「三字経(さんじきょう)」の定義
「三字経」は、「百家姓(ひゃっかせい)」、「千字文(せんじもん)」と並ぶ中国の伝統的な子どものための学習書です。儒教、経典(仏教の教え)の基本的な考えや常識、歴史、学習の重要性などを説いています。この中に見られるのが、次の一文です。
曰喜怒、曰哀懼、愛悪欲、七情具
これは、人間には「喜」、「怒」、「哀」、「懼」、「愛」、「悪」、「欲」の七つの情があることを説明しています。
・「懼」とは、恐れること、びくびくすること、の意味です。
チャールズ・ダーウィンの定義
イギリスの自然科学者で、進化論の確立者でもあるダーウィンは、人が感情を持つのはなぜかという問いに初めて向き合った研究者でもあります。彼は、人間が「悲しみ」「幸福」「怒り」「軽蔑」「嫌悪」「恐怖」「驚き」という七つの基本的感情を普遍的に持ち、文化による違いはなく、どのような文化的背景を持っていても、感情を表現する方法は同じであると考えました。
言葉が通じなくてもコミュニケーションが成立するのは、相手の表情や仕草から、感情を読み取ることができるおかげなのですね。飛行機で偶然、となり合った人とただ微笑みを交わし合うことで安心感を与え合うことが出来ることを思うと、ダーウィンの説にうなづけるのではないでしょうか。
インドの美学理論「ナヴァ・ラサ」
「ナヴァ・サラ」と呼ばれるインドの伝統的な美学理論では、基本的な感情を九つに分けています。
「シュリンガーラ」:恋愛感情
「ハースヤ」:滑稽な笑い
「カルナ」:悲しみ
「ラウドラ」:怒り
「ヴィーラ」:活力あふれる気持ち
「バヤーナカ」:おそれ
「ビーバッサ」:嫌悪
「アドブサ」:驚き
「シャーンタ」:平和
「嬉笑怒罵(きしょうどば)」
あまり聞き慣れない四字熟語ですね。辞書を引いてみましょう。
感情のこと。
「嬉」は喜ぶこと。
「罵」は悪口を言うこと。
出典:四字熟語辞典オンライン(https://yoji.jitenon.jp)「嬉笑怒罵」
「嬉笑怒罵」の「嬉」を「喜」、「罵」を「悪」に置き換えると、「喜笑怒悪」。「喜怒哀楽」と見比べてみると、「哀楽」の部分が「悪笑」と対応していて、「楽」が「笑」とほぼ同じ意味だと捉えると、「哀」と「悪」の一文字だけが違っています。そう考えると「嬉笑怒罵」と「喜怒哀楽」は確かに、類語同士と言えそうです。
「喜怒哀楽」を使いこなそう
「喜怒哀楽」が人の持つ基本的な感情であることから始まり、人の感情の分類方法や、「喜怒哀楽」の類語について見てきました。中国やインド、イギリスでも人間の感情について古くから考えられてきたことを考えると、人間にとって感情がそれだけ重要なものであったことが分かります。「喜怒哀楽」、どんな感情にも善悪はありません。自分の中に生まれる時々の感情を大切に受け入れ、味わうことで、人生が豊かなものになるのではないでしょうか。