今回は「玉石混交」という言葉について見ていきます。

「玉石混交」の意味は、ずばり言えば「価値あるものとないものが混ざっている」です。この言葉の意味を理解するには、”玉”と”石”の意味を正しく理解する必要がある。価値があるのはどっちか、ないのはどっちか。

今回は、その「玉石混交」の意味や語源、類義語、使い方などを大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/white_sugar

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「玉石混交」の意味と語源をチェック

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「玉石混交(ぎょくせきこんこう)」という言葉、聞いたことがある人の方が恐らく多いでしょう。ただ、正確な意味を問われると自身がないという人も多いかもしれません。まずは、その「玉石混交」の意味と語源を、国語辞典の記述を参考に見ていきましょう。

「玉石混交」の意味は「価値あるものとないものが混ざっている」

国語辞典では、「玉石混交」は次のような意味が掲載されています。

[名](スル)《「抱朴子」外篇・尚博から》価値のあるものとないものとが、入りまじっていること。

[補説]「玉石混合」とするのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ぎょくせき‐こんこう〔‐コンカウ〕【玉石混×淆】」

「玉石混交」は「価値あるものとないものが混ざっている」という意味の四字熟語です。例えばインターネットで調べごとをする時を思い浮かべてください。検索欄にキーワードを入れて検索すると、たくさんのサイトのリンクが表示されます。しかし、そのリンクの中でも必要な情報が得られる、つまり価値のあるものと、そうではないものが混ざっていますよね。この状態を「玉石混交」と言います。

「混交」は「混淆」と書く場合もありますが、読み方や意味は変わりません。また、「混合」は誤りなので気をつけましょう。

“玉”と“石”の意味するものとは…?

では、”玉”と”石”、どちらが価値のあるもので、どちらが価値のないものなのでしょうか。語源とともに見ていきましょう。

「玉石混交」は古代中国の『抱朴子』という書物の中に登場する故事、「真意眞僞倒し、玉石混淆す」という一節に基づいています。この一節は、「本物と偽物を間違えてしまい、貴重な玉とどうでもいい石が混ざる」という意味です。

ここでいう”玉”は宝石の一種で、ただの石ではありません。”石”はただの石ころです。よって、”玉”が価値のあるもので、”石”が価値のないもの…ということになります。

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「玉石混交」の使い方を例文とともにチェック

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次に、「玉石混交」の使い方を例文とともにチェックしていきましょう。語源の一節では「玉石混淆す」という動詞の形で使用されていましたが、現代語では動詞として使われることは多くありません。例文を確認していきましょう。

1.インターネット上の情報は玉石混交である。自身で情報の良し悪しを判断する力を養うことが大切だ。
2.100円ショップで売られている商品は玉石混交だ。
3.偏差値の高いB大学の卒業生も玉石混交だ。大学に入ってから遊んでばかりだった人間は、社会で役に立たない。

例文1では、”インターネット上の情報には価値のあるものと価値のないものがどちらもある”という文脈で「玉石混交」が使用されています。インターネットの情報は役に立つものもあれば、人を騙すために嘘をついているものもあり本当に様々です。真偽不明なものも多々あります。良し悪しを見極める力を身に付けていきましょう。

例文2では、”100円ショップで売られている商品は、良いものもあれば粗悪なものもある”という文脈で「玉石混交」が使用されています。100円ショップは原価100円以上で仕入れているものと100円以下で仕入れているものがあり、品物によって品質がかなり変わってくるのです。

例文3では、”偏差値の高い大学の卒業生でも、価値の高い人間と価値の低い人間がいる”という文脈で「玉石混交」が使用されています。いくら偏差値の高い大学と言えど、入学してから遊んでばかりでは人間の価値は下がってしまいますよね。

このように、”良いものもあれば悪いものもある”という文脈で使用されるのが、「玉石混交」です。

「玉石混交」の類義語は?

次に、「玉石混交」の類義語を見ていきましょう。「玉石混交」の類義語には「魚目混珠」「玉石同架」「玉石同匱」があります。なかなか見慣れない言葉であり、さらに漢字の読み方も分かりにくいかもしれません。一緒に確認していきましょう。

「魚目混珠」価値のあるもの“珠”、ないもの“魚目”

「魚目混珠(ぎょもくこんしゅ)」は「本物と偽物が入り混じっていて見て区別できない」という意味の四字熟語です。魚の目(魚目)と真珠(珠)はぱっと見ただけでは区別がつかないことに由来する表現ですね。また、真珠は価値の高いものですが、魚の目には価値はほぼないので、”似ているが全く違う”というニュアンスも含まれます

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「玉石同架」“玉”と“石”が同じ台の上に

「玉石同架(ぎょくせきどうか)」は「価値あるものとないものが混ざっている」という意味の四字熟語です。「架」は「物を載せる台」という意味になります。よって、宝石(玉)と石(石ころ)が同じ台の上にあるというのが、この4つの漢字が示す本来の意味ですね。「玉石混交」と意味やニュアンスの違いはありませんが、「玉石混交」の方がより一般的に使用されると言えるでしょう。

「玉石同匱」“玉”と“石”が同じ箱に

「玉石同匱(ぎょくせきどうき)」は「価値あるものとないものが混ざっている」という意味の四字熟語です。「匱」という文字は「大きな箱」という意味になります。よって、宝石(玉)と石(石ころ)が同じ箱の中に入っているというのが、この4宇の漢字が示す本来の意味です。「玉石混交」や「玉石同架」と意味やニュアンスの違いはありませんが、「玉石混交」の方がより一般的に使用されると言えるでしょう。

「玉石混交」の英語表現は?

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最後に、「玉石混交」の英語表現を見ていきましょう。英語にも「玉石混交」と同じ意味を持った表現がありますが、日本語とは文化の違いが見られ面白いですよ。確認していきましょう。

「mixture of wheat and chaff」

「mixture of wheat and chaff」は、直訳すると「小麦ともみ殻が混ざり合っている」となり、「価値あるものとないものが混ざっている」という意味の英語表現になります。「玉石混交」の”玉”に当たる部分が”wheat(小麦)”です。一方の”石”に該当するのが”chaff(もみ殻)”ですね。

日本語では宝石と石ころの比較でしたが、英語では食糧になる小麦と、食糧にならないもみ殻…という分け方をしています。日本やそのもととなった中国では希少価値に重きを置いた表現でしたが、英語圏では食べられるか否かに焦点を置いた表現になっているのが面白いですね。

“玉”を見極めることが大切?「玉石混交」

今回は「玉石混交」についてご紹介しました。「玉石混交」は「価値あるものとないものが混ざっている」という意味の四字熟語です。"玉"が宝石を意味し、”石”は石ころを意味します。つまり、”玉”が価値のあるものということです。世の中にあふれるモノや情報は、まさに「玉石混交」と言っていいでしょう。その中の”玉”を見極め選択していくことが大切なのかもしれません。

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国語言葉の意味

”玉”と”石”の意味は?「玉石混交」の意味や語源、類義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

今回は「玉石混交」という言葉について見ていきます。

「玉石混交」の意味は、ずばり言えば「価値あるものとないものが混ざっている」です。この言葉の意味を理解するには、”玉”と”石”の意味を正しく理解する必要がある。価値があるのはどっちか、ないのはどっちか。

今回は、その「玉石混交」の意味や語源、類義語、使い方などを大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/white_sugar

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「玉石混交」の意味と語源をチェック

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「玉石混交(ぎょくせきこんこう)」という言葉、聞いたことがある人の方が恐らく多いでしょう。ただ、正確な意味を問われると自身がないという人も多いかもしれません。まずは、その「玉石混交」の意味と語源を、国語辞典の記述を参考に見ていきましょう。

「玉石混交」の意味は「価値あるものとないものが混ざっている」

国語辞典では、「玉石混交」は次のような意味が掲載されています。

[名](スル)《「抱朴子」外篇・尚博から》価値のあるものとないものとが、入りまじっていること。

[補説]「玉石混合」とするのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ぎょくせき‐こんこう〔‐コンカウ〕【玉石混×淆】」

「玉石混交」は「価値あるものとないものが混ざっている」という意味の四字熟語です。例えばインターネットで調べごとをする時を思い浮かべてください。検索欄にキーワードを入れて検索すると、たくさんのサイトのリンクが表示されます。しかし、そのリンクの中でも必要な情報が得られる、つまり価値のあるものと、そうではないものが混ざっていますよね。この状態を「玉石混交」と言います。

「混交」は「混淆」と書く場合もありますが、読み方や意味は変わりません。また、「混合」は誤りなので気をつけましょう。

“玉”と“石”の意味するものとは…?

では、”玉”と”石”、どちらが価値のあるもので、どちらが価値のないものなのでしょうか。語源とともに見ていきましょう。

「玉石混交」は古代中国の『抱朴子』という書物の中に登場する故事、「真意眞僞倒し、玉石混淆す」という一節に基づいています。この一節は、「本物と偽物を間違えてしまい、貴重な玉とどうでもいい石が混ざる」という意味です。

ここでいう”玉”は宝石の一種で、ただの石ではありません。”石”はただの石ころです。よって、”玉”が価値のあるもので、”石”が価値のないもの…ということになります。

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