この記事では「朱に交われば赤くなる」について解説する。
端的に言えば、朱に交われば赤くなるの意味は「人は周囲の影響を受けやすい」です。出典は、中国の西晋時代に書かれた『太子少傅箴(たいししょうふしん)』です。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「朱に交われば赤くなる」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「朱に交われば赤くなる」の意味・語源・使い方

image by iStockphoto

さっそく「朱に交われば赤くなる」の意味や語源をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「朱に交われば赤くなる」の意味

まず、国語辞典で「朱に交われば赤くなる」の意味をチェックしましょう。

人は交わる友達によって、善悪どちらにも感化される。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「朱に交われば赤くなる」

「朱」は、辰砂(しんしゃ)という鉱物を原料とする顔料のこと。色は少し黄色味を帯びた赤色で、紀元前の昔から使われてきた伝統的な色です。漆や朱肉の色といえばイメージしやすいかもしれませんね。

朱が付着するとたちまち赤い色に染まることから、「朱に交われば赤くなる」「人は周囲の影響を受けやすく、交際する友人によって、善悪どちらにも感化される」という意味になりました。四文字熟語の「近朱必赤(きんしゅひっせき)」も同じ意味ですよ。

「朱に交われば赤くなる」の語源は『太子少傅箴』!

「朱に交われば赤くなる」の語源は、中国の西晋(せいしん)時代、文人の傅玄(ふげん)が著した『太子少傅箴(たいししょうふしん)』といわれています。

\次のページで「「朱に交われば赤くなる」の使い方」を解説!/

「近墨必緇、近朱必赤」

出典:『太子少傅箴』

墨に近づくと必ず黒くなり、朱に近づくと必ず赤くなるという意味です。「太子少傅」とは皇太子の教育係のこと。そして『太子少傅箴』は、教育係としての心得をまとめたものです。教育係は正しい行いができる人物であるべきだということを、「近墨必緇、近朱必赤」というたとえを使って説いています。

「朱に交われば赤くなる」の使い方

次は例文で「朱に交われば赤くなる」の使い方を見ていきましょう。

1.弟は最近、あまり評判が良くない生徒たちとつるんでいるらしい。朱に交われば赤くなるというからとても心配だ。
2.朱に交われば赤くなるというけれど、成績がよい彼女たちのグループに入って行動をともにしたら、成績が上がるのだろうか。

最初の例文は、不良グループと一緒にいると弟の素行が悪くなるのではないかと、心配しているという意味です。2番目の例文は、優等生のグループと一緒に行動したら優等生になれるだろうかという意味ですね。「朱に交われば赤くなる」は善悪どちらに影響される場合でも使えますが、最初の例文のように悪い影響を心配するような文脈で使われることが多いようですね。

\次のページで「「朱に交われば赤くなる」の類義語」を解説!/

「朱に交われば赤くなる」の類義語

image by iStockphoto

「朱に交われば赤くなる」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「麻(あさ)の中の蓬(よもぎ)」:善人とつきあえば善人になる

「麻の中の蓬」は、蓬のように曲がりやすい草でも、まっすぐに育つ麻の中で育てば曲がらずに成長する、つまり「善人と交われば自然に感化されて、だれでも善人になる」という意味です。「麻に連(つ)るる蓬」ともいいます。荀子の『勧学』に載っている「蓬(よもぎ)麻中(まちゅう)に生(しょう)ずれば扶(たす)けずして直し」が語源です。

「水は方円(ほうえん)の器に随う」:善にも悪にも感化される

「方円」とは四角と円のこと。水は、容器が四角い形なら四角になり、円形なら円形になります。入れる器によってまったく別の形になりますね。「水は方円(ほうえん)の器(うつわ)に随(したが)う」は、「人間は、交友関係や環境しだいで、善にも悪にも感化される」という意味です。

語源は中国の詩人白居易(はくきょい)の「情(じょう)無き水は方円の器に任せ、繫(つな)がれざる舟は去住(きょじゅう)の風に随(したが)う」という一節ですよ。

「善悪は友による」:友だちしだいで善人にも悪人にもなる

「善悪は友による」「人はつきあう友だちしだいで、善人にも悪人にもなる」という意味です。「人は善悪の友による」ともいいますよ。良くも悪くも、いつも一緒に行動する友だちの影響は大きいようですね。

「朱に交われば赤くなる」の反対語

image by iStockphoto

「朱に交われば赤くなる」と反対の意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「泥中(でいちゅう)の蓮(はす)」:俗世に染まらず清らか

「泥中」は文字通り「泥の中」のこと。「蓮」はスイレン科の水生植物で、池や沼などで栽培され、泥の中で薄紅や白色の清らかな花を咲かせます。「泥中の蓮」「俗世にあっても清廉な人」や「汚れた環境でも、染まらず清らかで美しい」ことのたとえです。語源は『維摩経(ゆいまぎょう)』という大乗仏教の経典ですよ。

\次のページで「「朱に交われば赤くなる」の英訳」を解説!/

「朱に交われば赤くなる」の英訳

次は英語で「朱に交われば赤くなる」をどのように表現するか見ていきましょう。

「He that touches pitch shall be defiled.」

英語にも「朱に交われば赤くなる」と同じ意味のことわざがあります。

「touch」「触れる」「さわる」という意味。「タッチ」で日本語にも溶け込んでいますね。「pitch」は「野球の投球」や「音の高低」という意味がありますが、同じつづりで「タールを蒸留した後に残る黒色のかす」を意味する言葉でもあります。「defile」「汚す」「汚染する」という意味です。

He that touches pitch shall be defiled.は、「タールに触れるものは必ず汚れてしまう」、つまり「朱に交われば赤くなる」という意味ですよ。

「朱に交われば赤くなる」を使いこなそう!

この記事では、「朱に交われば赤くなる」の意味や語源を調べ、例文や類義語などを解説しました。

朱とは赤い顔料のこと。朱が付着するとたちまち赤い色に染まることから、「朱に交われば赤くなる」「人は周囲の影響を受けやすく、交際する友人によって、善悪どちらにも感化される」ことを表現します。どうせ影響を受けるなら、良い影響を与えてくれる人とお付き合いしたいものですね。

" /> 語源は教育係心得?「朱に交われば赤くなる」の意味・使い方・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

語源は教育係心得?「朱に交われば赤くなる」の意味・使い方・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「朱に交われば赤くなる」について解説する。
端的に言えば、朱に交われば赤くなるの意味は「人は周囲の影響を受けやすい」です。出典は、中国の西晋時代に書かれた『太子少傅箴(たいししょうふしん)』です。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「朱に交われば赤くなる」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「朱に交われば赤くなる」の意味・語源・使い方

image by iStockphoto

さっそく「朱に交われば赤くなる」の意味や語源をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「朱に交われば赤くなる」の意味

まず、国語辞典で「朱に交われば赤くなる」の意味をチェックしましょう。

人は交わる友達によって、善悪どちらにも感化される。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「朱に交われば赤くなる」

「朱」は、辰砂(しんしゃ)という鉱物を原料とする顔料のこと。色は少し黄色味を帯びた赤色で、紀元前の昔から使われてきた伝統的な色です。漆や朱肉の色といえばイメージしやすいかもしれませんね。

朱が付着するとたちまち赤い色に染まることから、「朱に交われば赤くなる」「人は周囲の影響を受けやすく、交際する友人によって、善悪どちらにも感化される」という意味になりました。四文字熟語の「近朱必赤(きんしゅひっせき)」も同じ意味ですよ。

「朱に交われば赤くなる」の語源は『太子少傅箴』!

「朱に交われば赤くなる」の語源は、中国の西晋(せいしん)時代、文人の傅玄(ふげん)が著した『太子少傅箴(たいししょうふしん)』といわれています。

\次のページで「「朱に交われば赤くなる」の使い方」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: