「初志貫徹」という言葉を知っていますか。この「初志貫徹」というのは、ずばり言えば「最初に思い立った志を最後まで」という意味です。「東大に合格するぞ!」と志を決め、実際に合格する人はカッコいいですね。「初志貫徹」はプラスの印象を与えることばでもある。

今回は、その「初志貫徹」について、意味や類義語、対義語などを大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「初志貫徹」の意味と使い方

image by iStockphoto

「初志貫徹(しょしかんてつ)」という言葉、聞いたことがない人はあまりいないのではないのでしょうか。ただ、混同しやすい表現があったり、少しい意味の違う類義語があったりするのも事実です。まずは、意味と使い方を確認していきましょう。

「初志貫徹」の意味は「最初に思い立った志を最後まで」

「初志貫徹」の意味について、国語辞典では次のような意味が掲載されています。

最初に思い立ったこころざしを最後までつらぬきとおすこと。

*城〔1965〕〈水上勉〉一一「隣村の同志を失って、庄左衛門は悲歎に暮れたと共に、ますます初志貫徹の意志に燃え、このまま文太夫につづいて獄死するとも悔いまじと、歯を喰いしばって」

出典:日本国語大辞典(小学館)「しょし‐かんてつ[‥クヮンテツ] 【初志貫徹】」

「初志貫徹」は「最初に思い立った志を最後まで貫き通すこと」という意味の四字熟語です。

例えば受験を例にすると、「東京大学に合格するぞ!」と決めたら、合格するまで決して諦めず努力を続けることを「初志貫徹する」と言います。実際に合格した場合は「初志貫徹した」となりますね。

この「最初に思い立った志を最後まで貫き通すこと」というのはなかなか難しいものです。よって、この四字熟語は”偉い”、”立派”といったプラスのニュアンスで使用されることが多いですね。

「初志貫徹」の使い方を例文と一緒にチェック

続いて、「初志貫徹」の使い方を例文と一緒にチェックしていきましょう。「初志貫徹する」といったように動詞化して使用する場合と、四字熟語としてそのまま利用する場合がありますが、意味は変わりません。

\次のページで「「初志貫徹」の類義語は?」を解説!/

1.田中さんは一度決めたことは、どんな困難なことでも必ず最後までやり通す。初志貫徹の精神を持った人だ。
2.「プロ野球選手になる」という夢のために、幼いころから努力を続けた結果初志貫徹し、プロ野球選手になることができた。
3.私の座右の銘は初志貫徹だ。

例文1では、”一度決めたことは、どんな困難があっても最後までやり通すこと”を「初志貫徹」を使って表現しています。実際に初志貫徹の精神を持った人は、あまり多くはないのではないでしょうか。

例文2では、”「プロ野球選手」になるという志を、努力の結果実現したこと”について、「初志貫徹」を使って表現しています。「初志貫徹」しようと頑張る人は多いと思いますが、実際に「初志貫徹」を実現できる人は多くはないでしょう。もちろん、志の内容にもよりますが。

例文3では、「座右の銘」について述べられています。「座右の銘」とは自身が生きているうえで大切にしている言葉のことです。「初志貫徹」を座右の銘にしている人は多いですよ。

「初志貫徹」の類義語は?

image by iStockphoto

「初志貫徹」の類義語について見ていきましょう。「初志貫徹」の類義語は「終始一貫(しゅうしいっかん)」「首尾一貫(しゅびいっかん)」です。「初志貫徹」とは少し意味が異なるので、注意してみていきましょう。

「終始一貫」態度・状態が最後までずっと変化なし

「終始一貫」は「態度・状態などが、始めから終わりまでずっと変わらないこと」という意味の四字熟語です。「あの人の行動は終始一貫している」といったように「終始一貫している」という形で使用されることが多いですね。

「初志貫徹」との違いは、「初志貫徹」は大前提として”最初に思い立った志”がありますが、「終始一貫」の初めは志であるとは限らないことです。例えば、ずっと同じ主張を繰り返す人に対して、「あの人の主張は終始一貫している」とは言えますが、「あの人の主張は初志貫徹している」とは言えません。

「首尾一貫」方針・考えが最後まで変わらない

「首尾一貫」は「方針や考え方などが始めから終わりまで変わらないで、筋が通っていること」という意味の四字熟語です。さきほど紹介した「終始一貫」とほぼ意味の違いはありません。こちらも、「首尾一貫している」という形で使用されることが多いですね。

「初志貫徹」との違いは、「終始一貫」と同じく、「初志貫徹」は大前提として”最初に思い立った志”がありますが、「首尾一貫」の初めは志であるとは限らないことです。例えば、ずっと同じ主張を繰り返す人に対して、「あの人の主張は首尾一貫している」とは言えますが、「あの人の主張は初志貫徹している」とは言えません。

\次のページで「「初志貫徹」と混同しやすい言葉」を解説!/

「初志貫徹」と混同しやすい言葉

次は、「初志貫徹」と混同されることがある言葉を見ていきます。その言葉は「初心忘るべからず」です。「初志」と「初心」の意味を正しく理解できていない場合に誤解が生じてしまうことがあるので、ここで確認していきましょう。

「初心忘るべからず」習い始めの謙虚な気持ちを忘れるな

「初心忘るべからず」は「習い始めのころの謙虚で真剣な気持ちを忘れてはならない」という意味の慣用句です。分かりやすく言い換えれば、「最後まで初心者だったころの気持ちを忘れず、謙虚に物事に取り組もう」…という意味ですね。

ここでの「初心」は「物事の習い始めの頃の気持ち」を指します。何かの習い始めは分からないことだらけであるため、自然と謙虚な気持ちになるはずです。「初めに思い立った志」という意味である「初志」とは意味がかなり違いますよね。

「初志貫徹」の対義語は?ニュアンスごとに解説

「初志貫徹」の対義語には、プラスのニュアンスを表すものとマイナスのニュアンスを表すものの2パターンがあります。文脈によって使用することができることばが変わってくるので、しっかりと確認しましょう。

プラスのニュアンス「臨機応変」

「臨機応変」は「その時その場に応じて、適切な手段をとること。また、そのさま」という意味の四字熟語で、プラスのニュアンスの対義語となります。初めの志を最後まで貫くことはもちろん素晴らしいことですが、周囲の状況は刻一刻と変化していくものです。その状況に合わせて行動を当初の志から変更していくことも、場合によっては大切と言えるでしょう。

マイナスのニュアンス「朝令暮改」

「朝令暮改」は「方針などが絶えず変わって定まらないこと」という意味の四字熟語です。「初志貫徹」は最初に思い立った志を最後まで貫き通すのですが、「朝令暮改」の場合は、その志がコロコロ変わってしまいます。そして、「臨機応変」とは異なり、「朝令暮改」は志や方針がコロコロ変わることを悪く捉えているので、マイナスのニュアンスを持つ言葉と言えるでしょう。

\次のページで「「初志貫徹」の英語表現は?」を解説!/

「初志貫徹」の英語表現は?

image by iStockphoto

「初志貫徹」を英語で表すとどうなるでしょうか。「初志貫徹」と似た意味を表す英語の熟語に「Carrying out one’s original intention」があります。ここでは、意味や細かい違いを確認していきましょう。

「Carrying out one’s original intention」

「Carrying out one’s original intention」は「初めに決めたことを貫き通す」という意味の英語の表現です。最初の「carry out」が「実行する」「遂行する」という意味の動詞になります。「one's」の部分には「誰」を表す言葉が入りますね。

注意が必要な点は、「初志貫徹」はプラスのニュアンスを持つ表現であるため、基本的に良い志に対してしか用いられません。ただ、「Carrying out one’s original intention」の場合は、悪い志を貫き通す場合にも使用可能である点です

物事を進める上で大切な姿勢「初志貫徹」、だが…

「初志貫徹」について今回はご紹介しました。「初志貫徹」は「最初に思い立った志を最後まで貫き通すこと」という意味の四字熟語です。基本的にプラスのニュアンスで使用されます。最初の志を最後まで貫き通すことは、志が大きいほど簡単ではありませんからね。ただ、状況によっては、対義語である「臨機応変」な行動も大切になるでしょう。

" /> 志は最後まで!「初志貫徹」 の意味や使い方、類義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

志は最後まで!「初志貫徹」 の意味や使い方、類義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

「初志貫徹」という言葉を知っていますか。この「初志貫徹」というのは、ずばり言えば「最初に思い立った志を最後まで」という意味です。「東大に合格するぞ!」と志を決め、実際に合格する人はカッコいいですね。「初志貫徹」はプラスの印象を与えることばでもある。

今回は、その「初志貫徹」について、意味や類義語、対義語などを大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「初志貫徹」の意味と使い方

image by iStockphoto

「初志貫徹(しょしかんてつ)」という言葉、聞いたことがない人はあまりいないのではないのでしょうか。ただ、混同しやすい表現があったり、少しい意味の違う類義語があったりするのも事実です。まずは、意味と使い方を確認していきましょう。

「初志貫徹」の意味は「最初に思い立った志を最後まで」

「初志貫徹」の意味について、国語辞典では次のような意味が掲載されています。

最初に思い立ったこころざしを最後までつらぬきとおすこと。

*城〔1965〕〈水上勉〉一一「隣村の同志を失って、庄左衛門は悲歎に暮れたと共に、ますます初志貫徹の意志に燃え、このまま文太夫につづいて獄死するとも悔いまじと、歯を喰いしばって」

出典:日本国語大辞典(小学館)「しょし‐かんてつ[‥クヮンテツ] 【初志貫徹】」

「初志貫徹」は「最初に思い立った志を最後まで貫き通すこと」という意味の四字熟語です。

例えば受験を例にすると、「東京大学に合格するぞ!」と決めたら、合格するまで決して諦めず努力を続けることを「初志貫徹する」と言います。実際に合格した場合は「初志貫徹した」となりますね。

この「最初に思い立った志を最後まで貫き通すこと」というのはなかなか難しいものです。よって、この四字熟語は”偉い”、”立派”といったプラスのニュアンスで使用されることが多いですね。

「初志貫徹」の使い方を例文と一緒にチェック

続いて、「初志貫徹」の使い方を例文と一緒にチェックしていきましょう。「初志貫徹する」といったように動詞化して使用する場合と、四字熟語としてそのまま利用する場合がありますが、意味は変わりません。

\次のページで「「初志貫徹」の類義語は?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: