「粉骨砕身」という言葉を知っていますか?漢字だけ見たらなかなか恐ろしい言葉に見えてしまうでしょう。”骨”が”粉”になって”身”が”砕”けるんですから。

この「粉骨砕身」はずばり言えば「力の限り懸命に努力する」という意味の四字熟語です。スポーツ選手で自分が使う道具にこの言葉の刺繍を入れている人もいますね。

今回はその「粉骨砕身」の意味や語源、使い方などを大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「粉骨砕身」の意味と語源は?

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「粉骨砕身(ふんこつさいしん)」という言葉の意味を知っていますか?漢字から想像できるでしょうか。”骨を粉にして身を砕く”…分かるような分からないようなですよね。まずは「粉骨砕身」の意味や語源を、国語辞典を参考に見ていきましょう。

「粉骨砕身」の意味は「力の限り懸命に努力する」

「粉骨砕身」は、国語辞典には次のような意味が掲載されています。

力の限り懸命に努力すること。

「会社再建のために―する」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「ふんこつ-さいしん【粉骨砕身】」

「粉骨砕身」は「力の限り懸命に努力する」という意味の四字熟語です。”骨を粉にして身体を砕くほどに、力の限り努力する”というニュアンスがあります。つまり、ただ単に「努力する」「力を尽くす」という場合よりも、さらに強い程度の努力を表現していると言えますね。

「砕」を「砕」と書く人がいますが、こちらは誤りです。気をつけましょう。

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元々は仏教の言葉だった?

次に、「粉骨砕身」の語源について見ていきましょう。

「粉骨砕身」という言葉が初めて出てくるのは、中国・元王朝の時代の1307年に成立した『禅林類聚』という仏教・禅宗の書物です。この『禅林類聚』の一節に「粉骨砕身するも、此の徳に報じ難し」という一節があります。この一節は「たとえ骨を粉になるまで削り身を砕くほど頑張っても、仏のありがたいご恩に報いるのは難しい」という意味です。

この『禅林類聚』は、日本では1650年代以降の江戸時代に日本語訳されたものが広がっていきました。よって日本語としては、江戸時代以降に使われるようになった言葉かもしれませんね。

「粉骨砕身」の使い方を解説!

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続いて、「粉骨砕身」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「粉骨砕身」は、「粉骨砕身する」という動詞の形で使用することも、「粉骨砕身の精神」のように名詞として使用することもできます。

1.(上司から大事な仕事を任されて)「皆さんの期待に応えられるよう、粉骨砕身いたします。」
2.野球部は甲子園出場に向け、粉骨砕身の精神で毎日練習に励んでいる。
3.A国とB国の戦争を終わらせるために、C氏は両国の説得に粉骨砕身した。

例文1では、上司から仕事を任された際に、”期待に応えられるよう、力の限りを尽くし一生懸命に努力する”というニュアンスで「粉骨砕身」が使用されています。「粉骨砕身」は例文1のように、仕事等で最大限の努力をすることを誓う時に使用されることが多い表現です。

例文2では、「粉骨砕身」という言葉が使われることによって、練習が厳しいものであったり、その練習に必死になって取り組んでいることを表現することができます

例文3では、C氏がA国とB国の戦争を終わらせるために、並大抵ではないほどの尽力をしたことが、「粉骨砕身」という表現を使うことによって表現されていますね。

この「粉骨砕身」という言葉は、「努力する」「尽力する」といった言葉よりも、さらに強い程度で努力や尽力を表す表現といえるでしょう。プロ野球元阪神タイガースの藤川球児さんは、座右の銘である「粉骨砕身」の文字をグローブに刺繍しプレーしていたそうです。

「粉骨砕身」の類義語は?

次に、「粉骨砕身」の類義語を紹介します。「粉骨砕身」の類義語は「身を粉にする」「刻苦勉励」「努力する・尽力する」です。それぞれの意味や特徴を把握し、「粉骨砕身」と比較しながら覚えていきましょう。

「身を粉にする」苦労をいとわず一所懸命に働く

「身を粉にする」は「みをにする」と読む、「苦労をいとわず、一所懸命に働く」という意味の慣用句です。「みをこなにする」とは読まないので注意しましょう。この表現は、”身体が粉になるような苦労をしてでも一所懸命に働く”というニュアンスを持ちます。「粉骨砕身」と同じ漢字を使った表現ですが、特に「粉骨砕身」と意味やニュアンスの違いはありません

「身を粉にする」も、「努力する」や「尽力する」といった言葉よりも、さらに強い程度で努力や尽力を表す表現です。

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「刻苦勉励」力を尽くし、大変な苦労をして努める

「刻苦勉励(こっくべんれい)」は「力を尽くし、大変な苦労をして、学問などに努め励むこと」という意味の四字熟語です。「刻苦」は「力を尽くし心を労する」という意味を表し、「勉励」は「努め励む」という意味を表します。

「刻苦勉励」が表す努力や尽力の強さの程度は、「粉骨砕身」と同じくらいです。ただ、「刻苦勉励」には、”社会的な成功を得るために努力すること”に対してよく用いられるという特徴があります。

「努力する・尽力する」力を尽くす

「努力する」「尽力する」は、「ある目標・目的のために力を尽くして励む」という意味の言葉です。どちらも普段の日常会話でよく使う表現ですね。

「粉骨砕身」の大元の意味は「努力する」「尽力する」です。ただ、「粉骨砕身」という言葉を使うことによって、より強い程度の努力や尽力を表現したり、目標の実現までにとても大きな困難があることを暗示したりすることができます

「粉骨砕身」の英語表現は?

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英語には「粉骨砕身」の意味やニュアンスをそのまま表すような熟語やことわざはありません。そこで、翻訳をする場合は最も近い表現や似たニュアンスを持った表現を活用することになります。その表現は「do one's best」でしょう。

「do one's best」

「do one's best」は「最善を尽くす」「全力を尽くす」という意味の英語表現です。「one's」には人を表す表現が入りますね。「全力を尽くす」という意味で用いられる場合、より意味を強調したい場合などに「粉骨砕身する」という訳が適切になることがあります

1.We will do our best to resolve harassment issues. 私たちはハラスメント問題の解決に粉骨砕身します
2.Mr. Smith is doing his best to get accepted to Harvard University. スミスさんはハーバード大学合格のために粉骨砕身している

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骨も身も粉になって砕けるほどの努力を「粉骨砕身」

今回は「粉骨砕身」について解説しました。「粉骨砕身」は「力の限り懸命に努力する」という意味の四字熟語で、13世紀の中国で生まれた言葉です。「努力する」「尽力する」といった言葉よりも、さらに強い程度の努力や尽力を表現します。骨が粉々になって身体が砕けてしまうほどの努力を指すのです。

「粉骨砕身」の思いで取り組める何かがある人は、きっと幸せなのかもしれませんね。

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国語言葉の意味

“心”ではなく“身”を砕く!「粉骨砕身」の意味や語源、使い方を院卒日本語教師がわかりやすく解説

「粉骨砕身」という言葉を知っていますか?漢字だけ見たらなかなか恐ろしい言葉に見えてしまうでしょう。”骨”が”粉”になって”身”が”砕”けるんですから。

この「粉骨砕身」はずばり言えば「力の限り懸命に努力する」という意味の四字熟語です。スポーツ選手で自分が使う道具にこの言葉の刺繍を入れている人もいますね。

今回はその「粉骨砕身」の意味や語源、使い方などを大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「粉骨砕身」の意味と語源は?

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「粉骨砕身(ふんこつさいしん)」という言葉の意味を知っていますか?漢字から想像できるでしょうか。”骨を粉にして身を砕く”…分かるような分からないようなですよね。まずは「粉骨砕身」の意味や語源を、国語辞典を参考に見ていきましょう。

「粉骨砕身」の意味は「力の限り懸命に努力する」

「粉骨砕身」は、国語辞典には次のような意味が掲載されています。

力の限り懸命に努力すること。

「会社再建のために―する」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「ふんこつ-さいしん【粉骨砕身】」

「粉骨砕身」は「力の限り懸命に努力する」という意味の四字熟語です。”骨を粉にして身体を砕くほどに、力の限り努力する”というニュアンスがあります。つまり、ただ単に「努力する」「力を尽くす」という場合よりも、さらに強い程度の努力を表現していると言えますね。

「砕」を「砕」と書く人がいますが、こちらは誤りです。気をつけましょう。

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