この記事では「待てば海路の日和あり」について解説する。

端的に言えば待てば海路の日和ありの意味は「現状が悪くとも、待っていれば必ず好機がやってくる」様子を表す慣用句ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「待てば海路の日和あり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして5年間勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「待てば海路の日和あり」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「待てば海路の日和あり」の意味は?

「待てば海路の日和あり」には、次のような意味があります。

待っていれば、海の静かないい日和がやってくる。「待てば甘露の日和あり」の言い方を変えたもので、意味は同じ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「待てば海路の日和あり」

慣用句、ことわざとして知られる「待てば海路の日和あり」ですが、まずは言葉を分解して意味を確認してみましょう。

「海路」とは航海する上で、どのルートを辿って目的地までたどり着くか、その道筋のこと。
「日和」とは穏やかな海面や落ち着いた天候のこと。
そして「海路の日和」とは、出航するにふさわしい状態・天候のことを指しています。

文頭の「待てば」は仮定を示すので、全体の意味としては「もしも待てば良い状態がやってくる」ということ。ここから、現状は航海するのに適切でない、たとえば嵐などの悪天候であることが推測できますね。つまり「待てば海路の日和あり」は現在は困難な障害に直面していても、いつか必ず良い状況に転じる時がくることを示しています。

注意点としては、ただ何もせずじっと待てば良いわけではありません。正しくは、現状が悪くとも諦めずに行動し続ける、また、目的を忘れずに望みを持ち続けるというニュアンスです。たとえば面接結果が不採用続きだからといって、就職活動自体を止めてしまえばどうなるでしょうか。いつか状況が好転するとしても、家にこもり現実から目を背けていたら、せっかくのチャンスにも気付けないでしょう。このように、逆境にも向き合い続ける、願い続ける、そんな前向きな姿勢を「待つ」としているのです。

「待てば海路の日和あり」の語源は?

次に「待てば海路の日和あり」の語源を確認しておきましょう。

前項の意味の引用部分にもある通り、「待てば海路の日和あり」は「待てば甘露(かんろ)の日和あり」の言い方を変えたもので、意味は同じであるという説明がありました。そして実は語源もこちらに関係しています。

「待てば甘露の日和あり」は元々は中国で生まれたことわざでした。国家が良い政治を行い世の中が平等になると、天が吉兆として「甘露(甘い露)」を降らせたと言われています。いわば日照りの続く大地を潤す恵みの雨です。現状が不況であっても、正しい政治がなされてさえいれば、必ず解決の糸口が見えてくるはず。そして素晴らしい甘露が降り注ぐ日が訪れる、そんな中国の言い伝えに由来した言葉だったのです。

のちに日本に「待てば甘露の日和あり」が伝わった際、甘露という言葉に馴染みがなかったことから、語感の似た「海路」が採用され定着したとのこと。現在ではどちらも同様の意味として使われているので、一緒に覚えておきましょう。

\次のページで「「待てば海路の日和あり」の使い方・例文」を解説!/

「待てば海路の日和あり」の使い方・例文

「待てば海路の日和あり」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

1.
A「来月から一人暮らしをするんだよね?家は見つかった?」
B「実は昨日ようやく決まったんだ。なかなか良い物件がなくて。でも妥協したくなくて、諦めずに探し続けていたら条件にぴったりの部屋に巡り会えたよ」
A「それは良かった。まさに待てば海路の日和ありだね。」

2.妹は待てば海路の日和ありを体現してみせた。昨年不合格となった資格試験のためにずっと勉強を続け、今年遂に合格したからだ。

3.社内の残業を減らし、効率的な労働環境を構築すれば必ず売り上げにも反映されるはずだ。待てば海路の日和ありと言う、今を耐えて乗り切ろう。

「待てば海路の日和あり」は会話で使うことができますが、その際はことわざとして引用する形をとることが一般的です。もしも家族や友人、同僚が諦めずに努力し、その結果が報われた時などにぜひ使ってみたい表現ですね。

「待てば海路の日和あり」の類義語は?違いは?

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それでは「待てば海路の日和あり」の類義語を確認しましょう。

「果報は寝て待て」

「果報は寝て待て(かほうはねてまて)」は、焦らずに幸運が訪れる時を待つ、という意味のことわざです。

果報とは幸運や良い結果、また前世での行いが現世に反映されることを指します。これらは人の力ではコントロールできないものなので、やるべきことを終えたら後はただ待つのみである、と説いているのです。仏教の教えから生まれたと言われています。

「待てば海路の日和あり」と共通するのは、ただ待つのではなく努力を怠らないという点です。その善の行いが巡り巡って、いつか自分に良い形で返ってくるというニュアンスを含んでいます。

\次のページで「「石の上にも三年」」を解説!/

「石の上にも三年」

「石の上にも三年(いしのうえにもさんねん)」はとても有名なことわざですが、「待てば海路の日和あり」の類義語として改めて意味を確認しましょう。

「石の上にも三年」は、どんなに冷たい石の上でも、三年座り続ければ暖かくなることから、忍耐力が成功を引き寄せることのたとえです。

たとえば難しい課題に対して根気強く取り組み続け、解決の方法を見つけた場合はまさに「石の上にも三年」であると言えるでしょう。こちらもただ石の上に座っていれば良いわけではありません。目標達成に向けた強い思いと行動が結果をもたらすのです。

「待てば海路の日和あり」の対義語は?

続いて「待てば海路の日和あり」の対義語を確認しましょう。

「棚から牡丹餅」

「棚から牡丹餅(たなからぼたもち)」は、苦労なしに幸運を手に入れることのたとえです。

単に運の良さだけで良い結果が生じたときに使うことができます。努力や苦労をしたかはここでは関係ありません。ただ何もせずに待っていても「棚から牡丹餅」が降ってくるかもしれないのです。

「待てば海路の日和あり」には努力し続ける、好機を願いながら待ち続ける、というニュアンスがありました。何もせずとも訪れた幸運を甘受する「棚から牡丹餅」はその対義語であるといえるでしょう。

「待てば海路の日和あり」の英訳は?

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最後に「待てば海路の日和あり」の英語表現を確認しましょう。

「Everything comes to him who waits」

"Everything comes to him who waits" を直訳すると「あらゆる物事(結果)は待つ者のところへやってくる」となります。

願い、待ち続ける人には良い結果が必ず訪れる、というニュアンスを含んだ英語表現です。"him" とありますが、ここでは「彼(男性)」ではなく「人」全般を指しています。このフレーズのまま使われますので、ぜひ覚えてみましょう。

\次のページで「「待てば海路の日和あり」を使いこなそう」を解説!/

「待てば海路の日和あり」を使いこなそう

この記事では「待てば海路の日和あり」の意味・使い方・類語などを説明しました。

本当に大変な時には、じっと耐え忍ぶだけで精一杯なこともあると思います。ただ、少しでも勇気を出して行動することや、目を背けずに現実と向き合うことは、良い結果に近付く第一歩。そんな前向きな思いを感じる「待てば海路の日和あり」でした。どのような姿勢や心持ちで「待つ」かが大切ですね。

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【慣用句】「待てば海路の日和あり」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「待てば海路の日和あり」について解説する。

端的に言えば待てば海路の日和ありの意味は「現状が悪くとも、待っていれば必ず好機がやってくる」様子を表す慣用句ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「待てば海路の日和あり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして5年間勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「待てば海路の日和あり」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「待てば海路の日和あり」の意味は?

「待てば海路の日和あり」には、次のような意味があります。

待っていれば、海の静かないい日和がやってくる。「待てば甘露の日和あり」の言い方を変えたもので、意味は同じ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「待てば海路の日和あり」

慣用句、ことわざとして知られる「待てば海路の日和あり」ですが、まずは言葉を分解して意味を確認してみましょう。

「海路」とは航海する上で、どのルートを辿って目的地までたどり着くか、その道筋のこと。
「日和」とは穏やかな海面や落ち着いた天候のこと。
そして「海路の日和」とは、出航するにふさわしい状態・天候のことを指しています。

文頭の「待てば」は仮定を示すので、全体の意味としては「もしも待てば良い状態がやってくる」ということ。ここから、現状は航海するのに適切でない、たとえば嵐などの悪天候であることが推測できますね。つまり「待てば海路の日和あり」は現在は困難な障害に直面していても、いつか必ず良い状況に転じる時がくることを示しています。

注意点としては、ただ何もせずじっと待てば良いわけではありません。正しくは、現状が悪くとも諦めずに行動し続ける、また、目的を忘れずに望みを持ち続けるというニュアンスです。たとえば面接結果が不採用続きだからといって、就職活動自体を止めてしまえばどうなるでしょうか。いつか状況が好転するとしても、家にこもり現実から目を背けていたら、せっかくのチャンスにも気付けないでしょう。このように、逆境にも向き合い続ける、願い続ける、そんな前向きな姿勢を「待つ」としているのです。

「待てば海路の日和あり」の語源は?

次に「待てば海路の日和あり」の語源を確認しておきましょう。

前項の意味の引用部分にもある通り、「待てば海路の日和あり」は「待てば甘露(かんろ)の日和あり」の言い方を変えたもので、意味は同じであるという説明がありました。そして実は語源もこちらに関係しています。

「待てば甘露の日和あり」は元々は中国で生まれたことわざでした。国家が良い政治を行い世の中が平等になると、天が吉兆として「甘露(甘い露)」を降らせたと言われています。いわば日照りの続く大地を潤す恵みの雨です。現状が不況であっても、正しい政治がなされてさえいれば、必ず解決の糸口が見えてくるはず。そして素晴らしい甘露が降り注ぐ日が訪れる、そんな中国の言い伝えに由来した言葉だったのです。

のちに日本に「待てば甘露の日和あり」が伝わった際、甘露という言葉に馴染みがなかったことから、語感の似た「海路」が採用され定着したとのこと。現在ではどちらも同様の意味として使われているので、一緒に覚えておきましょう。

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