのであって、勝ったなら見くびっていたのではなく正当な評価をしただけということにもなるからでしょうか。あるいは、「調子に乗って世の中をなめてかかってる奴には災いあれ」という意識が我々の心の中に潜在的にあるのかもしれません。

それはともかく、こうして例文を見てみると、数や量など「高」として数値化できるものに限らずもっと幅広く、人の心や自然現象などの「蓋然性」に対しても使われることがわかると思います。今はむしろ後者の使い方のほうが主流かもしれません。「こんなことは起こらないだろう」とか「こういう風にはしないだろう」とか、要するに「自分にとって都合の良い方向に物事が進むはずだと予測すること」が「高を括る」の本意になりつつあるといえるのではないでしょうか。

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「高を括る」の類義語は?

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次に「高を括る」の類義語について見ていきましょう。

「高が知れる」

こちらも意味としては「高を括る」と同じように「相手を大したことはないと見くびる」というものです。

こっちは相手の「高」を知っている、つまり相手の実力・力量は把握できている、手の内は知っているのだから負けるわけがない。与しやすし、恐れるに足らずということです。そこから、相手を軽く見る、の意味で使われるようになりました。

高が~」や「高々」もこの「高」です。どちらも「せいぜい」とか「取るに足らない」の意味で「高が1億円の借金でガタガタ騒ぐんじゃない」「高々1億で高年収?笑わせるんじゃないわよ」のように使われます。

「高を括る」の対義語は?

では、「高をくくる」の対義語にはどんなものがあるでしょうか。

「買い被る」

「かいかぶる」と読みます。意味は以下の通りです。

じっさいの能力以上に高く評価する。「実力以上にー」

出典:三省堂国語辞典 第七版 広島東洋カープ仕様(三省堂)

「高を括る」と正に対極にある言葉ですね。

よくあるパターンが、「あいつはすごいよ。きっと大成功を収めるに違いない」と勝手に買い被っておいて、いざ失敗すると「なんだかなあ。裏切られた感が半端ないよ」と勝手にがっかりするというものですね。買い被られた方はいい迷惑です。「あんたの目が節穴なんだよ!」といってやりたくなります。

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「高を括る」の英訳は?

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続いて、「高を括る」を英語でいうならどんな表現ができるでしょうか。一例をご紹介いたします。

「Underestimate」

「見くびる」「なめてかかる」という意味があります。

・I think he underestimated the opponent.In the end,he lost.(彼は相手を見くびり、結局負けた)

「高を括る」を使いこなそう

この記事では「高を括る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

我が家の話で恐縮ですが、世の中をなめている感のある息子にはいつも「高を括ってると失敗するぞ」と注意するのですが、まあ聞く耳持ちませんね。対照的に娘は慎重派といいますか、常に準備を怠らず何事にも全力で取り組みます。勝負事になると特にその性格が顕著に現れまして、ウサギを追うトラの如く、明らかに格下とわかっている相手に対しても決して手を抜いたりしません。おかげで私は娘に「大乱闘スマッシュブラザーズ」で勝ったためしがありませんよ。

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【慣用句】「高を括る」の意味や使い方は?例文や類語を活字中毒ライターがわかりやすく解説!

この記事では「高を括る」について解説する。

端的に言えば「高を括る」の意味は「大したことはないとみくびる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

活字中毒歴40年の長屋創を呼んです。一緒に「高を括る」の意味や例文、類語などを見ていこう。

ライター/長屋 創

生まれながらの活字中毒者。年間200冊を読破する(マンガを含む)。本一冊の中にひとつでも素敵な表現が見つかれば、それで幸せを感じる。

「高を括る」の意味や由来・使い方まとめ

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それでは早速「高を括る(たかをくくる)」の意味や由来・使い方などを見ていきましょう。

「高を括る」の意味は?

「高を括る」には、次のような意味があります。

その程度を予測する。大したことはないと見くびる。「―・って手ひどい目にあう」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

その程度だろうと安易に予測する。
大したことはないと見くびる。高が知れたことだとあなどる。

出典:大辞林 第三版(三省堂)

「高」とは物や金額などの程度のことです。売上高や生産高、在高といったように使われますね。その程度を「括る=まとめる」というわけで、つまり数量・数値などをざっくりと見積もる、というのが「高を括る」の大まかな意味です。「まあ、だいたいこんなものだろう」と予測する行為ですね。綿密な分析をするわけではなく適当に、あくまで「ざっくりと」見当をつけるというところがポイントです。

そしてそこに、「最初から見くびって」「大したことはないだろうと甘く見て」というニュアンスが加わります。さらに「ちょっと馬鹿にした感じで」という隠し味を足してもいいかもしれません。「軽く嘲るような笑いを浮かべながら」もいいスパイスになりそうです。

要するに、どんな「高」を「括る」にせよ、その行為の根底には「予想数値を敢えて低く設定してやる」という精神が宿っていると考えてください。微塵も「万が一の場合に備えてちょっと高目に設定しておこう」などというリスクヘッジ的思考は存在しません。それでは「高を括る」ことにはならないのです。あまり好きな表現ではありませんが、いわゆる「上から目線」が「高を括る」には必要不可欠であると覚えておいてください。

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