ヨーロッパの歴史世界史歴史

イエスの言葉を表したキリスト教の正典「新約聖書」を歴女がわかりやすく解説

よぉ、桜木健二だ、今回は新約聖書を取り上げるぞ。キリスト教の正典だが、信者でなくてもいろいろと詳しく知りたいよな。

その辺のところを子供の頃からキリスト教になじんでいるあんじぇりかと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/あんじぇりか

子供の頃から歴史の本や伝記ばかり読みあさり、なかでも女性史と外国人から見た日本にことのほか興味を持っている歴女、キリスト教の歴史にも興味津々。例によって昔読んだ本を引っ張り出しネット情報で補足しつつ、新約聖書について5分でわかるようにまとめた。

1-1、新約聖書とは

image by PIXTA / 60880726

新約聖書は、キリスト教徒にとっての正典で、旧約聖書を第1部、新約聖書は第2部とされていて、内容はイエス・キリストの生涯、死そして復活、初代教会の発展信仰証言について書かれた27の書で構成。

また、新約という名前はマルコによる福音書 14章24節の「新しき契約」が由来で、神が預言者モーセを通して与えた救いの契約である旧約が民の律法の義務の不履行で破られたのちに、十字架にかけられたイエスの受難を通して、神とすべての人類との間に新しい契約が結ばれたという意味

尚、「聖書」は英語で「bible(バイブル)」ですが、ギリシア語が語源で「ビブリヤ(数冊の本)」という意味だということ。

1-2、旧約聖書との違い

image by PIXTA / 47009722

旧約聖書はユダヤ人とヤハウェ神の救いの約束を記した書だが、新約聖書はイエス=キリスト(救世主)による救いの約束が記してあるということ。尚、旧約聖書はユダヤ教、イスラム教でも正典として用いられるが、新約聖書はイエスを救世主メシヤと認めたキリスト教だけの正典。

2-1、新約聖書の成り立ちは

Bible.malmesbury.arp.jpg
Anonymous (photo by Adrian Pingstone) – 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

新約聖書は救世主イエスの教えだが、イエス自身が書いたわけではなく、イエスの行いや言ったことをその弟子たちが伝え、伝道されるうちにまとめられたもの。

イエスはアラム語を使っていたとされているが、この新約聖書はほとんどが、布教の対象だった小アジア、ギリシアで用いられていたという、ヘレニズム世界の共通語のギリシア語で書かれていたということ。そして2世紀から3世紀にかけての間に各巻ごとに書かれたが、グノーシス派という異端派との対立があったせいで、正しい聖典を制定する必要性が出来たために、397年のカルタゴ公会議で現在の27巻が公認されることに。そして4世紀末、ヒエロニムスにより、聖書は古代ローマ帝国の公用語のラテン語に翻訳。

印刷技術のない時代、写本は貴重なものだったうえに、ラテン語が理解できる人間は限られていたため、ローマ・カトリック教会では聖職者がいわば聖書の知識を独占、キリスト教が広まったのちのヨーロッパでは、中世の農民、庶民の信仰の拠り所は、聖書ではなく教会での聖職者の説教が頼りだったということ。そしてカトリック教会の説教が本来の聖書から離れていったために、それに対する批判がおこったなどで、14世紀のイギリスで、ウィクリフが初めて聖書を英語に翻訳し、異端として弾圧されたそう。

その後16世紀の宗教改革ではマルティン・ルターがドイツ語に翻訳、そしてルネサンス期にグーテンベルクらの活版印刷で、はじめて聖書は一般庶民が読めるものに。

2-2、新約聖書の構成

P. Chester Beatty I, folio 13-14, recto.jpg
不明 – Chester Beatty Library, Dublin, Ireland[1] [2], パブリック・ドメイン, リンクによる

新約聖書は、福音書、使徒言行録、パウロの書簡、公同書簡、黙示録という構成になっていて、福音書の内容は、神からの喜ばしい知らせである福音をもたらしたイエスの教えと生涯を記した記録で、マタイの福音書、マルコの福音書、ルカの福音書、ヨハネの福音書の4つがあり、使徒言行録はイエスの死後、ペテロ、パウロらの使徒が中心に行った伝道活動についてをルカが書いたとされているということ。

そしてパウロの手紙は、迫害する側だったが、イエスの死後キリスト教徒となったパウロが伝道をしながら各地の教会に書いた書簡集で、公同書簡はパウロ以外の使徒たちによる書簡。また、新約聖書で唯一の預言書のヨハネの黙示録は、古代ローマ帝国の迫害下にあった信者に対し、忍耐と希望を呼びかけ、世界の終末、キリストの再臨、最後の審判などについて書かれたもので、ギリシアのパトモス島に暮らしていたヨハネが幻視したものについて語り、地上の国の滅亡と、神の国の到来を示したそう。

尚、福音書を書いた人は、「福音書記者」、「福音史家」などと呼ばれていて、マタイとヨハネは12使徒、ルカは医師でマルコとともに、ペテロとパウロの弟子ということですが、歴史的事実として解明されたわけではなく、書いた人よりも内容重視でみられているということ。

3-1、新約聖書の名言

聖書の言葉は聖句といいますが、誰もがどこかで聞いたことがあるはず、外国の小説や映画などでもよく引用される名言をご紹介しますね。

\次のページで「3-2、人はパンのみにて生くるにあらず」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: